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第五章
142.大意地悪
しおりを挟む平日は放課後からの10分間しか拓真と二人きりの時間を与えてもらえなかったけど、ストーカー事件後からは昼休みの残り時間も会ってくれるようになった。
何故時間を空けてくれたかいうと、農作業の開始時刻を1時間後ろ倒しにしたから。
時間的には短縮されてしまったけど、遠方から眺めるだけの1時間よりマシなはずが……。
「拓真~。私、昨日新しいスマホに変えたんだ。操作の仕方分かる~? 拓真ってスマホの操作が得意だもんね」
「あ、坂月さん。どの操作が分かんないの?」
「あのね、アプリ移行の設定が……」
「今まで使ってたアプリのIDとパスワードわかる?」
中庭の花壇に腰を下ろす私と拓真の間に、愛莉がグイグイと割り込んでくる。
邪魔だ……。
どうしてわざわざ昼休みにやって来るんだ。
しかも、私達を引き裂くようにお尻で私を押しのけてくる。
本当は二人きりで甘い時間を過ごすはずだったのに。
このように、愛莉は私達を見かける度に偶然を装って恋路を邪魔してくる。
だから私も反対側の空いてるスペースに移動して、スカートのポケットからスマホを出した。
和葉「あのね。和葉もLINEの絵文字の使い方が……」
拓真「お前……。先日俺に絵文字付きのメッセージを送ってきただろ。使い方を知ってるのに嘘をつくな」
愛莉「嫌だぁ。オバさんったら、下心見え見えで格好悪ぅ」
ヒョイと横から口を出してきた愛莉の突っかかるひと言にカチンとする。
和葉「よくわからないから聞いてみたの!」
愛莉「おばさんはシニアケータイで十分じゃない? どうせ、電話とメールくらいしか使わないでしょ。オバさんにスマホなんて豚に真珠よ。(スマホの事をよくわかってないくせに割り込んで来ないで)」
和葉「なっ……。(愛莉め。余計な邪魔しないでよ)」
ムキになった双方は身を乗り出して、拓真を挟んだ状態でにらみ合った。
だが、拓真までも加勢する。
拓真「確かに。絵文字の操作すらわからないなら、余計な機能は要らないな」
私が普段からひっきりなしにつけ回ってるからってバカにし過ぎ。
スマホくらい日常的に触るっつーの!
ただ、ゲームはやらないから、他の人と比べるとあまり触る回数が少ないだけ。
意地悪+意地悪=大意地悪
意地悪がオセロのように揃うと、より一層意地悪に拍車がかかるんだね。
ーーすると、その時。
キーン コーン カーン コーン……
拓真とはロクに会話が出来ぬまま予鈴のチャイム音が鳴った。
いち早く反応した拓真は腰を上げる。
拓真「教室に戻らないと」
和葉「ええっ! もう?」
愛莉「拓真。早く教室に戻ろ! じゃーね、オバさん」
拓真「じゃあな」
和葉「あ……。うん」
冴えない声で中庭を離れて行く拓真に虚しく手を振る私と、拓真の隣でやけに嬉しそうに歩く愛莉。
この時点で随分格差がある。
結局、愛莉が邪魔してくるせいでまともに話せない。
『和葉と二人きりで過ごす時間だから』って、拓真がビシッと伝えてくれればいいのにさ。
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