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第二十二章
156.エスカレートする花音の悪口
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「あいつ、諦め悪くない? もう別れてるのに、まだしつこく蓮の周りをうろついてるよ。勉強を教えてもらうフリして近づいちゃってさぁ」
「自分がブスだって自覚してねーし。ねぇ、花音が鏡でもプレゼントしてあげれば? ま、あいつが美しくなるまで100年かかりそうだけどぉ」
「あっはっは……、やっだぁ。せっかくプレゼントした鏡がショック過ぎて割れちゃうよ~」
「蓮は優しいから近付けばまたやり直してもらえると勘違いしてんじゃない?」
「人の優しさを悪用するなんて最低」
「ブスの癖に色目使っちゃってさぁ。まぁ、その色目すらキモいんだけど」
「ちょっと~、花音。言い過ぎ~」
花音の人格崩壊が幕開けした。
しかも、ギャル友達を巻き込むから余計迷惑極まりない。
花音はどうやら先日のバレンタインで蓮にフラれてしまったとか。
その話は噂で聞いた。
だから、報復措置はエスカレートしていく。
蓮と付き合い始めてから毎週のように嫌味は言われてきたけど、女子更衣室だけでは気が収まらないようで、所構わず悪口を言うようになっていた。
今日は教室に男子が少ない昼休みを狙い、後方扉の片隅で仲良しメンバーと、私に聞こえるように敢えて大きな声で言っている。
悪口は聞き慣れてるけど、これ以上エスカレートしないように黙って耐え抜くしかなかった。
すると……。
「いつもそんな感じで悪口言ってんの?」
扉からふらりと姿を現した蓮。
扉側の壁に背もたれしている花音達に怖い顔を向けてそう告げた。
人目を憚らずに悪口を言ってた結果、たまたま壁1枚挟んだ先の蓮の耳に届いていた。
一方の花音達は、注意力が散漫してなりふり構わず悪口を話していた結果、災いを招く事に。
花音は蓮と目が合ったと同時に笑顔が消えた。
「『あいつ』って梓の事を指してるよね。俺の周りがどーのこーのって」
「……やっだぁ。蓮、違うってば! 私達は悪口なんて言ってないよ」
「そうそう。私達じゃないよ~」
「蓮の聞き間違いなんじゃない?」
「ふざけんな! しっかりこの耳で聞いたから間違いなんかじゃない。お前らが誤魔化そうとしても、俺にはわかってんだよ!」
蓮の怒号が教室に響き渡った瞬間、それまで賑やかだった教室内がシンと静まり返った。
花音達はバツが悪そうにお互い顔を見合わせた。
「真相はわからないけど、その話が今始まったものとは思えない」
「ごっ、誤解だよ、蓮……」
「あたし達が普段から人の悪口を言う訳ないよ」
「俺はあいにく勘が良くてね。自分の悪口を言われるのは全っ然構わないけど、どうして梓なの? あいつがお前らに何かした? しかも、人前で堂々と悪口を言うその神経どうかしてる」
「……」
厳しく詰め寄る蓮にバッチリ悪口を聞かれた花音達は返す言葉がない。
蓮の反論は、いつも強気で怖いもの知らずの花音達を一瞬で黙らせてしまうほど強烈に効いていた。
梓は黙って様子を見守っていたが、すっかり機嫌を損ねてしまった蓮の冷たい視線は次に自分へと向けられる。
「お前……。ちょっと来い」
「……え、私?」
「いいから早く来い!」
蓮は声を荒げておかんむり状態のまま梓の手首を掴んで、バタバタと足跡を立てながら教室を出て行った。
梓は手を引かれながら蓮の背中に言う。
「蓮……、どうしたの? ねぇ、蓮ってばぁ! どうして私に怒ってるの?」
「……」
蓮は無言のまま廊下に居る人々の間を潜り抜けてひと気の少ない理科室の方へ向かっている。
2年付き合っていた私にはわかる。
蓮の背中から醸し出す悲痛な叫びが……。
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