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第二章
64.無関心な彼
しおりを挟むでも、ここは私が折れるしかない。
何故なら、そこにはデートの条件が掲げられているから。
「……はち…時。……ちぇ、わかったよ」
「決まりな。遅れたらデートの約束は無効にするから」
拓真はそう言って、偉そうにニヤリと口角を上げる。
まぁ、ここ二週間の経過からして拓真に勝てるとは思ってなかったけど。
はぁ……、参ったな。
拓真は私の事情なんて知らないから、本当にいつも自分勝手。
和葉は黒板上の壁時計で時間を確認すると、焦って席を立った。
「やっば! チャイムが鳴りそうだから、もう教室に帰るね」
「ああ。(ようやっと帰ってくれるんだな)」
「じゃ、また一時間後」
「どうしてまた来るんだ」
すると、和葉は舐め回すようなセクシーな目で振り返り、拓真の顎の下に人差し指を乗せて顔を近付けて小さな声で呟いた。
「お姉さん、農作業はハジメテだからわからない事が沢山あるの。これからマンツーマンで、手取り足取り教えてもらわなきゃいけないし、植物の生育についても随分興味あるわぁ」
和葉は、意地悪された仕返しのつもりで軽くおちょくった。
だが、火に油を注ぐと、拓真は手をパンと跳ね除けた。
「必要ないだろ」
「メガネの奥の拓真に会えるんだったら、必要以上に頑張っちゃおうかなぁ」
「ふざけんな。チャイムが鳴るから早く帰れ」
拓真は悪ふざけをした和葉の頬をムギュとつねると、早く立ち去れと言わんばかりに手に力を加えた。
「イテテ……。わかったってば」
和葉は教室を出る際に拓真に向かってあっかんべーをした。
ところが、拓真は何事もなかったかのように、再び頬杖をついて本を開いている。
和葉はあまりにも無関心な態度を見るなり腹立たしさを覚えた。
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