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第三章
72.ヘッドスパ?
しおりを挟む座布団枕にほんのりと漂う畳のい草の香り。
どこかほっとするような懐かしい香りは、地方で暮らすひいお爺ちゃんの家を思い出させた。
慣れない農作業と睡眠不足。
すっかり疲れきっていた和葉は、お留守番で退屈のあまり居間でゴロゴロと寛いでいるうちに夢の世界に舞い込んだ。
すると、たまたま居間の横の廊下を歩いていた拓真のお婆さんは、反対側の縁側方向に身体を向けてスヤスヤ眠る和葉に気付いて部屋に入った。
「この子が畑のお手伝いに来てるお友達なのね。なかなか可愛らしいお嬢さんね」
目を細めて和葉の顔を軽く覗き込んだ後、お婆さんは向かいに腰を下ろした。
「あらまぁ。まだ若いのに髪が傷んでてかわいそうに。……たしか、アレがまだ一回分残ってたかしら」
お婆さんは和葉の金髪の髪を見て何かを思いつくと、ゆっくり立ち上がって静かに部屋を後にした。
ーーちょうど、その頃。
お昼寝中の和葉は、行きつけの美容院でヘッドスパをしてもらってる夢を見ていた。
今回はラベンダーの香りのトリートメントを選んで、美容師の卵にシャンプー台で頭皮マッサージをしてもらっていた。
んー。
マッサージは気持ちいいような気もするけど、今日はいつもの担当者と比べると腕が下がるなぁ。
髪だけじゃなくて、首や顔にまでクリームがベタベタ付いてるよ。
しかも、髪が抜けそうなくらい力強くブラッシングされてるから毛根が痛い。
その上、ラベンダーの香りを頼んだのに、ツンと漂う香り。
もしかして、ラベンダーの種類が変わった?
されるがままに身を任せていたけど、次はヘッドスパでは聞き慣れないような音が耳に入ってきた。
カサカサ…
……ん、何の音だろう。
この軽々とした音は。
トリートメントを塗ったり、頭皮のマッサージをしたり、トリートメントを流したりするような音じゃないのはわかる。
カサカサ……
まただ。
何故かビニール袋が擦れるような音がする。
しかも、ベタベタと頭皮に張り付く髪が、なんだか熱で蒸れてきた気がする。
あれ……。
ヘッドスパって毎回こんな感じだったっけ?
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