LOVE HUNTER

風音

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第七章

183.不機嫌な理由

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「大丈夫じゃないよ。何度も何度も話しかけてるのに。無視なんて辛すぎる」

「……分かったよ」



  さっきまでは目線すら合わせてくれなかったけど、ようやく口を開いてくれた。
  和葉は立ち上がって拓真のいる場所まで追いつくと、疑問をぶつけた。



「ねぇ、今朝からどうしてそんなに不機嫌なの?」

「別に」



  そう言いつつも、素っ気ない返事が届く。

  私に残されたタイムリミットは駅までの10分間。
  その間、言いたい事を伝えなければいけないし、聞きたい事は全て引き出さなければならない。

  何故なら、拓真は一切残業をしないから。



  和葉は行手を阻むように正面に周った。



「今朝は廊下で目が合っても無視するし、昼は中庭で男子と話してる時に、『ごゆっくり』とか言ってきてさぁ。……ちょっと誤解してない?  あの人とは拓真が思ってるような関係じゃないよ」

「別に誤解なんてしてない」


「じゃあ、なんでそんなに不機嫌なの?」



  目と目をしっかり合わせて、話は核心へと迫った。
  すると……。



「それは、怪我が心配で会いに行ったのに、二人の会話を黙って聞いてたら昨日遊びに行ったって……。こっちは夜眠れなくなるくらい心配してたのにさ」



  拓真はボソリと本音を吐き出すと、目線を外して口を尖らせた。
  一方の和葉は、想像以上に怪我の心配してくれていた事を知る。



「ごめん。駅で別れた後も怪我の心配をしててくれたんだ」

「当たり前だろ。お前が帰ってからも気が気じゃなかったのに、お前は呑気に遊びに行ってたんだろ」


「確かにあの状態で遊びに行くのは間違ってると思うけど、先日から友達とライブに行く約束をしてて、ドタキャンするのは申し訳ないと思って。それに、あの人のライブに行ったのは事前にチケットをもらったし、息抜き程度に行ってみようかなと思っただけで……」



  彼氏でもないのに、浮気の誤解を解くような勢いで説得をした。



「あいつのライブに行った事なんて別に俺には関係ないし」

「でも、今朝からずっとあの人の事を気にしてたかと思って」


「全然」

「嘘……、してた。あの人と一緒にいる時は、不機嫌になってるように見えたもん」


「……は、俺が?  心配してるのは肘の怪我だけ。俺にも半分責任があるから」



  どんなにカマをかけても、拓真は怪我の心配をしてると一点張り。
  だけど、怒っていた原因だけは伝えてくれたからホッとした。

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