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第七章
192.間接的な応援
しおりを挟む家に帰宅した和葉は、制服を着たままベッドに腕をついて上半身だけなだれ込んだ。
「はぁ……。嫌になっちゃう。どうして栞は街に戻ってきたの?」
ひとり言を呟きながら顔を横に向けると、最近家族になったばかりのハナちゃんの鳥かごが視界に入った。
ハナちゃんは中央の棒に止まったまま、ジーっとこっちを見つめている。
和葉はハナちゃんの目線に吸い込まれるように身体を起こして鳥カゴの中を覗き込んだ。
「ねぇ、ハナちゃん。栞がとうとう私達の学校に転校してきちゃったよ」
「……」
「あ、ちなみに栞という女は拓真の幼馴染で昔好きだった人みたいなんだ。先日は一年ぶりに拓真の前に現れたんだけど、まさかこんなにすぐ転校してくると思わなかった」
恋愛相談の相手が身近にいない和葉は、ハナちゃんしか愚痴を溢す相手がいない。
ところが、ハナちゃんは……。
「タクマ ガ スキスキ。タクマ ガ スキスキ」
和葉が思い悩んでる事すら知らず、このタイミングで覚えたての言葉を復唱していた。
「あのねぇ、ハナちゃん。私、いま落ち込んでるんだけど。ハナちゃんも私のライバルになろうとしてるの? 今は栞の事で頭を悩ませているのに、ハナちゃんまで困らせないで」
和葉は感情コントロールが出来ないせいで、目の前のハナちゃんにキツく当たってしまった。
ところが、次の瞬間……。
「カズハ ガンバレ オウエンシテル。カズハ ガンバレ オウエンシテル」
ハナちゃんから予想外の応援の言葉を受け取ると、酷く驚かされた。
まさか、ハナちゃんから応援されるとは思わなかった。
でも、鳥は自分の考えを伝えられる訳じゃないし、人から教わった言葉しか喋れないのだから。
「……私、ハナちゃんにそんな言葉を教えてないよ」
お母さんがハナちゃんに言葉を教えるなんてあり得ないから、もしかしたらおじさんが悩んでいる事に気付いていて、留守のうちに言葉を教えたとか……。
おじさんは直接言葉にしなくても、いつもエールを送り続けてくれる。
間接的な応援でも今の私には十分。
和葉はハナちゃんから応援の言葉に暗く静まった気分が少し解放された。
「ハナちゃん、和葉を応援してくれているんだね! 嬉しい……。やっぱり和葉はハナちゃんの事が好……」
「タクマ ガ スキスキ」
ハナちゃんはこのタイミングで感謝の言葉をかき消した。
しかも、応援の次に吐いた言葉が『タクマ ガ スキスキ』ってどーゆー事?
ハナちゃんは教わった言葉の順序が曖昧というか、意味を理解してないと言うか……。
言葉を使うタイミングが明らかにおかしい。
「もう、ハナちゃん! 次に『拓真が好き』って言ったら絶交だからね!」
「タクマ ガ スキスキ」
「こら! 私達家族でしょ? ハナちゃんは和葉の妹なんだから。拓真は誰にも渡さないんだから!」
人間vs鳥というその姿は、明らかに低レベルな争いに。
しかし、間接的に伝えてもらった父親からの応援によって少しだけ励みになった。
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