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第九章
89.突きつけられた現実
しおりを挟むサヤが……、俳優の窪田と結婚?
えっ、だってサヤは今朝まで俺と一緒に暮らしてたのに。
それに、俺が好きだと。
結婚だなんて嘘だろ……。
過去を振り返れば、黙って外出していた事が度々あった。
帰宅した際はいつも冴えない表情。
何処へ行ったかと聞いても教えてくれなかったり、聞かないでくれと不機嫌に突っぱねたり。
様子がおかしいと思いつつも、何となくやり過ごしてしまった。
過去を遡っていけばきりがないほど怪しい点が挙げられる。
残念ながら、さっきまで有頂天だった自分はもうここにいない。
契約終了を伝えられただけでも多大なショックを受けたのに、今日から他の男のものになってしまうなんて……。
それなのに、自分は彼女と幸せになる事しか考えていなかった。
今日の為に用意した指輪と食材。
彼女に喜んでもらおうって張り切って買い物に出かけた。
一生忘れられない思い出にしてあげようって、数日前から頭の中を埋め尽くすくらい数多くのプランを練っていた。
にも拘らず、目の前に突きつけられた現実は地獄以外何物でもない。
でも、冷静に考えてみたらサヤとは生まれも育ちも違うし価値観も違う。
意を決して結婚を引き止めに行ったとしても、空振りで終わる気がしてならない。
自分には金や地位や名誉や功績がある訳でもない。
それに、彼女の人生を背負うほどの自信さえ……。
俺は無力な自分に憤りを感じながらも、回転が鈍っている頭の中でサヤと出会ったあの日から今日まで伝えてくれた言葉を思い返した。
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