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第五章
126.冷たい世間
しおりを挟む「お姉ちゃんよぉ。勤務中は忙しくて遊べないみたいだから、俺様がわざわざこんな辺鄙《へんぴ》な場所まで迎えに来てやったよ」
「……っ!」
「お姉ちゃんに会う為に一ヶ月間かけて都内の高校を一軒一軒探し回ったんだぜ。会えた喜びは半端ないねぇ。今日は時間がた~っぷりあるから、はちみつのように甘くとろける時間を楽しもうぜ。ひっひっひ……」
肩を揺らしながら不気味に笑う男には嫌がる意思など届かない。
それは、和葉を探し当てた喜びと、膨れ上がる妄想により暴走する気持ちが抑えられない。
セクハラ紛いの脅迫は吐き気がする。
やっぱり、楽しませると言うのは身体目的なの?
最悪……。
拓真のおもちゃになるのは構わないけど、コイツのおもちゃになるのは死んでも嫌。
和葉は顔を真っ青にしながら黙って男を睨みつけているが、突然ガッシリと腕を掴まれて強引に歩かされた。
「さぁ、遊びに行こうか」
男の視線の先の一車線の道路脇には、一台の黒いセダンが停まっている。
嘘……。
このままだと拉致されちゃう。
抵抗しないと男の思惑通りに。
早く逃げなきゃ。
「やめてよ! 腕を離して!」
「あんたに会いたくて時間をかけて一校一校探し回ったんだ。毎日学校を回ってもお姉ちゃんに会えなくて寂しかったぜ。俺達、まだ一度も楽しく遊んでないだろ」
「触ってんじゃねーよ。このクソジジィ!」
「いひひひ……、そんなに強がっちゃって。美人でグラマーな身体つきは最高だけど、血の気が荒いところも嫌いじゃないねぇ」
男は脅迫まがいに腕を引き寄せて、和葉の身体を自身の身体へと叩きつけた。
コイツ、鬼畜野郎じゃん。
少しでも気を抜いたら力尽くで車に乗せられそう。
男は厳つい風貌のせいか、私が昼間から大声で騒いでいても付近の通行人は見て見ぬふりをしている。
何よ……。
その辺の男なんて、普段は鼻の下を伸ばしながらちやほやしてくるくせに、いざとなったら無視?
それに、世間ってこんなに冷たいの?
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