161 / 340
第六章
161.私のストーカー
しおりを挟む普段からメールや通話やスケジュールアプリくらいしかスマホを使わないから、当然話題についていけない。
だから、三人で集まっていても自分だけ蚊帳の外。
「なになに? スマホのどんな機能の話なの~? ゲームとか?」
スマホの話題に興味はないけど、頑張って二人の間に割り込んでみた。
ところが……。
「お前、スマホに興味ないだろ?」
「うっ……」
わかってるなら話題を変えてくれてもいいのに、遅れて来た事すら気にも留めてくれない。
敦士には行く手を阻まれて、愛莉には拓真を奪われて、更に拓真から意地悪を言われた私。
与えてもらったはずのこの貴重な昼休みの時間が少し無意味なように思えた。
キーン コーン カーン コーン
「起立。……礼」
和葉はHRが終わって帰り支度が済むと、教室の扉に顔をひょっこり覗かせてキョロキョロと左右を確認して忍者走りのような足どりで教室を出て行った。
何故こんな馬鹿げた真似をしてるかと言うと、敦士にまた捕まりそうな気がしたから。
私が拓真のストーカーとするなら、敦士は私のストーカー。
拓真との貴重な時間だけは邪魔されたくない。
拓真のクラスの下駄箱に誰よりも早く到着。
気焦りをしているせいで少しイライラしている。
あー、お願いだから早く下駄箱に降りて来て。
拓真と二人で過ごすはずの貴重な昼休みは、愛莉のせいでおじゃんになったし。
しかし、最初は誰もいなかったはずの下駄箱に生徒達が次々と降りて来たのだが、肝心な拓真は姿を現さない。
かれこれ10分くらいは待っている。
目の前を通過して行く拓真のクラスの生徒達。
そして、一向に姿を現わさない拓真。
焦る気持ちは、やがて寂しさへと移り変わる。
それでも和葉は手荷物を前に持ちながら、拓真の到着を待った。
すると、壁に背を持たれていた寂しそうに俯いている和葉の横から、聞き覚えのある声が届いた。
「あれ、和葉ちゃん? こんなとこで何やってんの?」
ーーそう、嫌な予感は見事に的中。
声の方に目を向けると、そこには拓真じゃなくて、逃げ回らなければならなくなった元凶の敦士の姿が。
「あ、敦士……」
「こんなところで和葉ちゃんと会えるなんて運命感じちゃうな。ねぇ、俺と一緒に帰ろうよ!」
意中の和葉に会えてすっかりご満悦な敦士は、強引に和葉のカバンを取り上げて外へ走り出した。
「ほら、帰ろ帰ろ。俺についておいで~」
「う、うそ……。ちょっと敦士、待ってよ~」
カバンの中には教科書やノートだけじゃなくて、財布や定期やスマホなどの貴重品も入っている。
だから、冗談半分でも渡せない。
しかし、先行く敦士に引き止める言葉なんて届いちゃいない。
敦士を追うしか手段はないけど、せめて去り際に拓真にひと声かけたくてキョロキョロと見回したけど、やっぱり姿を現さない。
しかも、敦士は私の考えなど他所に、下駄箱からは見えない距離まで走り去ってしまった。
もう、仕方ない。
本当は追いかけたくないけど、カバンを取り返さなきゃいけないから拓真との帰宅を諦めるか。
和葉は約束をすっぽかすような形を強いられてしまい、嫌な想いが残ったまま敦士の後を追いかけた。
私はLOVE HUNTER
台風のように出現した一人の男に平和な日常生活を奪われ始める。
しかし、思い返してみると、その大胆かつ一方的な行動は、つい先日までの自分の姿を鏡で映してるようだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる