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第六章
166.異変
しおりを挟むーー同日の昼休み。
今日は愛莉が学校を休んでいた。
どうやら風邪を引いたとか。
そのお陰と言ってはなんだけど、久しぶりに拓真と二人きりの昼休みを過ごす事に。
肩を並べてベンチに座るだけでも、隣から拓真の香りが漂ってくる。
ん~、いい香り。
それにしても、今日はなんて平和なんだろう。
邪魔者がいないだけでこんなに幸せだとは。
しかも、場所は畑じゃなくて拓真の家でもなくて学校。
同じ学校の制服を着て、同じ校舎内の同じベンチに座っている。
周りにいる女どもの羨ましそうな目線が最高で優越感に浸れる。
いつもは愛莉が邪魔してきたから、周囲の視線なんて感じる余裕はなかった。
中庭のベンチに前屈みに座っている拓真は、視線を遠くに向けたまま問いかけた。
「いきなりだけど、質問がある」
「え……、なぁに?」
「週末は何するか覚えてる?」
頭の中で週末の予定が組み込まれている和葉は、拓真の問いにピンときて自信満々に答えた。
「今週末は白菜の収穫でしょ。お試しを含めて計六回も農作業をこなしてきたから、畑を見ていれば次にどんな作業をするのかわかるよ」
それは、農作業に慣れてきた故に犯してしまった最大の盲点。
失言に気付かない和葉の頭の中は、既に次の白菜の収穫作業に追われていた。
拓真は本来の約束を忘れて鼻高々に語っている和葉を見た途端、ゆっくりとニヤけ始めた。
「ふーん。お前って結構働き者なんだ。偉いね」
拓真は意地悪そうに微笑む傍で、働き者の和葉を労う。
すると、さすがの和葉も異変に気付き始めた。
あれ……。
何か様子が変。
言葉では褒めているのに、表情はいつも意地悪を言う時と同じ。
念の為にブレザーのポケットから出したスマホのスケジュールアプリを開いて、週末の予定を確認した。
すると……、そこには何と!!
10/30(日)|《♡拓真と初デート♡》と、人生で最も大事な予定がしっかりと記されていた。
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