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第二章
51.荒れる心
しおりを挟むババくさいモンペ姿や、
デートの条件で草むしりを用命された畑や、
意地悪でクソ生意気な拓真を含めて全てが無理。
たかが報奨金の為に農作業をする必要がある?
告白直後から今の今までずっと振り回されっ放しじゃん。
逆転チャンスを迎えるどころか損してるし。
プライド高く生きてきた和葉にとって偽恋愛は腑に落ちない。
考え抜いたラブ作戦を実践してみても、プラスに向かう気配すら感じられないのだから。
いや、負けちゃダメ。
いま辞めてしまったら今日までの努力が水の泡。
ようやく一歩前進したんだから、耐え切れるまで耐えないと。
辛くても苦しくても、我慢を重ねてきたんだからきっと得るものがあるはず。
絶対拓真を落として三万円を必ずゲットするからね。
さっき言ってたよね。
草むしりを頑張って、残り5回の農作業を達成したらデートしてくれるって。
一度でもデートに結び付ける事が出来たら、確実にマウントを取れる。
LOVE HUNTERとして本領発揮して、あっという間に虜にしてやるんだから。
和葉は顔を引きつらせながらも、賭け金を思って大人しく腹をくくった。
受け取った軍手に手を通して拓真の横に並ぶ。
「……で、どの場所からスタートするの?」
「おっ、ようやくやる気に? じゃあ、俺は手前の列の畑の左端から始めるから、お前はあっちの赤いリボンがぶら下がってる端の列のところからスタートして」
スッと伸ばした指先をなぞるように目で辿っていくと、遙か彼方向こうに畑の隅に刺さっている細い杭の頂点から1本の赤いリボンが垂れ下がってる。
その距離は互いのクシャミの音さえ届かないくらい遠く、バス停一つ分先に相当する。
あまりにも広大な範囲に驚愕して目が点に。
「えっ……。二人で同じ場所からスタートするんじゃないの?」
「そしたらお前は喋ってばかりで手を動かさないだろ。範囲は半々でタイムリミットは日没までだぞ。いいな。(どうせ、俺の邪魔をするつもりだったんだろ)」
「えーっ。嫌だ、一人じゃ寂しい。(何でバレたんだろう)」
「真面目にやらなかったらデートはお預けだからな」
「ちぇっ。わかったよ」
和葉はプゥと膨れて可愛げもない返事をして、長袖シャツの袖を捲ろうとしてボタンに手をかけた。
ーーすると、その時。
拓真はカッと鋭く目を開いて声で引き止めた。
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