78 / 184
第十一章
78.二度目の自宅
しおりを挟むデートを放ったらかしてきたから今すぐ先生の元に向かわなきゃいけないのに……。
私はこの家を出ていく事が出来なかった。
蓮の体調不良が本当かもしれないし、手を掴んでいた時の瞳が寂しそうだったから。
「両親が不在中だからって変な事しないでよ」
「しねーよ。……ってか、俺を何だと思ってる」
「だから、エロバカ狼でしょ? この前も言ったでしょ。自分の都合が悪いところは学習しないのね」
「お前だって他人事じゃねーだろ。……まぁ、いいや。玄関で言い争っていても意味がないから、とりあえず家に上がって」
手を離してぶっきらぼうにそう言うと、部屋に行くよう背中を向けた。
足元に目を向けると、尻尾を振って再会を喜ぶ愛犬キャラメル。
キャラメルのつぶらな瞳までもが、私の足を引き止める。
仕方ない。
既にデートは投げ出しちゃってるから、先生には後で謝ろう。
悪意はないけど、理解ある先生の方をつい後回しにしてしまう。
「ワガママに付き合うのは今日だけだからね」
膨れっ面のまま渋々靴を脱いで家に上がり、玄関で靴を揃えた。
共稼ぎの蓮の両親は、土日は外出する事が多い。
今日もそんなサイクルなのではと思って、両親不在というのは特に気に留めなかった。
予め用意されていたお昼ご飯のカレーを二人で食べ終えると、蓮は私を部屋に連れて行き、先日撮った学園祭の写真を見せてくれた。
「はい、渡すの忘れてた。学園祭の時の俺らのツーショット写真」
「要らないよ……。先生にこの写真を見られたらマズイし」
「お前がいま俺と一緒にいる事がバレたらもっとヤバイけどね」
「せっかく来たのに、そんな意地悪言うんだ。蓮の身体を心配してたのに。もう帰る……」
「嘘だって。まだ帰らないで」
蓮は冗談を間に受けて腰をあげる私にほんのり微笑みながら腕を掴んで引き止めた。
今日の教科は、国語と英語。
数学はよく理解しているなぁ~と思って感心していたけど、時間を計りながら同じ文章題を解いて、互いにドリルを交換して丸付けをしても、蓮はやけに点数が取れている。
普段、クラブで遊びまくっている遊び人気質の蓮は一体いつ勉強しているのだろう。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。

アラフォー×バツ1×IT社長と週末婚
日下奈緒
恋愛
仕事の契約を打ち切られ、年末をあと1か月残して就職活動に入ったつむぎ。ある日街で車に轢かれそうになるところを助けて貰ったのだが、突然週末婚を持ち出され……

忘れられたら苦労しない
菅井群青
恋愛
結婚を考えていた彼氏に突然振られ、二年間引きずる女と同じく過去の恋に囚われている男が出会う。
似ている、私たち……
でもそれは全然違った……私なんかより彼の方が心を囚われたままだ。
別れた恋人を忘れられない女と、運命によって引き裂かれ突然亡くなった彼女の思い出の中で生きる男の物語
「……まだいいよ──会えたら……」
「え?」
あなたには忘れらない人が、いますか?──
月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜
白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳
yayoi
×
月城尊 29歳
takeru
母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司
彼は、母が持っていた指輪を探しているという。
指輪を巡る秘密を探し、
私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。


手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】
まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と…
「Ninagawa Queen's Hotel」
若きホテル王 蜷川朱鷺
妹 蜷川美鳥
人気美容家 佐井友理奈
「オークワイナリー」
国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介
血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…?
華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる