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第二十一章
153.怒りが収まらない大和
しおりを挟むーー梓が体育館の用具室で襲われそうになった日の、翌朝。
「ほら、梓に謝れよ! 昨日自分達が何したか覚えてるだろ。当然たっぷり反省したんだよな?」
大和と奏は、昨日梓を用具室に監禁した主犯格の男三人と、梓を用具室へ行くように伝達した小山を人影のない体育館裏に並べて、梓の目の前に跪かせた。
雨雲の隙間からパラパラと降り注ぐ小雨が、この場に集まる七人の身体に染み込んでいく。
大和は奏にヘルプを頼んで一人も逃げ出さぬように男達を囲い込んでこの場へやって来た。
男達は大和に逆らえないが、謝罪をする様子もない。
まるで自分達には無関係のように目線を合わせず沈黙を続けている。
だが、大和も黙っちゃいない。
「あっ、そう。謝る気がないなら……、誰から片付けていこっかな。……まぁ、誰が先でもいっか。どうせ一人残らず地獄行きにしてやるつもりだし」
大和は挑発的な態度で指の関節をボキボキ鳴らしながら、男達を上目遣いで睨みつける。
隣にいる私まで震え上がってしまうほど、昨日に劣らず憤慨している。
すると、奏が横から軽い口調で言った。
「ねぇねぇ、君達早く謝った方がいいよ~。大和はキックボクシングの県大会三位の実力者だから。四人同時にかかってきても負けないからねぇ」
「文句があるならいつでもかかってこい。顔が変形するくらいボッコボコにしてやるから」
「ちょっ……。奏、大和。そこまでしなくても……」
梓が大和の間に割って入った瞬間、男達のうちの一人が先導を切った。
「菊池……。昨日はゴメン。菊池は何も悪くないのに嫌な想いをさせて悪かった」
左端の一人が頭を下げて謝った後、立て続けに残りの三人は「ごめん」と言って頭を下げた。
すると、大和の目線は梓へ。
大和「こいつらは謝ってきたけど、どうしたい? 俺が今ここで殺る?」
梓「ちょっ、殺らなくていいって! 謝ってくれただけで十分だから……」
大和「だってよ? オメェら、梓に命救われたな。俺がこいつの立場だったら間違いなく殺ってるけど?」
男達「……」
奏「蓮への腹いせなんてみっともないね。しっかり男磨いて女の気持ちを括りつけておきなよ。女の気持ちが揺れたという事は、君達にも欠陥があるんだからね。……それから、二度と梓に手ぇ出すなよ。次は無いからね~」
大和が顎でクイッと教室に戻るように合図をすると、男達は無言のまま走って校舎へと戻って行った。
実は昨日の件があって学校に来るのが怖かった。
あの男達に報復されたらどうしようとか、変な噂を流されたら困るなとか、色々考えてた。
でも、学校に行く事を決心して最寄駅へ到着すると、大和と奏が改札の奥で待っていて警護するみたいに学校まで送り届けてくれた。
二人が問題を解決してくれたお陰で残り少ない登校への不安から解消された。
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