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第五章
135.片想い
しおりを挟む「ふぁ~、眠っ……。お前のせいで疲れたから責任取って肩貸して」
「うん、いいよ」
GOサインが出た瞬間、彼はスッと目を閉じて私の肩にもたれかかった。
肩にはずっしりと重みが増して温もりを感じる。
窓の隙間から差し込む風で彼の髪がフワリ揺れて、毛先が不揃いに頬を撫でた。
靡いてる髪からは、拓真の香りが漂ってくる。
「……小せぇ肩」
「えっ……」
「こんなに小さな身体で一体どんな人生背負ってきたの?」
「……」
「さっき、四人目の父親って言ってたけど、俺には想像がつかないほど苦労をしてきたんだろ」
「どうかな。和葉は拓真の人生を知らないから」
「しかも、こんなに痩せて……。今まで何食って生きてきたの?」
普段は興味がないクセに、今はやけに質問攻めに。
その上、今にも消えてしまいそうなくらい掠れた声で私の人生と身体の心配をしている。
数週間前まで他人だったのが嘘のよう。
今は家族の一員のように心配してくれる。
嬉しくて、こんな小さな事でさえ神様に感謝したくなってしまう。
拓真と一緒にいると、今までの恋愛が何だったのかわからなくなるよ。
次第に口数が減っていくと、スヤスヤと寝息が聞こえてきた。
勝気に突っかかっていた先ほどからは想像もつかないほど平穏に。
ヒョイと顔を覗き込めば……。
長い睫毛
無邪気な寝顔
風で揺られる黒髪
艶やかな唇
漏れる寝息
愛おしいって、こーゆー事なんだね。
和葉は穏やかな表情で髪を優しく撫でた。
「守ってくれてありがとう。感謝の言葉以上の気持ちが上手く伝えられないよ」
きっと、彼には聞こえていないと思うけど、隣にいるうちにどうしても伝えたかった。
彼の頭が肩から落ちないように、私も彼の頭にもたれかかった。
次に彼が目を覚ましたら……。
きっと、さっきまでよりも恋心が膨れ上がっているだろう。
もしこれが本物の恋なら、生まれて此の方恋というものを知らなかった。
こうやって隣で頭同士を支え合っても、彼の気持ちはわからない。
だって、これが片想いというものだから。
私はLOVE HUNTER
生まれて初めて恋に落ちた。
拓真の隣にいるだけで胸がドキドキして落ち着かないから、これが本物の恋だと証明できる。
ピンチを救ってもらった瞬間、人に守ってもらえる心地良さを知った。
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