LOVE HUNTER

風音

文字の大きさ
上 下
126 / 340
第五章

126.冷たい世間

しおりを挟む


「お姉ちゃんよぉ。勤務中は忙しくて遊べないみたいだから、俺様がわざわざこんな辺鄙《へんぴ》な場所まで迎えに来てやったよ」

「……っ!」


「お姉ちゃんに会う為に一ヶ月間かけて都内の高校を一軒一軒探し回ったんだぜ。会えた喜びは半端ないねぇ。今日は時間がた~っぷりあるから、はちみつのように甘くとろける時間を楽しもうぜ。ひっひっひ……」



  肩を揺らしながら不気味に笑う男には嫌がる意思など届かない。
  それは、和葉を探し当てた喜びと、膨れ上がる妄想により暴走する気持ちが抑えられない。



  セクハラ紛いの脅迫は吐き気がする。
  やっぱり、楽しませると言うのは身体目的なの?

  最悪……。
  拓真のおもちゃになるのは構わないけど、コイツのおもちゃになるのは死んでも嫌。



  和葉は顔を真っ青にしながら黙って男を睨みつけているが、突然ガッシリと腕を掴まれて強引に歩かされた。



「さぁ、遊びに行こうか」



  男の視線の先の一車線の道路脇には、一台の黒いセダンが停まっている。



  嘘……。
  このままだと拉致されちゃう。
  抵抗しないと男の思惑通りに。
  早く逃げなきゃ。



「やめてよ!  腕を離して!」

「あんたに会いたくて時間をかけて一校一校探し回ったんだ。毎日学校を回ってもお姉ちゃんに会えなくて寂しかったぜ。俺達、まだ一度も楽しく遊んでないだろ」


「触ってんじゃねーよ。このクソジジィ!」

「いひひひ……、そんなに強がっちゃって。美人でグラマーな身体つきは最高だけど、血の気が荒いところも嫌いじゃないねぇ」



  男は脅迫まがいに腕を引き寄せて、和葉の身体を自身の身体へと叩きつけた。



  コイツ、鬼畜野郎じゃん。
  少しでも気を抜いたら力尽くで車に乗せられそう。

  男はいかつい風貌ふうぼうのせいか、私が昼間から大声で騒いでいても付近の通行人は見て見ぬふりをしている。



  何よ……。
  その辺の男なんて、普段は鼻の下を伸ばしながらちやほやしてくるくせに、いざとなったら無視?
  それに、世間ってこんなに冷たいの?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる

春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。 幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……? 幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。 2024.03.06 イラスト:雪緒さま

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈 
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...