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第二章 アーレントと友三爺さん

第32話 追い込み漁

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 ご機嫌な三匹を沿岸に残し、俺は別行動を取ることにした。まあ、三匹が溺れることは無いだろう。漁が済んだら、源さんには脂の乗ったお魚を”エガシラ焼き肉のたれ”で焼いてあげよう。

 ボルトとカンナは泳ぎながら小魚をバクバク食べている。「きゅ~、きゅ~♡」と超ご機嫌。もう10匹以上は食べているんじゃないかな?あれじゃあ、”豚こま”をちょこっと刻んだだけじゃ足りないよな。

 ごめんよ、二匹とも...。カワウソ君なんて飼ったことがなかったから食事量が分からなくて。今後は食事量を見直すからね。

 さて、俺も漁を開始しますか。もちろん、魔法を使って。狙いはマグロだ。日本人はマグロが好きだから。それも、クロマグロ(本マグロ)がいればぜひ探したいな。

 サーマレントは日本とほぼ同じ気候らしいから、旬のお魚も日本とほぼ同じと考えていいのかな?状況を見て旬のサンマやイワシも狙いたい。あと、地味にサーマレント産のモズクやワカメも食べてみたい。

 海産物といえば、日本人にとってはやはりマグロかカニだろう。まあ、今回はマグロに絞るかな...。カニにはもっと寒くなってからかな。まずはマグロでいこう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 マグロの群れを探知魔法”森本オレ”さんに探してもらった。

 すると、ちょうど群れで泳いでいるマグロの一群が”森本オレ”さんの探知レーダーに引っかかり、「太郎、一番近い場所だと沖合い50㌔で一群を発見したよ」と教えてくれた。

 どうやら、この近辺で泳いでいるマグロの群れはそれだけの様だ。他を探しに行くのも面倒なので、その群れごと俺の魔法で頂いちゃうことにした。

 この魔法に名前を付けるとしたら”捕獲魔法”だろうか?そのまんま過ぎるかな?

 えい!と”捕獲魔法”を発動して、お魚をゲットした。もう、いやなほどあっさりと。

 ちなみに、その”捕獲魔法”でゲットしたお魚さん達はというと...こんな感じであった。

 マグロ(生)×62
 イワシ(生)×12425
 タコ (生)×43
 イカ (生)×33
 サバ (生)×512

 そう表示された。どうやらマグロは、イワシやサバの群れを追いかけていたようだ。マグロ以外にも、いい魚が手に入った。ただマグロはマグロでもビンチョウマグロ(ビンナガマグロ)だった。

 そしてこのイースカンダス周辺にはクロマグロはいない様だ。まあクロマグロの旬は12~1月だからな。またその時期に探しにくれば出会えるかもしれない。その時までお楽しみは取っておくか。

 それにしても、イワシが取れすぎた...。もうイワシ漁は一生しなくてもすむだろう。

 今度、皆んなを呼んで”つみれ汁パーティー”でもしようかな?それとも”根津精肉店”を、”根津イワシ専門店”に変えようかな...。

 じょ、冗談ですよ。”柴田水産”とは争いたくない。大量の魚は柴さんに定期的に卸せばいいしな。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 マグロやイワシをたくさん収穫して、ルンルンな気分で浜辺に戻ると、三匹が仲良く鬼ごっこをしていた。元気だな~。たまには休憩もとってくれよ...。
 
 俺の顔を見ると、三匹は「ご主人様だわん!」、「きゅ~、ご主人様!」と言いながら駆け寄ってきた。

 バタバタ、トコトコ、ペタペタ...。愛くるしい足音を響かせて...。

 源さんが「何をしていたんだわん?」と代表して俺に聞いてきたので、「ここよりももっと遠くに住んでいるお魚さんたちを取っていたんだよ」と説明した。

 すると源さんは「ご主人様はすごいんだわん!」と俺の周辺をぐるぐる回って誉めてくれた。本当に主人に甘い生き物だ。

 さらにカンナが、「きゅ~!私達も一緒にお魚さんをたくさん取りたいです~♡」と言い出した。

 源さんとボルトの顔を見ると、二匹とも頷いた。どうやら源さんもボルトもカンナと同じく、俺と一緒に漁がしたい様だ。それならば、皆んなでいっちょう漁をしてみますか!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 俺と源さん、カンナ、ボルトで”追い込み漁”をすることにした。まず、三匹に沖まで泳いでもらった。

 俺の魔法で縦100m×横200mの網を作成した。この網は源さんたちにはしっかりと認識できるが、魚たちには透明にしか見えないという、非常に都合の良いものだ。

 某有名小説サイトの”なったろう”でも、こんなに都合のいい小説を書く作者はいないだろうと思うぐらい、ご都合主義を貫いている。少し恥ずかしくなってくる。

 で、でもいいの!

 自分には商店街を復活させると言う使命、大義名分があるのだ!と、恥ずかしさを紛らわすかのように、心の中で自分に言い聞かせた。

 沖で待機している源さん達から200mほど浜辺寄りに、網を縦横めい一杯広げた。その場所に、たくさんお魚さんが取れますようにと祈りを込めてセットした。

 これで準備完了。あとは源さん達にお魚さんたちを網に誘導してもらい、十分に網にお魚さんたちが入ったら、俺が魔法で網をしめるだけだ。

 「じゃあ皆んな、お魚さんたちを網に追い込んでね~」と念話で伝えた。すると三匹はすごい勢いで泳ぎ始めた。

 源さんはバタバタバタと犬かきを始め、ボルトとカンナは海中からうねる音が聞こえるぐらい、ぐるんぐるんと海中を動き回った。

 探知魔法”森本オレ”さんでで確認すると、どんどんセットした網の方向にお魚さんが吸い寄せられていく。

 「お魚さん達が網に集まっていくわん!!どんどん行くわん!!」

 「きゅ~!源さんに負けていられないわ。お兄ちゃん!!」

 「そうだなカンナ!!源さんに負けられない、きゅ~!!」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 皆んな気合が入っている。もう十お魚さんたちが網に入っているようだからもう終わりにしよう。ありがとうね。三匹とも。

 漁はあっという間に終了した。

 「よーし皆んな、帰ってきていいよ。お疲れ様~」と俺は三匹に念話で伝え、網の入り口をしっかりと塞いだ。

 「ご主人様、どのくらい取れただわん!」や「お魚さんどこですか、きゅ~?」と、三匹は自分たちの仕事の成果を確認したいようだった。そこで、網の中身をそのままアイテムボックス内にしまうのではなく、たくさんのお魚の詰まった網を三匹の目の前に出すことにした。

 「じゃあ海から網を出すよ~」と言って、網をそのまま浜辺まで持って来た。網はパンパンに膨らんでおり、大量のお魚が詰まっていることがよく分かる。三匹は大興奮だ!!

 「きゅう~♡大量です!大量です!」

 「大量です、大量です、きゅ~!!」

 「凄い量なんだわん!!ご主人様はすごいんだわん!!」

 そして...浜辺一面に魚を網から出した。

 ズドドドドドドドドドォォォォォォォォォ!!!

 ビチビチビチ!!ピチピチピチ!!

 ビチビチビチビチ!!ビチビチビチビチ!!

 大量のお魚が浜辺に溢れかえり、まるで青いじゅうたんが一面に敷き詰められているようだ。幻想的で感動的な光景に、三匹は大興奮している!!

 源さんは「わんわん!!!」と喜んで吠え、お魚さんたちの周りをぐるぐると回り始めた。

 カンナとボルトは「きゅ~!きゅ~!」と嬉しさのあまり、浜辺にゴロゴロと寝返りをうったり、海の中にまた入りに行ってしまった。

 「これが皆んなの漁の成果だよ。よく頑張ったね。俺が新鮮な状態で保存しておくからね」と言ってアイテムボックスの中にしまった。

 イカ(生)×555
 イワシ(生)×12139
 キス(生)×36
 アジ(生)×510
 シャケ(生)×765
 サンマ(生)×1165
 サバ(生)×365
 カツオ(生)×428
 鯛(生)×23
 黒鯛×(生)8
 タコ×(生)11

 こんな感じであった。

 今回は、文句のつけようのないほどの量が取れた。

 ただ...イワシは取れ過ぎだな。手元に2000匹を残して、残りはリリースした。また取りに来ればいいもんね。

 このお魚さんたちを使えば、商店街の活性化イベントが出来るんじゃないか?柴さんに相談してみようかな?

 でも...まずは、活きのいい魚を皆んなで焼いて食べようと思い、浜辺に実演用のカセットガスグリルと調理道具をアイテムボックスから取り出した。

 もう午後1時30分。カンナとボルトは小魚を大量に食べていたが、朝から何も食べていない源さんはお腹がペコペコだろう。

 取ったばかりのカツオやサンマを、カンナとボルトが食べやすい大きさに切ってあげ、俺と源さんは内臓を取ったアジやイカなどを、グリルの上で豪快に焼いた。

 「きゅ~♡美味しい、きゅ~♡美味しい!」とカンナは叫び、ボルトは「美味しいです。ご主人様...きゅ~♡」としみじみ呟いた。個性が出るね。

 源さんは「ご主人様、美味しいですわん!脂がのっているアジが美味しいですわん!でも肉も食べたいわん!」と、食べる勢いが止まらない。
 
 三匹とも幸せそうで本当に良かった。心の中で「今日は本当にありがとう」と呟きながら、太郎は真昼間からビールを飲んでしまうのだった。
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