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第六章
170.失恋した祐宇
しおりを挟む今日は朝から祐宇の元気がない。
登校してから窓の向こうの景色ばかりをボーっと眺めている。
何を話しても上の空。
心ここに在らずって感じで……。
祐宇のおかしな様子を見たのは、進級して友達になってから初めての事。
同じく異変に気付いていた凛と相談して、原因を聞き出す為に、三人で放課後にお茶をしに行く事になった。
ーー場所は、駅近のファミレス。
ドリンクバーが設置されているので、拓真と出会う前の春まではよく三人でお茶しに来ていた。
普段は恋愛一直線だけど、祐宇が心配だから今日は恋を二番目に回す事に。
「実はさ、二股が片方の彼氏にバレてフラれちゃった」
祐宇はコップに入ったストローを片手で回しながら、素直に口を割った。
祐宇が長々と二股をかけていたのは、ずっと前から知っていた。
彼女は根っからの恋愛体質で常に男がいて欲しいタイプ。
使い捨て彼氏だった私とは違い、常に二人の男をキープしていた。
でも、男を切らさない理由は私と同じだ。
私達LOVE HUNTER三人組は、一人一人何かしら深い事情を抱えている。
私は母親。
祐宇は友達。
凛は異母兄妹。
祐宇は中学の時にイジメに遭っていて、クラスの女子全員に集団無視をされていた。
イジメの理由は、可愛らしい美貌の妬みから始まった。
そのせいもあって、祐宇は普段から一人になるのが苦手だ。
凛「どっちの彼氏?」
祐宇「葵の方」
凛「あぁ、バイト先が同じで二歳年上の大学生の方ね。いつもならそのままおさらばじゃなかったっけ?」
祐宇「そーなんだけど……。どうしても忘れられなくてさ。先週の金曜日に別れてから、頭がおかしくなるくらい葵の事ばかり考えてるし、二人の思い出の場所に足が勝手に出向いちゃうし」
そう言って頬杖をつき、ため息を漏らしながら切なそうに窓の外を眺める祐宇。
元気のない彼女を見るのは今日が初めての事。
和葉「葵の事が本気だったんだね」
祐宇「そうみたい。最初は告白されてから遊びのつもりで付き合ったんだけどね。でも、いつの間にか本気に……。だから、昨日もう一人の彼氏の 悠治とも別れた。本気で恋してたんだなぁと思ったら、もう他の男に興味がなくなってた」
祐宇の心境を聞いた途端、自分の姿と重なった。
少し状況は違うけど、遊びの一環で拓真に近付いた。
そして、今は本気の恋をしている。
毎日顔を合わせながら一つ一ついいところを知っていき、気付かぬうちに恋してた。
そして、今は運命の人。
もし、この先拓真が離れていったとしたら、自分は大丈夫かどうか自信がない。
恋を諦められるかどうかも不明だ。
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