LOVE HUNTER

風音

文字の大きさ
上 下
148 / 340
第六章

148.デリケートな唇

しおりを挟む



「お前、何やってんだ」

「ほら、ここ!  ここ!  この辺にケチャップが付いてかも。あーっ、自分からじゃよく見えないなぁ。どこかなぁ、どこかなぁ……?  あぁ~、ケチャップが勿体ないなぁ」


「あのな……。俺にもう一度同じ事をしてもらいたくて、わざとケチャップを塗ったんだろ。しかも、唇に塗るなよ」



  拓真は内心が丸見えな和葉にドン引きする。



「さっきはケチャップを舐めてくれたじゃん。本当は和葉の唇を舐めたかったんじゃないの?」

「はぁ?  そんな訳ないだろ」



  悪巧みを始めた和葉は、更に唇を前に突き出して拓真の方へ身を乗り出してグイグイと迫る。
  だが、拓真は接近してくる身体を遠ざけるように肩を掴んで身体を引き離した。



「次は指先じゃなくて直に唇を舐めた方が美味しいかも」

「アホか!  彼女でもないのに舐める訳ないだろ。先週ベッドで襲いかかってきた件と言い懲りない奴だな」


「ふぅん。彼女じゃないと舐めてくれないの?」

「今そんな話はしてないし!  お前の頭の中は、一体どーゆー妄想をしてるんだ」



  少々手荒になっている和葉は更に身を乗り出して、顔同士の距離を15センチまで縮めた。

  しかし、反論する拓真は和葉の肩を固定して、唇を遠ざけようと必死に身体を逸らしている。



「じゃあ、和葉と付き合ってくれればいいじゃん。彼女になってあげる」

「ヤメろ。そーゆー問題じゃないし、俺に向かって唇を突き出すな」


「早くぅ。キスで拭ってくれないとケチャップの塩分でデリケートな唇が荒れちゃうよ」

「するか、アホ!  お前の唇以前に俺のデリケートな心が荒れ果てるだろ」



  しつこく迫ってくる和葉が勢いよく前のめりになると、体勢を崩した拓真の身体は背後の床へ転がって和葉に押し倒されたような状態に。


  ーーしかし、ちょうどその時。

  突然居間の襖扉がスーッと開いて、部屋で寝込んでいるはずのお婆さんがのっそり姿を現した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう

天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。 侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。 その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。 ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。

【完結】あなたにすべて差し上げます

野村にれ
恋愛
コンクラート王国。王宮には国王と、二人の王女がいた。 王太子の第一王女・アウラージュと、第二王女・シュアリー。 しかし、アウラージュはシュアリーに王配になるはずだった婚約者を奪われることになった。 女王になるべくして育てられた第一王女は、今までの努力をあっさりと手放し、 すべてを清算して、いなくなってしまった。 残されたのは国王と、第二王女と婚約者。これからどうするのか。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

殿下、その真実の愛は偽物です

ミズメ
恋愛
「この婚約を破棄する!」 とある夜会で婚約者の王太子が、唐突にそう告げた。 〇全10話/書き終わってます 〇他サイトにも掲載

愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。

梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。 ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。 え?イザックの婚約者って私でした。よね…? 二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。 ええ、バッキバキに。 もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。

バケモノ姫の○○騒動

長野 雪
恋愛
隣国に輿入れするユーディリアは突然武装兵力に囲まれた。その主は大国ミレイスの王子リカッロだった。嫁ぎ先の王国を奪い、ユーディリア自身も本来の婚約者に変わって娶ることを宣言するリカッロ。ユーディリアは自分の異能の力を使い、流されるまいと抵抗することを決意する。 ※第11回恋愛小説大賞エントリー中です

【完結】ふざけるのもいい加減にしてください。お金に困った婚約者が私を賭け事のチップの担保にしてました。

西東友一
恋愛
目が覚めると、私は椅子の上で縛られており、目の前には婚約者のカイジンがポーカーをしていた。 なんと、金に困った彼は私を賭けのチップにしていた。 相手はなんと…王子であるウィン王子だった。 ※※ 5/5に完成予定でしたが、5/8になりました。 ご容赦ください。

処理中です...