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第四章
100.絶交
しおりを挟む拓真が伊達メガネを外すようになってから、4日経ったある日。
2時間目の美術の授業が終わり、和葉と祐宇と凛の三人で美術室から教室へと移動していた。
和葉の恋の進行状況が気になっている祐宇と凛は、事前に口裏合わせしていた通り聞いてみる事にした。
祐宇「……どう? 最近、拓真と上手くいってるの?」
和葉「さぁ……、どうかな」
凛「LOVE HUNTERのあんたが、珍しく恋愛に手こずってるね」
和葉「別に気にしなくていいよ。あ、トイレに寄ってから教室に戻るから、先に行ってて。それと、美術の教科書と筆箱をよろしく。教室に戻ったら私の机の上に置いといてね」
和葉は教科書と筆箱を祐宇に押し付けると、その場から逃げるように立ち去った。
背中を見届けた祐宇と凛は、心配した表情で互いの顔を見合わせた。
トイレに駆け込んだ和葉は個室に入り、話から解放されると胸に手を当ててフゥと一息ついた。
二人が隙を見て拓真の事を聞き出そうとしてる事には気付いてる。
でも、今日も言わない。
この恋が本気な分、胸の内にだけ留めて置くことにしている。
ごめんね。
本当は言いたくないんじゃない。
話したいけど今は怖いの。
去年のように辛い思いはしたくないから……。
拓真と二人きりで過ごすのに与えられた時間は、平日は学校から駅までの帰りの10分間の道のりと、毎週末の1日のみ。
しかも、その貴重な1日とは充実とはかけ離れた黙々と農作業をこなすだけのつまらない時間。
中でも気軽に話せるのは昼休憩の約1時間と、駅まで送ってくれてるほんの5分程度。
こんな少ない時間の中で、どうやって愛を育めと言うんだ。
今までは学校で追いまわしていたのが習慣だったから、急に会いに来ちゃダメだと言われても、私的ルールはいきなり変えられない。
気付けば自然と足が出向いちゃう。
でも、限られた時間以外は話しかけちゃいけない約束だから、扉越しに教室内を覗き見するだけ。
はっきり言って、虚しい。
しかも、拓真には私という存在がいるのに、ハエのように群がってくるメスどもにはニヤニヤしている。
許せない。
この浮気男。
あんたは私が教室に来ないと思って気を抜いてるかもしれないけど、私はあんたがメスどもに向ける笑顔で苦しめられてるんだから。
はぁ~、ムカつく。
今日から絶対に口を利かないんだから。
あんたなんて、近い将来悪い女に騙されてこっ酷く捨てられちゃえばいいんだよ。
この私が、積極的に拓真のエリアに攻め込んでいるのに、一切振り向こうとしなかった罰なんだからね。
もう絶交なんだから!
三つ指ついて土下座したって、絶対絶対許さないんだから。
和葉は毎時間遠目から様子を観察しては、気を悪くして教室へと帰っていく現状の繰り返しだった。
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