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第八章
220.栞の告白
しおりを挟む拓真と距離を置いてから11日目。
昼休み、放課後、そして週末の農作業。
あんなに必死に食らいついていた私が、拓真に全く会いに行かなくなった。
でも、拓真は白菜の収穫に失敗して怪我をしたあの日の翌日のように、会いに来たりしない。
やはり私に興味がないのか。
それとも、栞が行く手を阻んでいるのか。
正直なところ、拓真からコンタクトを取ろうとしない理由がわからない。
最近は嵐が過ぎ去ってしまったかのように心穏やかに過ごしていた。
しかし、夢中になれるものが一つもない単調な日々。
辛い日々から逃げ出す事は出来たけど、毎日が隙間だらけに。
でも、今は隙間風が吹き荒れすぎないように敦士が隣でカバーしてくれるから、何となく気持ちのバランスが保てている。
5時間目は体育の授業で、友達と一緒に体育館の更衣室に移動してる最中、前方の人混みの中にいる拓真と栞の二人を見かけた。
拓真を見たのは随分久しぶりの事。
でも、栞が隣に居るから胸が窮屈に締め付けられる。
何日経っても心の傷は癒えない。
しかし、授業が始まる直前にも拘らず、二人は校舎とは別方向に向かっている。
昼休みの残り時間も少ないのに、これからどこへ向かうつもりなのだろうか。
私は二人が一緒にいる姿をこれ以上見たくないから、この場から逃げようと思った。
だけど、栞の横顔が何故か心を引き止めている。
拓真が隣にいるのに楽しそうに見えないどころか、緊張したような面持ちのようにも見えた。
何かが……、変だ。
一度気になったら身体が疼いて仕方ない。
気付いた時には「忘れ物をしたから先に行ってて」と友達に伝えて、一度教室に戻る振りをしてから、スピードを落として後ろから歩き、ところどころ隠れながら二人の後を追った。
ーー嫌な予感がした。
気持ちは相変わらず後ろ向きだけど、栞の変化を見た途端、見逃せなくなった。
拓真達はひと気がない体育館の裏側で足を止めて、身体をゆっくり向き合わせた。
一方、一定の距離を保ちながら後ろをつけていた和葉は、物陰に隠れて聞き耳を立てる。
すると、栞は上目遣いで目線を合わせてモジモジと照れ臭そうに口を開いた。
「あのね。さっきも言ったけど、今から大事な話をするから聞いてくれる?」
「大事な話って、何?」
「……あの……さ。私達、付き合えないかな」
「えっ……」
「私、拓真が好き。幼い頃から今日までずっとずっと……。この想いはもう14年になる。拓真と一年ぶりに再会する前から、ちゃんと気持ちは伝えたいなって思ってたの」
突然拓真に気持ちを伝えた栞は、恥ずかしそうに頬を赤く染めた。
和葉は栞の告白に衝撃を受けると、悲鳴が上がりそうになった口を両手で押さえた。
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