異世界の力で奇跡の復活!日本一のシャッター街、”柳ケ瀬風雅商店街”が、異世界産の恵みと住民たちの力で、かつての活気溢れる商店街へと返り咲く!

たけ

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第二章 アーレントと友三爺さん

第31話 三匹の動物とサーマレントの海

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 三匹で鬼ごっこをして遊んでいる最中、源さんに追いかけられて逃げ回っていたボルトが、直径30cmほどの木に勢いよくぶつかってしまった。

 だが次の瞬間、ボルトはすくっと起き上がり、「きゅ~♡!!」と元気いっぱいの鳴き声を上げて、再び二匹の元へ駆け寄っていった。

 おいおい、脅かさないでくれよ...。

 源さんも仲間ができたことがよほど嬉しかったのだろう。「わんは嬉しいんだわん!」や「ボルト、カンナ、待つんだわん!!」と興奮した様子で二匹を追いかけたり、逃げたりと、本当に楽しそうにボルトとカンナとじゃれ合っている。

 三匹はまるで兄弟のように仲が良い。本当に良かった。

 ...。

 ...。

 いやいや、違う違う、そうじゃない。今回はただサーマレットに遊びに来たわけではない。そう、魚を中心としたサーマレットの魅力的な食材を求めに来たのだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 そんなことを考えているとカンナが俺の元にやって来た。そして...。

 「きゅ~♡カンナです!ご主人様、危ない所を救って頂きありがとうございました!さらに名前まで付けて下さって♡」と、礼儀良く2本足で立ってお辞儀をした。

 その後、カンナは俺の左足からするすると肩まで登ってきて、左頬に優しくすりすりしてきた。その仕草がとても愛らしく、カンナの可愛さに心が温まった。

 カンナも話せるようになったのね。もう驚かない。だって、つぶらな瞳をしたわんこ様と今まで会話していましたから。わんこ様と話せてカワウソ君たちと話せないっていうのもおかしな話だからな...。

 まあ、もうあまり深く考えない。異世界ってすごい所なんだ、そうまとめておこう。

 すると、足元から「お頭様!」と別の声が聞こえた。

 「お頭様!」って、なんか独特な呼称だな。なんだか山賊のカシラになった気分だ...。まあ、いいけど。

 「ボルトです!ありがとうございました!僕にも名前を付けて下さって!超嬉しいです、きゅ~!!あとその、お頭様...。脂がのったお魚をもっと食べたいです!きゅ~♡」とボルトも言った後、俺の右足からスルスルと肩まで上って来て右頬にすりすりとしてきた。

 ボルトはしっかりと”魚がもっと欲しいよ”アピールをしてきた。

 するとカンナは、「きゅ~!お兄ちゃん!ご主人様に催促してはダメだよ。嫌われてしまうよ!」と右肩にちょこんとのっかるボルトに文句を言い出した。

 「げっ、ご主人様、嘘です。ごめんなさい、きゅ~」と、俺の右肩の上で縮こまって反省している様だ。

 何となく、二匹が俺の肩付近で話していると、二つのぬいぐるみを使ってお茶の間をニギわしたお笑い芸人、”パパペットママペット”を思い出す。

 ”子牛くん”と”アマガエルくん”元気かな...?

 「きゅ~、でも...脂がのったお魚は私も食べたいかも」とカンナは言った後、ボルトに目で合図を送り、二匹は俺の肩からスルスルと降りて、足元で何やら話し合いを始めた。

 「きゅ~、お兄ちゃん!一人で頼んじゃ駄目だよ。こういう時は一緒に頼むの!」

 「さすがだなカンナ、そうしよう、きゅ~」と、二匹であれこれと話し合っている。俺と源さんはその様子を見ながら待ちぼうけだ。

 あ、あの、二匹とも。全部聞こえているんですけど...。もしかしたらこれもカンナの作戦⁉


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 俺と源さんが水分補給をして日陰で涼んでいると、二匹の意見がやっとまとまった様だ。カンナが「きゅ~♡ご主人様、ごはんの時に脂がのった魚を、もう少し増やして♡」と頼んできた。

 するとボルトも「お願いします、お頭様~きゅう~♡」と、二匹そろって俺の正面に回り込み、ウルウルとした瞳でお願いをしてきた。

 どこで覚えたんだ”瞳ウルウル攻撃”?しかも二匹同時に⁉自分たちの可愛さをよく理解をした攻撃だ。あ、あざとい...。

 すると、源さんも慌てた様子でカンナとボルトの横に駆け寄り、「わんも肉汁がしみたご飯を増やして欲しいんだわん!肉のたれは”エガシラ焼き肉のたれ”がいいわん!あと、沢山食べたいわん!」と、ちゃっかり”二匹のウルウル攻撃”に便乗してアピールしてきた。

 三匹の”瞳ウルウル攻撃”...。勝てるわけがない...。

 「わかったよ、皆んな、分かったからね。こっちに来てより元気になったから、ご飯の量が足りないよね。皆んなのご飯の量を増やすからね」と、”チーム根津”の最強トリオに伝えた。

 それなら、先に海に行って三匹と一緒に漁をしようかな?ボルトとかカンナも、これだけ身体能力が向上すれば、勝手に海の中に入って魚を捕まえて食べられるだろうし。

 時速60キロ出せれば魚も簡単に取れるだろう。

 アーレント邸から扉までの道のりに海が広がっていたからな。探索魔法の”森本オレ”さんに漁に適した場所を聞けば教えてくれるだろう...。

 よし、じゃあ、アーレント邸に行く前に、ちゃちゃっと漁をしちゃいますか!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 三匹に急き立てられるように、源さん、カンナ、ボルトを連れて近隣の浜辺までやって来た。

 広大な青い海はどこまでも透き通り、世界の広さを感じさせてくれる。さらに、ゴミ一つない砂浜。完璧だ。

 魚はもちろん、甲殻類やイカ、タコなどの軟体動物、さらにはワカメ、ヒジキ、モズクなどの海藻類も美味しいだろう。いや、綺麗な海では一番味の違いが現れるかもしれない。

 俺が一人、目を輝かせ海を見つめていると、三匹もそわそわし始めた。 

 「きゅ~!ご主人様、あの水の中に入ってもよろしいでしょうか!きゅ~!本能が、本能が、水の中に入りたいといって抑えられないです!!」

 「僕もです。身体が落ちつきません、きゅ~!!」

 さらには、マックステンションになった生き物がもう一匹いた。

 「ご主人様!海だわん!海だわん!」と言いながら、俺の周りをぐるぐると回り始めた。「綺麗だわん!あの中に入ってみたいだわん!」と興奮が抑えられないのか、その場でジャンプをし、砂浜でゴロゴロと寝返りをし始めた。

 「いいけど、皆んな。最初は浅瀬で体を慣らしてから、深い所に行くんだよ。無理しちゃだめだよ」と教育的指導を行った。

 「きゅ~、もちろんです!」

 「はいです、きゅ~!!」

 「もちろんだわん!!」

 三匹ともテンション高めで、嬉しそうに海に飛び込んで行った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 カンナとボルトは、さすがに泳ぎ方が板についている。

 手足の指間には水かきがあり、体も平べったいため水の抵抗を受けにくい。身体や尾っぽを上下左右に動かし、海中を素早く泳ぎまわる。

 たまにご満悦の様な声で「きゅ~!きゅ~!」と愛くるしい鳴き声を発する。

 一方、源さんは顔を水の上に出し、脚で水を掻きまわして進んでいる。「楽しいわん!楽しいわん!」とテンションが爆上がり。

 ただ、水しぶきが目に入ったのか、源さんは慌てて「ご主人様、ご主人様!目が痛いわん!目が痛いわん!」と俺に被害を訴えてきた。海水に”おめめ”をやられたらしく、「こ奴は...恐るべき攻撃を仕掛けてくるんだわん!」と勝手に海水を強敵認定した様だ。

 それ、”必殺お仕置き人”の、”念仏の銀”が良く使うフレーズじゃないか...。源さん、”必殺お仕置き人”シリーズが好きだからな...。

 皆んな...楽しいのはいいけど、あまり遠くに行っちゃだめだよ。

 岸からどんどん見えなくなるまで遊びに行ってしまう動物たちに、一人ハラハラする太郎であった。
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