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第一章
4.ロボット女子
しおりを挟む曇り空が空一面を覆い尽くしている七月上旬。
ここは、素封家の息女が通う幼小中高大一貫の一流名門校 女子大キャンパス内のカフェ。
クラッシックが流れるカフェテリア内には、イタリア製のソファとテーブルが三十席。
フロア中央には漆黒のグランドピアノが置かれている。
財閥一家のお嬢様として育て上げられた大学三年生の黒崎 沙耶香 は、選択授業の合間に親友 愛海とお茶を嗜んでいた。
テーブルに並べられたカップからは、カモミールティーとアップルティーの香りが湯気と共にらせん状に交わっている。
一見優雅に見えるが、キャンパス内にいるこのひと時でしか自由な時間が与えられない。
お嬢様達は生後間もなくからボディガードの監視下に置かれている。
この学校に通う生徒達はどの家庭もほぼ同じ。
笑顔がない。
愛想がない。
感情を露わにしない。
無い無い尽くしで淡白に育ってきた二人は、感情を知らない無表情なロボット女子。
常識範囲内の愛想笑いは幼少期に勉強済み。
パーティなどの公の社交の場では、笑顔を絶やさぬようにと両親から厳しく育てられてきた。
しかし、瞳の奥は笑っていない。
校舎からボディガードに付き添われて無表情のまま迎えのリムジンに向かうその姿はロボット工場とも噂されている。
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