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第六章
174.心配する彼
しおりを挟む拓真は応急処置を終えると、スクッと立ち上がった。
「病院に行こう。ここにバイクを持ってくるから大人しく待ってて。絶対に一歩も動くなよ」
「いまモンペ姿なんだけど」
「怪我してんのに服装なんて気にしてる場合かよ」
しかし、和葉はこのタイミングで拓真が無免許時代に事故を起こした事を思い出す。
「……ねぇ、バイクの免許持ってるの?」
「当たり前だろ」
拓真は疑いの眼差しに嫌気がさしながらも全速力で母屋へ走った。
自宅に上がり、免許と財布とヘルメットを持って隣接している車庫へ。
バイクのエンジンをかけて畑に移動させると、もう一つのヘルメットを和葉にかぶせた。
「エンジンの振動で傷口が痛むかもしれないけど、バイクから落ちないように俺の腰にしっかり掴まってろよ。いいな」
「う……うん」
和葉は身体を支えてもらいながら後部座席に乗せてもらい、拓真は運転席に座ってバイクを発車させた。
救急病院に到着して受付で簡単な手続きを終えると、5分と待たずに診察室へ。
医師の手で手ぬぐいがするりと解かれる。
和葉は状態を見るのが怖くて、傷口から目をそらしてクッと肩を竦ませた。
血が滲んでいる傷口が顔を覗かせると、医師は傷の状態を確認する。
「少し深めに切れてますが、この程度なら傷口を縫わなくても平気でしょう」
「どれくらいで回復しますか?」
「二週間程度でしょう。塗り薬を出しておきますので朝晩塗ってください」
医師からそう伝えられた後、看護婦にバトンタッチして傷の処置が行われた。
無事に処置を終えて待合室の椅子になだれ込むように座った拓真は、両手で顔を覆って前屈みに。
「よかった……。大事に至らなくて」
声を震わせながら呟いたそのひと言に拓真の想いが詰め込まれていた。
「心配かけてごめんね」
「お前に何かあったら、俺……」
「えっ……」
「……いや、何でもない」
拓真は小さく首を横に振った後、再び口を塞いだ。
あの時、拓真が何を言おうとしていたか分からなかった。
だけど、頭を抱えるほど心配してくれたに違いない。
怪我に敏感になってるのは、過去のバイク事故が影響しているのかな。
栞ちゃんの身体に刻まれた傷は今でも拓真の心の傷に?
辛い過去は、一生癒える事のない深い深い傷口になってしまったのだろうか……。
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