LOVE HUNTER

風音

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第六章

161.私のストーカー

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  普段からメールや通話やスケジュールアプリくらいしかスマホを使わないから、当然話題についていけない。
  だから、三人で集まっていても自分だけ蚊帳の外。



「なになに?  スマホのどんな機能の話なの~?  ゲームとか?」



  スマホの話題に興味はないけど、頑張って二人の間に割り込んでみた。
  ところが……。



「お前、スマホに興味ないだろ?」

「うっ……」



  わかってるなら話題を変えてくれてもいいのに、遅れて来た事すら気にも留めてくれない。


  敦士には行く手を阻まれて、愛莉には拓真を奪われて、更に拓真から意地悪を言われた私。
  与えてもらったはずのこの貴重な昼休みの時間が少し無意味なように思えた。




キーン コーン カーン コーン


「起立。……礼」



  和葉はHRが終わって帰り支度が済むと、教室の扉に顔をひょっこり覗かせてキョロキョロと左右を確認して忍者走りのような足どりで教室を出て行った。

  何故こんな馬鹿げた真似をしてるかと言うと、敦士にまた捕まりそうな気がしたから。


  私が拓真のストーカーとするなら、敦士は私のストーカー。
  拓真との貴重な時間だけは邪魔されたくない。



  拓真のクラスの下駄箱に誰よりも早く到着。
  気焦りをしているせいで少しイライラしている。



  あー、お願いだから早く下駄箱に降りて来て。
  拓真と二人で過ごすはずの貴重な昼休みは、愛莉のせいでおじゃんになったし。



  しかし、最初は誰もいなかったはずの下駄箱に生徒達が次々と降りて来たのだが、肝心な拓真は姿を現さない。
  かれこれ10分くらいは待っている。


  目の前を通過して行く拓真のクラスの生徒達。
  そして、一向に姿を現わさない拓真。
  焦る気持ちは、やがて寂しさへと移り変わる。

  それでも和葉は手荷物を前に持ちながら、拓真の到着を待った。




  すると、壁に背を持たれていた寂しそうに俯いている和葉の横から、聞き覚えのある声が届いた。



「あれ、和葉ちゃん?  こんなとこで何やってんの?」



  ーーそう、嫌な予感は見事に的中。

  声の方に目を向けると、そこには拓真じゃなくて、逃げ回らなければならなくなった元凶の敦士の姿が。



「あ、敦士……」

「こんなところで和葉ちゃんと会えるなんて運命感じちゃうな。ねぇ、俺と一緒に帰ろうよ!」



  意中の和葉に会えてすっかりご満悦な敦士は、強引に和葉のカバンを取り上げて外へ走り出した。



「ほら、帰ろ帰ろ。俺についておいで~」

「う、うそ……。ちょっと敦士、待ってよ~」



  カバンの中には教科書やノートだけじゃなくて、財布や定期やスマホなどの貴重品も入っている。
  だから、冗談半分でも渡せない。

  しかし、先行く敦士に引き止める言葉なんて届いちゃいない。



  敦士を追うしか手段はないけど、せめて去り際に拓真にひと声かけたくてキョロキョロと見回したけど、やっぱり姿を現さない。

  しかも、敦士は私の考えなど他所よそに、下駄箱からは見えない距離まで走り去ってしまった。



  もう、仕方ない。
  本当は追いかけたくないけど、カバンを取り返さなきゃいけないから拓真との帰宅を諦めるか。



  和葉は約束をすっぽかすような形を強いられてしまい、嫌な想いが残ったまま敦士の後を追いかけた。





  私はLOVE HUNTER

  台風のように出現した一人の男に平和な日常生活を奪われ始める。

  しかし、思い返してみると、その大胆かつ一方的な行動は、つい先日までの自分の姿を鏡で映してるようだった。

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