LOVE HUNTER

風音

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第六章

178.魅力的な敦士

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  敦士は慣れた手つきでギターを弾いている。
  たまにマイクに口を近付けて、ボーカルと一緒にハモっている。
  曲調はロック。
  偶然な事に好きな感じの曲ばかりだった。



  学校ではしきりに私を追いかけてるけど、今日は自分達の特別なステージで最高のパフォーマンスを魅せてくれる。
  額から滴る汗、滑らかにギターを弾く繊細な指先、そしてボーカルと息ぴったりなハモり声。

  別人のようなその姿は、根っからの音楽好きだと証明してる。

  圧巻のステージは、簡単に忘れられないほど印象を叩きつけてきた。




  敦士の事なんて今までこれっぽっちも眼中になかったけど、ギターを演奏している姿を見ていたら、ここに来る直前までの考えが覆された。

  うっとりしながら曲に聞き惚れていると、付近の大学生らしき女性客が、友達同士で指をさしながら敦士の話題を上げた。



「ねぇねぇ。ギターの彼、結構イケメンじゃない?」

「私も思った~!  カッコいいよね。彼女持ちかなぁ。後で声かけちゃおうよ」



  そう……。
  魅力的に見えていたのは私だけじゃない。
  他の人も敦士のパフォーマンスに魅了されている。



  酔いが回ってぼーっとしながらも、ステージに夢中になっていた。
  学校での彼と、ギター演奏中の彼とのギャップが未知の世界をこじ開けていく。



「スゴイ!  敦士くんってめちゃくちゃカッコイイじゃん。本物の芸能人みたい」


  祐宇は騒ぐように興奮して。



「毎日アプローチされてるんだから、意を決して付き合っちゃいなよ」



  凛は背中を押すようなひと言を伝えた。



  そうやって口にするのは簡単だ。
  二人とも私の気持ちを知らないのだから。

  確かに敦士は魅力的だけど、付き合いたいとか全然そんなんじゃないのに。

  でも、以前なら告白の返事をYESのレベルまで達するくらい、このステージは印象的なものになっていた。




  ーー演奏終了から15分後。



「和葉ちゃん、やっぱり来てくれたんだ」



  ライブの出番を終えた敦士は、バーカウンターでお酒を飲んでいる私の隣に座った。

  祐宇達はライブに夢中。
  観客席の前方に移動しているので、二人きりの私達に気付かない。



「チケットをタダでもらっちゃったし」

「……どうだった?  俺らのステージ」



  敦士は得意げに質問した後、バーテンダーにウォッカを注文する。

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