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第四章
105.悪知恵
しおりを挟む和葉達との距離感は、およそ10メートル。
ゆっくり接近してくる拓真は、二人がいがみ合ってる事に気付いていない。
そんな中、先に正面から拓真の姿を捉えたのは清楚系の彼女。
拓真は他生徒と比べても背が高いのですぐに気付いた。
彼女は拓真がまだ自分達に気付いていない事を知ると悪知恵が働いた。
右手を熊手のように爪を尖らせて左腕の中心部を指三本でギギギと強く引っ掻いて血筋を刻む。
一方の和葉は、突然自傷行為に走った彼女の思惑など知るはずもなく、全身の血の気がサーっと引いていった。
「ねぇ……、ちょっと。何してるの……」
彼女の腕からは血がぷっくり浮き出てくる。
和葉は血を見てパニックに陥っているが、彼女はニヤリと不気味に笑みを浮かべて、その瞬間がやって来るのを待っていた。
そして、未だに和葉達の存在に気付いていない拓真が4メートルまで距離を縮めた瞬間、彼女の足は全速力で和葉を横切り拓真の方へ。
怯える目をしながら拓真の腕にギュッとしがみついて背後へと回る。
拓真は何事かと思い目を向けると、彼女は和葉へ指をさして掴んだ腕をわざと震わせた。
「拓真……。助けて」
「坂月さん……? 身体震えてるみたいだけど、何かあったの?」
「私は何も悪い事をしてないのに、2年生のあの人が急に呼び出してきて『拓真に近付くな』って、怖い顔で忠告してきたの」
「えっ、あいつが?」
「嫌だと言ったら、乱暴に掴みかかってきて腕に傷を負わせたの。ほら、これが証拠」
彼女は拓真に腕の傷跡を見せて、濡れ衣を着せられた和葉は呆然と立ち尽くす。
拓真は傷跡に目線が吸い込まれると表情を一変させる。
「これ……、本当にアイツがやったの?」
「そう。さっきあの人が力強く引っ掻いてきたの。…………私、あの人が怖いよ」
そう言って、被害者ヅラしている彼女。
勿論、自傷行為は私を遠ざける作戦の一つに過ぎない。
拓真が傷跡を眺めている時、彼女はニヤリと挑発的に微笑んできた。
それは、ライバルとしての存在感を知らしめるかのように……。
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