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第七章
200.悔し涙
しおりを挟む男の腕の中に包まれたのは随分久しぶりの事。
でも、残念ながら抱きしめて欲しいと思ってる人は彼じゃない。
だから、離れようとして腕に精一杯の力を込めた。
「ちょっ……」
「何、離してとでも言いたいの? ……でも、俺言う事聞かないよ。マジでお前が好きだから」
「何言ってんの。冗談はやめて!」
激しく身体を揺れ動かしていく度に腕の力は加わっていく。
しかし、連日の睡眠不足と栄養不足が度重なってるせいか、これ以上の力が入らなくて振り払えなかった。
……でも、腕を振り払えきれなかったのは、力不足だけが原因じゃないかもしれない。
あまりにも強く抱きしめてくるから、心が寂しかった時代に気持ちが逆戻りしてしまった可能性もある。
また一人ぼっちになりたくないから、誰かに抱きしめて欲しかったのかもしれない。
敦士に抵抗していた腕は、諦めたと同時にストンと垂れ下がる。
無抵抗になると敦士の口は再び開かれた。
「あのさ、お前がこんな風に辛そうにしていても、俺は何もしてあげる事が出来ない」
「……」
「何故ならお前の心が俺にちっとも傾いてないから。……だけど、そんなに辛いなら俺に寄りかかれば少しは楽になるのに」
……そう。
敦士の言う通り。
辛い時は、敦士に寄りかかればきっと楽になるだろう。
身や心を心配するほど好きでいてくれるから、敦士と付き合えば毎日不安を背負っていくような辛い恋愛をしなくて済むのかもしれない。
朝起きても。
学校に行っても。
家に帰って来ても。
夜寝ようとしても。
栞に拓真を奪われると思うと、毎日気が狂いそうなほど辛い。
明日も頑張ろうと心に誓っても、最終的には思うような結果が残せていない。
そんな無力な自分が情けなくて嫌になる。
このまま敦士と付き合おうかな。
そしたら、気持ちが楽になるのかな。
やっぱり私は人を愛するよりも、愛してもらった方が幸せになれるのかもしれない。
人を愛する事が人一倍不器用だから、結局こんな惨めな結果が訪れたのかもね。
どうしたら上手な恋愛が出来るんだろう。
拓真が初めての恋だから、恋愛の仕方がわからなかったよ。
頑張っても頑張っても気持ちが届かない一方通行の恋愛は、もう疲れたからやめちゃいたいよ。
弱気な考えとは裏腹に大粒の悔し涙が頬を伝った。
敦士は和葉の涙に気付くと、大きな手でヨシヨシと優しく髪を撫でた。
心が空っぽになっている。
抱きしめて欲しい相手は敦士じゃないけど、自力で立つ余力もないから身をもたれかかるしかなかった。
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