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第二章
55.一目惚れ
しおりを挟む奴が嫌いなはずなのに、指先が鼻に触れた瞬間なぜか変な気持ちに。
いつもは無愛想だし、怒るか意地悪ばかりしてきたけど、間近で素の顔を見せてくれたのは今回が初めて。
あれ……。
心臓がドキドキしてる?
LOVE HUNTERの私が、こんなごくごく平凡なワンタッチで身体が反応するなんてあり得ないんだけど。
和葉は半信半疑な想いに一瞬頭を悩ませた。
赤面した顔が見られたくないと思い、その場に軽くかがんで地面から少量の土をつまんで、照れ隠しで拓真の頬に泥を塗った。
「えいっ。拓真も泥んこ仲間にしちゃう」
「お前っ、何するんだよ! 親切に泥を取ってやったのに恩を仇で返すのかよ。メガネにも泥を付けやがって……」
「あはは」
最近は怒鳴られた方が慣れていたから、いつもみたいにムキになっている方が拓真らしいかも。
……なんて思いながら、コーラ缶のタブを開けてグイッと一口飲んで、一旦恥じらいを紛らわせた。
すると、拓真は泥のついたメガネを外して首に巻いていた手ぬぐいを使い、泥がついたレンズを拭き始めた。
ところが、その様子を目にした瞬間。
平常心に戻りつつあった私に、思わぬアクシデントが。
奴がメガネを外した姿を一度も見た事がなかった。
メガネは奴の顔の一部だったから、メガネの奥の瞳にまでは興味が湧かなかった。
だけど、メガネから解放された瞳は、優しそうでまつ毛が濃くて長い。
しかも、隣から見てみると、顔のパーツが見事にバランスが取れていて、言葉を失ってしまうほどの超美形。
嘘……。
メガネ無しの拓真は息を飲むほどカッコイイ。
私、マジでタイプなんですけど。
一瞬にして目線が奪われた和葉は、LOVE HUNTERとしての血がより一層騒ぎ、本物のハントの対象になりつつあった。
二週間前、拓真と出会おうとして派手にプリントを撒き散らした時、何の捻りもない出会い方のパターンを何度も経験してると嫌みたらしく言って突き返してきた、あの時の言葉の意味が今ようやく理解出来た。
私はLOVE HUNTER
顔と一体化していたメガネを外した拓真に、一瞬で目が釘付けになった。
認めたくないけど、もしかしたらこれが一目惚れってやつかもしれない。
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