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第六章
157.強引な男
しおりを挟むバイト先が決まった日の、翌日の朝。
他の生徒に紛れながら校門を過ぎると……。
「こんにちは、一ノ瀬さん」
校内で一度も見た事もない男子生徒が、横からヒョイと現れてナンパ口調で声をかけてきた。
少し馴れ馴れしい態度に思わず足が止まる。
笑顔で近付いてきた男の特徴は、ブラウンの髪で後ろで髪を一つに束ねているけど、多分肩くらいの長さ。
アイブロウで書き整えた眉が印象的で、目がキリッとしたそこそこのイケメンだ。
拓真がイケメンレベルの5段階のうちのMAXの5とするなら、彼は4。
拓真ほど好みじゃないけど、個性があってまた違った持ち味がある。
名前を呼ばれた瞬間、知り合いかと思った。
だけど、思考回路を巡らせても知り合った記憶がない。
「どうして私の名前を知ってるの?」
「ね、君に話があるからちょっと一緒に来て。大事な話なの」
「えっ……えっ……?」
彼は知り合いでもないのに、私の手首を掴んでいきなり校舎へと走り出した。
有無を言わせない強引な態度で何故か一緒に走らされる事に。
え……。
何この人。
まだうんともすんとも言ってないのに話を聞かせようとしてるの?
和葉はNOと言う以前に手首を掴まれて、出会ったばかりの知らない男と一緒に人混みの中をかき分けて走らされている。
「ちょっ……、何? あなた誰?」
「いいから。君が素直に言う事を聞いてくれれば、すぐに話は終わるよ」
男はそう言うと、校舎の端に設置されている外へと続く非常階段の扉を開けた。
和葉は一緒に階段を一段一段上らされている。
自分の意思で上ってる訳じゃないから、次に進ませる足が鉛のようだ。
和葉は見知らぬ男と二人きりで走っている姿が拓真に見られていないかがとても気になって、手を引かれながらもキョロキョロと周りを確認していた。
「とうちゃ~く!」
男はワントーン高い声でそう言うと、ようやく手を離した。
場所は非常階段の2階の踊り場。
この場所は、階段のすぐ向かいに大木が生えているので、外からも校舎からも目が行き届かない死角となっている場所。
手首を解放されたばかりの和葉は呆れた目で深いため息をつく。
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