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第二十二章
162.最後のアドバイス
しおりを挟む「どうしたらいいかわからない。やり直したい気持ちは変わらないけど、蓮は怒ってるから口をきいてくれないし……」
「まずは仲直りだな。その後の話はそれからだよ」
「仲直りしたいんだけど、さっきから蓮の姿が見当たらないの。話そうと思って探しているのに……」
「話す方法ならいくらでもあるだろ。学校で話せなければ電話すればいいし」
「電話に出てくれるか分からないし……」
蓮とケンカをしたあの日からすっかり消極的になっていた。
その理由は、前回のケンカの影響が大きい。
だから、自信の二文字を失っていた。
「さっきからどうしてそんなに弱気なの?」
「だってぇ……。明日はもう卒業式だよ? 明後日からは会えなくなるし、すれ違ってばかりだし……」
「さすがのあいつでも電話くらい出るだろ。きちんとお互いが納得がいくまで話し合えばいいよ。あいつが浮気をした時にちゃんと向き合わなかったからこういう結果になったんでしょ? 一方が怒るだけじゃ解決しないよ」
奏はフッと微笑んで私の肩をポンポン叩くと、ポケットに手を突っ込んで壁から離れて体育館へと向かった。
奏の言う通り。
私は2年間も彼女だったのに、蓮が何かに思い悩んでいた事に気付かなかった。
浮気が許せなくて感情任せにしてしまった結果、大事な事を見過ごしていた。
それは、浮気をした時だけじゃない。
先日ケンカをした時も同じ。
蓮の気持ちを最後まで聞いてあげずに逃げてしまった。
私は奏からの最後のアドバイスが胸に響くと、体育館の方に吸い込まれていく背中に向かって叫んだ。
「奏ーっ!」
大きな声が奏の足を止めると、奏は振り向いて言った。
「何ー?」
「卒業おめでとう! ……それと、今まで本当にありがとう」
お世話になったお礼と感謝の意味を込めて、最後は笑顔で締めくくった。
すると……。
「卒業おめでとう。これからも頑張れよ。自分に負けんなよ」
奏は右手をピンと伸ばしてピストルを打つように人差し指を向けて私にそう言った。
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