Re.start ~学校一イケメンの元彼が死に物狂いで復縁を迫ってきます~

風音

文字の大きさ
上 下
41 / 184
第七章

40.重大発表

しおりを挟む



  ーー高梨先生とデートをした翌日の月曜日の昼休み。
  紬と一緒に教室から出てくると、付近で大和に遭遇した。


  大和は蓮の秘密を知っているのだろうか。
  いや、蓮の事だから恐らく病気の事は伝えていない。
  元カノの私には何でもお見通しだ。

  でも、親友なのにこんなに大事な事を知らないでは済まされない。
  刻一刻と迫る命の期限。
  早急にこの事実を伝えなければと思い、腕時計で残り時間を確認してから二人を中庭に連れ出した。



「重大発表がある」



  緊張のあまり、ゴクリと音が鳴るほど大きく息を飲んだ。
  正面右側には大和。
  そして、正面左側には紬を立たせて神妙な面持ちでそう言った。


  ここ2日間、蓮の病気の件で人知れず頭を悩ませていた。
  蓮は病気を隠す為に誤魔化していたけど、命に関わる問題だから一人では抱えきれない。

  紬と大和。
  蓮と接点があるこの二人には現状を知ってもらった方がいいと思って、思い切って打ち明けた。



「蓮はもう先が長くないかもしれない」



  そう言った瞬間、二人は仰天して目を見開いた。
  その言葉を口にした自分自身も怖くて唇が震える。



大和「え……。いきなり何なんだよ」

紬「ねぇ、蓮くんの先が長くないってどういう事?」



  先日の花火大会が私と蓮にとって最後の思い出かもしれないと思ったら急に悲しくなって涙が浮かび上がった。



  梓の涙によって事態の深刻さに拍車がかかると、紬と大和は顔を見合わせた。



梓「どうやら不治の病みたい。蓮に探りを入れてみたら誤魔化したの。恐らくもう先は長くない……」

大和「は?  見る限りではピンピンしてるけど」

紬「嘘でしょ……。蓮くん、今日もいつも通り元気だったよ」



  うんうん、わかる。
  認めたくないし、驚くのも無理はないよね。

  先日、蓮に体調はどうかと尋ねたら『昨日よりは良くなった』と言ってたから、きっと体調には波があるに違いない。
  きっと二人は仮の姿に惑わされてしまったのだろう。



梓「実は先日から様子がおかしかった。突然私とやりなおしたいって言って頭を下げてきたり、いきなりかわいいとか言い出したり、体調はどうって聞いてみたら、『昨日よりは良くなった』って。それに、本人の口から『もう時間がないんだ』って言ってて……」

大和「マジか……。お前をかわいいって言うなんて、病状は相当深刻だな。毎日あいつの傍にいたのに全く知らなかった」
 

梓「何よその言い方!  ムカつく~」

紬「蓮くんの体調が悪かったなんてちっとも気が付かなかった。元カノだからこそ気付いたんだね」


梓「多分ね。心配になって本人に何度か病状を確認したんだけど、曖昧な返事をしたり、誤魔化したり。きっと病気だという事を知られたくないのかも」

大和「お前の話を聞いてると、それはマジなやつだな。蓮は確かに肝心な事を話さないから」

紬「もしかしたら、私達の想像以上に病状が深刻かもしれないね。あんなに元気そうに見えるのに……。ショック」


梓「蓮がこの世から居なくなってしまうと思ったら耐えられなくなって、思わず『逝かないで』と伝えたら、『まだ、逝ったらダメ?』と聞き返してきて……。もしかしたら、心の中で覚悟を決めているのかもしれない」

紬「梓……」

大和「……そっかぁ。それはキツイな」


梓「でも、今一番苦しいのは本人だと思う。人生の残り時間、みんなで力を合わせて気遣ったり優しく接してあげないとね。毎日笑顔で過ごせるように寄り添ってあげよう」

大和「そうだな。みんなで身体を労わってやろう。蓮の為に各々が出来る限りの事をしてあげよう」

紬「賛成。せめて私達だけでも力になってあげないとね。少しでも元気づけてあげたいよね」



  蓮の現状を聞いたばかりの紬と大和は、ショックを受けて肩を落としていた。
  深刻な現状を伝え終えると、昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴った。

  まるで口から魂が抜けていくかのように深いため息をつく大和。
  顔面蒼白で身体を震わせている紬。

  蓮が身近な人物が故に、衝撃的な事態は二人の心に影を被せた。
  三人は重苦しい空気の中、暗い顔をしながら誰一人として口を開かぬまま教室へと帰って行く。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

アラフォー×バツ1×IT社長と週末婚

日下奈緒
恋愛
仕事の契約を打ち切られ、年末をあと1か月残して就職活動に入ったつむぎ。ある日街で車に轢かれそうになるところを助けて貰ったのだが、突然週末婚を持ち出され……

忘れられたら苦労しない

菅井群青
恋愛
結婚を考えていた彼氏に突然振られ、二年間引きずる女と同じく過去の恋に囚われている男が出会う。 似ている、私たち…… でもそれは全然違った……私なんかより彼の方が心を囚われたままだ。 別れた恋人を忘れられない女と、運命によって引き裂かれ突然亡くなった彼女の思い出の中で生きる男の物語 「……まだいいよ──会えたら……」 「え?」 あなたには忘れらない人が、いますか?──

アンジェリーヌは一人じゃない

れもんぴーる
恋愛
義母からひどい扱いされても我慢をしているアンジェリーヌ。 メイドにも冷遇され、昔は仲が良かった婚約者にも冷たい態度をとられ居場所も逃げ場所もなくしていた。 そんな時、アルコール入りのチョコレートを口にしたアンジェリーヌの性格が激変した。 まるで別人になったように、言いたいことを言い、これまで自分に冷たかった家族や婚約者をこぎみよく切り捨てていく。 実は、アンジェリーヌの中にずっといた魂と入れ替わったのだ。 それはアンジェリーヌと一緒に生まれたが、この世に誕生できなかったアンジェリーヌの双子の魂だった。 新生アンジェリーヌはアンジェリーヌのため自由を求め、家を出る。 アンジェリーヌは満ち足りた生活を送り、愛する人にも出会うが、この身体は自分の物ではない。出来る事なら消えてしまった可哀そうな自分の半身に幸せになってもらいたい。でもそれは自分が消え、愛する人との別れの時。 果たしてアンジェリーヌの魂は戻ってくるのか。そしてその時もう一人の魂は・・・。 *タグに「平成の歌もあります」を追加しました。思っていたより歌に注目していただいたので(*´▽`*) (なろうさま、カクヨムさまにも投稿予定です)

月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜

白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳 yayoi × 月城尊 29歳 takeru 母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司 彼は、母が持っていた指輪を探しているという。 指輪を巡る秘密を探し、 私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

睡蓮

樫野 珠代
恋愛
入社して3か月、いきなり異動を命じられたなぎさ。 そこにいたのは、出来れば会いたくなかった、会うなんて二度とないはずだった人。 どうしてこんな形の再会なの?

処理中です...