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第四章
91.話が噛み合わない相手
しおりを挟む農作業のお礼とはいえ、17歳のギャルに唐草模様のモンペを履けと?
月刊ファッション誌を毎月三冊購入して、月に一度都内まで流行の服を買いに行くほどオシャレに敏感なこの私に?
一日でも早く拓真に好いてもらおうと思って、遥々遠い街から来て農作業をしてまで自分をアピールしに来ているこの私が?
罰ゲームでもないのに、これからは毎週農作業時にこのダサいモンペを履けとでも?
和葉はお婆さんからの衝撃的な手作りプレゼントに言葉を失い、ガタガタと震えた顎が止まらなくなった。
「あっあの、これは……」
「先日貸したモンペは柄が地味だったからねぇ。若い子には派手な柄の方が向いてるんじゃないかと思ってねぇ」
若い子向けに作ったと言われても、前回まで借りて着ていた紺色生地に白いストライプ柄のモンペの方がまだマシだったよ。
「は? ……はぁ。あっ、ありがとう……ございます……。(ってか、フツーに要らないし)」
「気に入ってくれたかしら?」
「あっ、えっええ……。(実は私が拓真の周りをウロついてるから厄介払いしようとしてる?)」
「これは和葉ちゃん専用に作ったし、次から持ち忘れたりしないように洗濯しておくから、今日は使い終わったら置いていっていいわよ」
「えっ! あ……はぁ」
モンペを家に置いてっていいという事は、わざと自宅に忘れるというアクシデントが許されないという意味かな。
今日を含めて農作業は残り4回もあるのに……。
その4回は、このおニューのモンペを着なきゃいけない。
トホホ……。
「あらやだ、私ったら。モンペの上に着る服を用意するのを忘れちゃったわ」
「いえいえいえ! 今日はTシャツを着てきたんで、上に着るものは大丈夫です」
……と、両手を前に突き出して丁重にお断りをした。
すかさず返事をしないと、また新たなアイテムが出てきそうな気がしてならない。
「それはダメよ。和葉ちゃんの私服が汚れちゃうわよ。そうだ! この前使った花柄のシャツは和葉ちゃんにプレゼントするから」
「えっ……。別にいいです。(だから要らないっての)」
「良かった。あのシャツが気に入ってくれたのね」
「は……? あ、いや。(今『いい』って言ったのは、ノーの意味だったんだけど)」
残念ながら、拓真のお婆さんとは話がかみ合わないようだ。
先週から薄々感じていたが、どうやら彼女とは相性が悪いみたい。
しかし、良かれと思ってしてくれている限り、お断りする事が出来ない。
私は幼い頃から母親に手作りの物を作ってもらった事がない。
幼稚園や小学校で用意する手提げや上履き入れは、手芸屋さんに注文して作ってもらったもの。
そんな私の人生初の手作りプレゼントが、フラれた相手の祖母から頂いたモンペなんて皮肉な話だ。
受け取ったからには使わないと失礼だと思い、ここは我慢して唐草模様のモンペに着替える事に。
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