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第二十章
143.信じてる
しおりを挟む「お! ブラウニーじゃん。旨そ~」
「えへへ……。ネットで美味しそうなのを検索して一生懸命作ったよ」
「ほら、一緒に食べよ。口開けてぇ」
「私が作ったものだから蓮が先に食べてよ」
「どっちが先に食べても一緒。ほら!」
蓮はブラウニーを指でつまみ、ムクれている梓の口元まで持って行く。
梓はパクリと食べると、蓮は砕けた笑みを浮かべて2個目のブラウニーをヒョイと自分の口の中に放り込んだ。
これで3年連続、蓮にバレンタインチョコを渡した。
でも、チョコを受け取ってもらえたからと言っても復縁した訳じゃない。
四回目のチョコを渡す日が訪れるかどうかは未だに不明だ。
刻一刻とと迫っている本当のお別れに、喪失感に拍車がかかる一方。
復縁への道筋が見つからずに気は焦るばかり。
「蓮……、私とやり直そ。もう90パーセント以上努力してるから。……お願い」
「どうしてそんなに俺とやり直したいの?」
「いま私のチョコを受け取ってくれて食べたでしょ」
「それなら、今日チョコを受け取った女全員と付き合わなきゃダメだな」
「蓮……」
復縁しようと願っても、なかなか想いが届かない。
こんなに近くにいても友達まで関係が回復しても、私の願いは未だに雲の上。
「……お前の悪い所、まだ見つからないの?」
「頑張って探してるんだけど、今のペースだと悪いところが見つかる前に卒業しちゃう。蓮と会えなくなっちゃうよ……」
梓は蓮と会えなくなる寂しさから、目頭がじわりと熱くなった。
だが、既に限界だという事を知られたくない。
表情を隠す為に視線を下げて、涙の蛇口を止めるかのように膝下に置く手でスカートをギュッと握った。
しかし、梓の気持ちがじわじわと届いている蓮は、梓の拳の上から手をギュッと握りしめた。
「お前ならすぐ見つかるよ。俺は信じてるから……」
蓮が私の悪いところに関して一切妥協しないのは、きっと何か深い理由に繋がっている。
だから、答えは自分で探して、自分で解決する事を願っている。
蓮……。
私達必ずやり直そうね。
蓮の言う通り、自分で必ず悪いところを見つけて克服するから。
だから、それまで心変わりしないで待っててね。
涙がポロリと流れ落ちた梓はそう決意をしながら蓮の手を握り返した。
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