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第六章
156.新しいアルバイト
しおりを挟む学校終わったある日の夕方。
和葉と祐宇と凛の三人組は、駅ビル内のファミレスにやって来た。
拓真と一緒に帰るようになってから、暫く二人との関係を疎かにしていた。
このメンバーで遊ぶのはおよそ1ヶ月半ぶり。
今日は予め拓真に一緒に帰れないと伝えておいた。
カラオケ店のバイトを辞めてから収入源が小遣いオンリーとなって、新たなる収入源を求めて求人誌を開いた。
財布の中身を見て現実をわかっているけど、オシャレだけは辞められない。
クラブやネイルや美容院には投資しなくなったけど、服や靴やカバンや化粧品代。
お年頃の女子にはお金がかかるもの。
気になる箇所に赤ペンでチェックしていくが、職種、時給、勤務時間、場所など、どれもこれもピンと来ない。
和葉は祐宇と凛の話を聞きながら求人誌をチェックしていると、祐宇の指先が求人誌の上から降りてきた。
祐宇「ねぇ、これいいじゃん。メイド喫茶。和葉にめっちゃ似合いそう。『お帰りなさいませ~。ご主人様~』なぁ~んて言って、フリフリのミニワンピースで登場みたいな」
凛「元気な和葉にはガソリンスタンドがいいんじゃない? 高級車が来たら率先して接客に向かえばいいじゃん。玉の輿に乗れるチャンスかもよ」
和葉「はぁ? 嫌に決まってる」
二人とも他人事だと思って好き勝手に言って。
メイド喫茶?
フリフリのミニワンピを着て、客に向けて最大限の愛想を振りまいて、変な料理名が付けられたメニューのオーダーを取って、アイドルオタクを相手に商売なんてしたくないよ。
ガソリンスタンド?
ただでさえ冷え性なのに、車が来るまでずっと外に立ってるなんて耐えられない。美人だからスタンド内で大渋滞を起こしちゃうかもしれないじゃん。
もう!
自分達にはそれぞれお気に入りの職場があるからって、言いたい放題なんだから。
勤務先は学校から三駅以内と決めている。
その理由は、自宅周辺で探すと平日の勤務開始時刻が遅くなって働けなくて稼ぎが少なくなるから。
条件の合う職場を指で辿りながら探していると、勤務時間も時給も勤務地も条件ピッタリの場所を発見。
早速マーカーでチェック。
和葉「これならやってもいいかな」
凛「コンビニ? 超地味じゃん」
祐宇「結構キツイ仕事なんじゃないの?」
和葉「いいの! バーコードをスキャンしてみたいの」
祐宇「じゃあ、こっちのスーパーでも良くない? ずっとピッてしまくりだよ」
右隣から身を乗り出した祐宇の指先は、保留中の欄の大型スーパーに当てられた。
和葉「スーパーなんて嫌。パートのお局さんにいびられそうだし」
祐宇「どんな風に?」
和葉「おばさんが怖い顔で腕組みして『一ノ瀬さん、あなたは若くて美人でスタイルも抜群の上に仕事まで出来て、何もかもが気に食わないのよ。あなたは輝き過ぎてるからフロアのモップがけでもしてなさい』……なぁんてさ。和葉の美しさが仇となって悲劇のヒロインになっちゃうかも」
祐宇「うわ! すげぇ、妄想……」
凛「つまり、大人数で勤務するところには行きたくないって事ね」
和葉「そう、2~3人くらいの少人数で仲良く楽しくやっていきたいの」
凛「それならコンビニが当てはまるね。やってみれば」
祐宇「いい男がいるといいね」
和葉「男探しじゃなくて仕事よ、仕事。もう、祐宇ったら、変な期待しないで」
二人には恋の相談をしないから、こんな小さな事でも探られてるような気になる。
拓真との恋は内緒。
上手くいったら話すべきか、ちょっと迷うな。
勤務先をコンビニに絞り込むと、早速その日の夜に電話をして翌日面接に行き、その場ですぐに採用された。
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