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第八章
231.友達の心配
しおりを挟む女はメイク一つで幾らでも化けれるし、普段よりも大人っぽい服装をしていれば、居酒屋に入っても年齢確認されない。
だから、今日もすんなりと客席に通された。
金曜日という事もあって、店内は多くの客で賑わっていた。
和葉達は四人席の個室へ。
各席にのれんがかかってる日本家屋風の店だ。
バイトやデートに忙しかったはずの祐宇と凛の二人に、今日は無理を言って来てもらった。
やっぱり友達って有難い。
友達に悩みを打ち明けられないのはやっぱり辛いけど、一緒にいてくれるだけでも随分心強い。
自分は一人じゃないんだと思ったら少しだけ元気になった。
今日だけは嫌な事をパーっと忘れたくて、浴びるようにお酒を飲んだ。
「最近、敦士くんと何かあったの?」
祐宇は、最近暗い表情で登校したり、お昼ご飯を途中で切り上げていなくなったり、そんな日が突然パタリと止んだと思ったらうつぶせ寝をしてる時間が増えたりで、気持ちの読めない不安定な生活を送っていた和葉を心から心配していた。
いま祐宇と凛が知ってる男関係の情報は敦士一人だけ。
バンドのライブがきっかけになってから、二人には敦士の存在が色濃く描かれるように。
だから、二人は敦士絡みで思い悩んでると思っていた。
和葉「敦士なんて全然関係ないよ」
凛「ほら、やっぱりそうじゃない? その捻くれた可愛げのない返事。落ち込んでる原因はやっぱりソレだ」
和葉「違うってばぁ! 何で敦士なのよ……。ひと言も言ってないし」
祐宇「和葉さぁ。ついこの前、お昼ご飯をまともに食べないで教室を出て行った日、廊下で敦士くんと何かを言い合ってたじゃん。それに一緒に帰ったりしてたと思ったら、今日は教室で一人でうつ伏せになって時間をつぶしてたし」
凛「あーっ、やっぱり。敦士くんとケンカしたんでしょ。絶対、そうだ」
和葉「だから、本当に違うってばぁ」
ガシャーン……
和葉は向かいに座っている二人に思いっきり否定して身を乗り出した瞬間、手元のファジーネーブルに腕が当たって倒れて中身がテーブルいっぱいに広がった。
凛「ほら! 酔っ払って興奮し過ぎだっつーの」
和葉「だって、違うって言っても二人とも信じてくれないんだもん!」
店員「お客様~。大丈夫ですか? 今おしぼりお持ちしました」
祐宇「すみません、ありがとうございます」
祐宇がおしぼりでテーブルを拭き始めると、店員が飲み物をこぼれている事に気付き個室の中に入ってテーブルを拭き始めた。
聞き入れてもらえなかった敦士の話は、ここで一旦中断される事に。
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