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第二章
40.拓真家
しおりを挟む二人で歩き始めてから、およそ15分。
学校から然程離れていないが、とんでもないほど 長閑な田舎に連れて行かれた。
ここは、田んぼや畑といった広大な敷地沿いに、一戸建てがポツポツと不揃いに並び、大地の自然の香りが存分の味わえるような古い街並み。
片側一車線の道路に歩道は確保されていない。
道路のすぐ左側には水路が。
無言で歩くが故に、初めて歩く街の景色に目が奪われた。
奴がどこへ連れて行こうとしてるのか予測がつかない。
でも、ここ二週間の努力が実って二人きりで会う約束をこぎつけたからには、素直について行こうと思った。
「ねぇねぇ。今からどこに行くの?」
「いいからモタモタすんな。さっさとついて来い」
奴は振り返り3メートルほど後ろを歩く私にそう言った。
とてもじゃないけど、女の子をデートに誘ったようには見えない。
まさか、『3メートル以上俺に近付くな』と、言っていた距離を保ち続けるつもりなの?
普通に考えても、この距離間を保ったまま無言でデートをするなんてあり得ないんだけど。
奴の背中を眺めながら渋々ついて行くと、築40年以上は経過してると思われる、紺色の瓦屋根に白い壁の古びた二階建ての大きな一軒家の前に辿り着いた。
開きっぱなしの門を抜けてから目線を軽く辺りに向けると、家屋の左側には縁側になっていて、右側の車庫には古びたトラクターが停まっている。
一般家庭にはあり得ないような機材や資材や藁が置かれている。
家屋の周りは緑に囲まれていて青々しい。
敷地面積や家屋の大きさからして、彼の家は地主かと思われる。
拓真は玄関の引き戸をカラカラと開けて中に入る。
サンダルが一つだけ置かれている玄関で、先に靴を脱いで家に上がる拓真に、玄関手前で問い尋ねた。
「もしかして、ここ拓真んち?」
「そ、早く上がって」
よそのお家の嗅ぎ慣れない香りが漂ってくる。
遠慮がちに靴を脱いで両端に揃えると、奴に言われるがままに家に上がり、玄関右奥の階段に足をかけた。
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