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第六章
151.自慢の父親
しおりを挟む次々と湧き上がる妄想ですっかりエンジンがかかってしまった和葉は思い切って提案した。
「ねぇ、暇だから拓真の部屋に行こうか」
和葉はにやけ眼でそう言ったが、ゆっくりと合わせた目は、何故かとてつもなく冷たい。
「行く訳ねぇだろ……。俺、お前に襲われる」
「やだぁ。和葉が襲う訳ないじゃん。(ギクッ。何でバレたんだろう)」
「先週俺の部屋に侵入した挙句、昼寝中に勝手に腕枕にして、着ていたシャツのボタン3つ外しただろ。忘れたとは言わせないぞ」
「……えへ、覚えてた?」
前科があるだけに信用してもらえない。
まぁ、自業自得だから仕方ない。
再びテレビに顔を向けた拓真は、和葉に全く違う話題を振った。
「そう言えば、この前話していた味噌汁を作ってくれている四人目の新しい父親って」
「私の家って他の家庭とは違って少し特殊でね」
普段自分の事はあまり人に話さないけど、話すキッカケが出来たので、四度目の結婚をした母親の話をした。
拓真は相づちをしながら静かに耳を傾ける。
「……それでね。今は新しいお父さんが家で帰りを待っててくれるんだ。和葉は幼い頃から一人で寂しかったから、和葉が真っ直ぐ帰らなかったらきっとおじさんも同じように寂しい思いをしちゃうかなって。だから、余程の用事が無い限り寄り道しないようにしてるの」
和葉は自慢の父親話で鼻高々になっていたが、拓真は話を聞くだけでは父親の良いイメージが湧かない。
「おじさんは元々他人だし、一人前の大人だからお前が居なくても寂しくないと思うけど」
「あはは、心配しないでよ。やっぱり何だかんだ言って、和葉に気があるんじゃないの?和葉がおじさんに襲われないか心配してくれてるんでしょ」
「……お前の話は常に下ネタだな」
拓真のシラけた目線は、多分もう100回くらい見ている。
「冗談よ、ジョーダン! でも、和葉はずっと一人ぼっちで寂しかったから、誰かが傍にいないと辛いんだ。母親からの愛情が欠乏していた分、しわ寄せが来たのかな。和葉は愛されて育ってきてないから、愛され方がわからないんだけどね」
「でも、赤の他人をよく父親として受け入れたな」
「やっぱり家族として愛されたいから……」
本当は母親の話をするのがとても恥ずかしかった。
四人も父親が変わってるなんて普通にドン引きだし、愛を知らないまま育った私が愛を欲しがってるなんて知ったら笑われるかもしれないと思ったから。
だけど、彼は違った。
「偉いな。辛い思いを沢山抱えてきたけど、頑張って苦境を乗り越えてきたんだ……」
拓真はそう言うと、テレビに顔を向けたまま和葉の頭を大きな掌でポンっと叩いた。
すると、和葉の顔から不思議と笑みがこぼれた。
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