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第四章
107.ノック音
しおりを挟むーー同日の放課後。
帰り支度もせずに机にうつ伏せになった。
毎日拓真と一緒に帰宅していたけど、顔を合わすつもりはないから時間が去っていくのを待つつもり。
この数週間、毎日向き合ってきたから信用してくれていると思っていたのに……。
今は何事もなかったかのように振る舞うなんて出来ない。
教室内に飛び交う声は時間と共に疎らに散っていく。
祐宇と凛は塞ぎ込んでいる私を心配してくれていたけど、薄い返事を繰り返していたら気持ちを汲んで帰って行った。
教室を出て行く最後の一人の足音さえも聞き取った。
後は拓真が帰るのを待つだけ。
今までは好かれたい一心でアピールを続けてきたけれど、脈がないからきっと私が下駄箱に現れなくても待たないはず。
その上、さっきは勢い余って『大嫌い』なんて言ったから、嫌な気持ちにさせちゃったかもしれない。
長い時間机にもたれかかっていると、何故か自分だけが閉鎖的な空間に取り残されたような気がした。
母親の結婚離婚の繰り返しで、片親生活が長かったから家で一人きりで過ごすのは随分慣れているけど、だだっ広い教室に一人でいるのは孤独に襲われて寂しい。
まだ校舎内にいる生徒達の声や、運動系の部活の元気な声が、窓の外から校舎に響き渡る。
ーーもう、どれくらい時間が経ったかな。
目を閉じていると、たった10分という短い時間でさえ感覚が掴めない。
ムクッと顔を上げると教室内には自分しかいない。
普段見慣れている黒板も、教卓も、机も、椅子も、ロッカーも、日差しが降り注いで活気ある昼間とは一変して、夕暮れと共に眠りにつく準備を始めている。
……さ、教室には誰も居なくなったし、そろそろ帰ろうかな。
和葉は机の横からカバンを取って膝に置き、机の中の教科書をカバンに詰め込んで席を立ち上がった。
ーーと、その時。
教室の前方扉からコンコンと軽いノック音が耳に飛び込んできた。
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