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第八章
218.アリーナ席
しおりを挟む予約時間になってメンバーのみんなと共にスタジオの部屋の中に入ると、中は意外に狭く感じた。
ドラムセットやキーボードやチューナーやアンプなどの機器類や、マイクスタンドが3つほど設置されている。
演奏しているイメージを湧かせる為なのか、壁一面は大きな鏡張りに。
だから、室内は鏡に映し出されて少し広く感じる。
和葉は初めて見るスタジオに興味を湧かせてジロジロと見渡す。
その間、メンバー達は持参した楽器をケースから取り出したり、各々チューニングを行なったりして、それぞれの時間を過ごしていた。
「ここに座って演奏聞いてて。感想があったら後で教えて」
敦士は隅に置いてあった丸椅子を持って、準備に取り掛かってるメンバーの正面に置いた。
先日のライブステージは立ち見の観客が20~30人くらい居て、ステージまで距離は遠かったけど、今日の観客は私一人だけ。
勿論、アリーナ席だ。
それから間もなく演奏が始まった。
間近で聞くバンド演奏は、心臓に響くほど大音量で血が沸騰寸前だった。
きっと、バンド好きの祐宇なら絶対喜んでいる。
演奏に納得がいかなくてやり直しは何度も行われていたが、好きな感じの曲が次々と流れていく。
穏やかな曲調のバラードや、激しいロックなど様々。
非日常的な場面は、一生の思い出になるくらい目に焼き付いていく。
ギターを演奏している敦士は、とても魅力的でセクシー。
特に意識しなくても、ついつい目が釘付けに。
彼らはアマチュアだから演奏自体は100点とは言えないくらいのレベルだけど、気分が落ち込んでいる私とっては素晴らしいプレゼントに。
和葉はうっとりしながら演奏を聞き入っていると、敦士はまるでお人形さんのように大人しく座っている和葉にほんのりと口元を微笑ませた。
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