124 / 340
第五章
124.心の天気予報士
しおりを挟む最近夜風がひんやりしてきて、ますますおじさんのお味噌汁が恋しくなった。
バイト先からの帰りの電車で、夕飯の味噌汁の具材を予想するのは、この電車内で私だけかもしれない。
お母さんは新婚のクセに生活スタイルを変える様子がない。
何処をほっつき歩いてるのかわからないけど、休日でも昼間から家に居たり居なかったり。
仕事から帰宅するのは決まって夜10時頃。
深夜から朝方にかけて帰宅していた以前と比べると、結婚してからは恐ろしいほど帰宅時間が早くなった。
でも、帰って来たと思ったら酒酔い激しいのか、トイレに直行。
トイレを占領して嘔吐をする姿は昔から変わらない。
相変わらず世話がかかる母親だ。
将来、こんな親父みたいな母親には絶対なりたくないし、子供は愛されている子として育ててあげたい。
家に帰宅しておじさんが準備した夕食を頂いていると、おじさんは食事の手を進めながら言った。
「和葉ちゃん。最近、心のお天気が快晴だったのに、ここ数日はやや曇り気味なのかな?」
「どうしてそんなに和葉の気持ちがわかるの?」
「おじさんは和葉ちゃんの心の天気予報士だからね。顔を見れば何でもわかるよ。今は恋をしてるのかな」
和葉はズバリの回答を受け取ると、頬を赤く染めた。
「えっ! おじさんにはそう見えるの?」
「毎日学校に行くのも楽しそうだし、帰宅してからも機嫌のいい日が増えたからね。相手の男性は同じ学校の生徒なの?」
「それは内緒~!」
「ははっ。じゃあ、いつか話してくれるのを楽しみにしているよ」
おじさんは決して無理強いはしない。
血の繋がった父親じゃなくても、こうやって微々たる変化に気付いて家族として暖かく見守ってくれる事はやっぱり嬉しい。
一人ぼっちのご飯に、一人ぼっちのお留守番は長年続いたから慣れているけど、やっぱり作りたての愛情がこもった料理と、毎日見守ってもらえる笑顔に勝るものはない。
「おじさんには何でもお見通しなんだね」
「和葉ちゃんが何でも相談してくれるようになったら、きっと一人前のお父さんになれるのかもしれないね。これからも本物のお父さんになれるように頑張るからね」
おじさんの温かい眼差しは、今日も私の心を繋ぎ止めてくれている。
母親と二人きりの生活は寂しかった。
家に帰宅しても、居るんだか居ないんだかわからないほど。
『おはよう』
『おやすみ』
『ただいま』
『おかえり』
壁に向かって呟く挨拶。
これが空振りとわかっていても、何処か返事に期待している自分もいた。
だから、冷え切っていた心を包み込んでくれるおじさんは今や大切な人に。
愛というものは、きっと恋愛だけじゃない。
私はそう信じてる。
いつか、おじさんとは戸籍を超えた家族になれる日が来るのかな……、なんてね。
0
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる