LOVE HUNTER

風音

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第三章

75.記憶にないクリーム

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  鏡の向こう側に待ち受けていたその姿とは、見覚えのないハート柄のシャワーキャップを被っている自分の姿が。
  その上、装いは農作業用のダサい花柄シャツ。

  目を覆いたくなるような現実が受け入れられずに立ちくらみがした。



「なに……、コレ……」



  指摘されても何処か現実味帯びなかったけど、いざその姿が証明されてしまうと、ショックでこれ以上の言葉が出てこなかった。

  すぐにシャワーキャップを引き剥がすと、次は更なる悲劇が待ち受けていた。

  シャワーキャップを脱いだばかりの髪には、クリームのようなものが大量に塗りたくられている。



  えっ、髪の隅々まで付着しているこのクリームは一体何?
  シャワーキャップを被った記憶どころか、髪に何かを塗った記憶もないんだけど……。

  畳の部屋で気持ち良く寝ていた空白の時間に何が起こったの?



  まさか、二日酔いで記憶が飛んだ?

  お酒を飲んでから12時間近くも経ったのに、未だに身体の中に残っていたとか。



  サラリーマンが酒で酔いつぶれて道路に大の字に寝転んでいた話は聞いた事があるけど、二日酔いでお昼寝した途端、人の家で髪に何かのクリームを大量に塗りたくって、シャワーキャップを被った後にまた同じ場所に戻って寝ちゃうなんて、普通に考えてもあり得ないでしょ。



  美容院に行きた過ぎて、寝ぼけながら髪にトリートメントでもしたかった?
  服を脱いだ形跡がないから、服を着たまま浴室に行ったとか?
  夢の中で下手くそだなって思っていた美容師のヘッドスパの手は、もしかして自分の手だった?

  クリームの色が白っぽいから、実はこのクリームはトリートメントじゃなくて、居間に置いてあったハンドクリームだったとか?



  あーっ。
  もう訳ワカンナイ!
  私ったら、人んちで何やってるのよ。

  拓真のツンデレなんてメゲずに、いつもお姉様らしく主導権を握っていいトコ見せたいって思っているのに……。
  こんなバカな事をしてるから見下されるんだよ。

  自分の事ながら、さすがに今回だけはドン引きだわ。



  でも、まずは髪にベットリ付着している不快なクリームを、洗い落とさなければならない。

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