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第二章 アーレントと友三爺さん

第30話 新たな戦闘種族の誕生

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 「ところでカワウソさん達は何を食べるんだい?」とお袋が聞いてきたので、「昨日はお店にあった”豚こま”を生のまま細かく刻んであげたら、喜んで食べていたよ」と答えた。

 お袋が手早くカワウソ君たちの朝ご飯を作ってくれた。そして、「柴さんところで新鮮なイワシでも買ってこようかね。魚の方が好きだろう?」と聞いてきた。

 お袋も、すっかりカワウソ君たちの可愛さに負けた口かもしれないな。

 カワウソ君たちは「きゅー♡きゅー♡」と喜びながら、豚こまをはぐはぐと仲良く食べていた。

 お袋はその姿を見て「可愛いね。本当に愛くるしいね♡」と、すっかりメロメロになった。トヨさんも「可愛いですね♡でも...こんなに可愛いと、悪い人に連れ去られないか心配になりますよ」と言ってきた。

 確かに源さんのことを連れ去ろうとした悪い大人がいた。源さんはサーマレットの地を訪れてから、ヘッドバッド一撃でオークを倒せるほど強くなった。体高は25cm程しかないのに。

 だから悪い人に捕まりかけた時、俺が介入することも無く自分で逃げ出し、おまけにすねに蹴りを入れて帰ってきた。

 「大丈夫だわん、””だわん」と俺に伝えてきた。何を思って””なのかは分からないが、俺と一緒にTVドラマ”必殺お仕置き人”を食い入るように見ていた影響かもしれない。まあ、手加減したということだろうけど..。

 確かに、希少性からいえばカワウソ君たちの方が源さんより高い。より連れ去られる危険性も高まるだろう。一匹150万円を超える、生きるダイアモンドだ。何か対策を考えないと。

 まあ...それもそうだが、一回部屋に戻り今日の予定を考えた。早速、サーマレットの地に戻ろうと思う。まだ一日しか経っていないけど...。帰ってもいいよね?もう帰ってきたの?っていう顔されないよね⁉︎

 まあ、冗談抜きで、どちらの世界にも顔を出すようにしていこう。柴さんからの頼まれごとを思い返すと、探さなきゃいけないモノはうちや柴さんの所に必要な肉と魚だけじゃない。

 他にも松茸や高麗人参、美味い野菜や果物、貴金属類だって見つけ出さないと。もちろん、とびきり旨くて価値のある物をね。

 まあ、当てがない旅でもない。アーレント商会というサーマレント全土に店舗を構える商会と知り合えた。これはでかい。更に知識奴隷、いや俺が欲しい奴隷を一人無償でくれるとも言ってくれたしな。

 も、もちろん知識奴隷を頂く予定ですよ。そ、そんな、性奴隷なんて...。俺には敷居が高すぎる...。

 まあ、奴隷の話はおいといて、一旦ダイスに相談してみようかな。友三爺さんもサーマレントから色々な食材を見つけて来たようだし。あとは俺には探知魔法、”森本オレ”もある。

 ふふふふ。完璧だぜ。

 そんな感じで、一人でぶつぶつ呟いていると、源さんが「ご主人様、この子たちにもわんと同じ様に名前を付けてあげるだわん!」と言ってきた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 そうだった...。忘れていた。ついつい”カワウソ君たち”と呼んでいた...。だらしない主人でごめんよ。それにしても、気が利く生後二ヶ月の豆しば、源さんだ。

 そうだな...。

 名前を付けるって案外難しいよな。源さんの時は何となくインスピレーションを感じた。だが今回は...。源さんが大工職人のような名前だから、カワウソ君たちも大工に関連した名前で統一しようかな?

 俺が一人悩んでいる間にも、元気になったカワウソ君たちは源さんと戯れている。やだ、本当に可愛くて癒される。しかし、名前を付ける責任は重大だ。変な名前を付けたら、お袋やトヨさん、いや、あいつたち悪友からも総スカンを食らいそう。

 「う~ん。そうだな~」と悩んでいると、部屋においてある大工道具箱が目に留まった。

 そうだな...大工関係なら大工道具もありだなぁ...。と思いながら道具箱を開いてあれこれ見ていると...。

 ピコーン!!

 ひらめきました!今回も降りてきましたよ!ちょっと昭和チックな効果音でしたけど...。二匹の素晴らしい名前が舞い降りてきましたよ!!

 「オス君がボルトで、メスちゃんはカンナでどうかな?」と、じゃれ合っている三匹に聞いてみた。どうでしょうか?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 じゃれ合っていた三匹がピタッと動きを止めて、俺の発表に耳を傾けた。本当に賢い子たちだな、この三匹は。

 「きゅー♡きゅー♡」

 「きゅー!きゅー!」

 「わん!わん!」

 三匹は大喜びで、俺の足元をぐるぐる駆け回ったり、ぴょんぴょん跳ねたり、布団に潜り込んだりと大忙し。興奮しすぎて、部屋の隅に積み上げた”こっちに亀”全200巻にぶつかりそうになる。

 気を付けてよ...。怪我だけは勘弁してくれよ。

 あまりの興奮ぶりに、お袋とトヨさんも駆けつけ、「何があったんだい?(ですか?)」と聞いてきた。

 訳を伝えると「いい名前を付けたじゃないかい?お父さんも昔、飼っていたハムスターに”コカトリス”っていう名前を付けようとしたけど、却下したもんさ。何なんだい?”コカトリス”って?」

 ”裕次郎”...”コカトリス”になるところだったんだな。あの異世界好きのじじいめ。お袋が”コカトリス”なんてOKするわけないだろうが...。

 まあ、ハムスターに”裕次郎”もどうかと思うけどな...。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ボルトもカンナも本当に可愛い。つぶらな瞳、平たい胴体、短い手足、見ているだけで癒される。

 ボルトとカンナは見た目がそっくりだから、カンナの首元にピンクのリボンをつけてあげた。

 カンナはリボンをつけられた瞬間、「きゅ~♡ きゅ~♡ 」と今まで以上に大きな声をあげた。嬉しかったようだ。

 源さんも「いい名前だわん!それに、カンナもリボンが似合っているわん!!ご主人様は本当にすごいし、優しいんだわん!」と、どこまでも主人に甘い豆柴であった。

 ボルト、カンナ、そして源さんからなる癒しキャラ集団、”チーム根津”。これで最強の布陣の完成だ!

 さあ、うちでの雇用が決まったので、さっそく福利厚生と衛生環境を整えていきますか。まずは、店の裏にあるベンチの横にビニールプールを置いて、自由に水浴びができるようにした。

 カワウソは非常に賢い生き物で、ペット用トイレシートでの排泄を覚えることが出来る様だ。トイレトレーニングは”根津家ペット代表”の源さんが、可愛い後輩たちのために一肌脱いでくれると約束してくれた。

 源さんなら上手くやってくれるだろう。安心して任せられる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 さて、源さんと一緒にサーマレットの地に戻って漁に出かけますか。朝食を済ませ、一息ついたところで、気がつけばもう9時。自営業とはいえ、行動を起こさなければ。

 源さんと一緒に店舗裏の地下室にある保冷庫に向かった。だが...あの時と同じ光景が再び目の前に広がった。そう、まるでデジャヴのように、あの時と全く同じ光景が...。

 ボルトとカンナが源さんの後をちょこちょこと付いてきた。源さんも同じだった。俺が「危険だから地球ここにに残っていてね」と言っても聞かず、源さんは当たり前のように俺の後を追ってサーマレットまでついてきた。その光景が、今再び繰り返されているのだ。

 ボルトとカンナにとって、源さんが俺に付いてくるのだから、自分たちも付いていくのが当然という感じであった。

 源さんはボルトとカンナに、「わんたちについて来るのは危ないわん!」と、一生懸命自宅でお留守番をさせようとした。

 しかし、ボルトとカンナがつぶらな瞳で「「きゅーう?」」と尋ねると、源さんもお手上げのようで、「可愛いわん!可愛いわん!」と、壊れた冷蔵庫までついてくるボルトとカンナを阻止できなかった。

 サーマレントの地に降り立つと、強制的に一分ほど体内に魔力が侵入してくる。その際、身体に違和感や痛みを生じるリスクがあるから、あんまり連れて行きたくはないんだけどなぁ...。

 まあ、サーマレットに連れてって、ボルトやカンナが苦しんだら、すぐにキュアをかければいいかなと、案外軽い気持ちで二匹をサーマレットに連れていくことにした。

 何とかなるだろう。俺も源さんも何とかなったんだから。ダメなら友三爺さんからお声がかかるだろうし。

 なんとなくだが、どこかで見守られているような...そんな気がする。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 壊れた冷蔵庫の扉を開け、サーマレットの地に降り立った瞬間、ボルトとカンナは「「きゅー?」」と、何かを感じたようだ。

 つぶらな瞳で俺と源さんに、”何か変だよ⁉︎”と訴えている。どうしよう?地球に連れて戻ろうかな?

 どう思う?と源さんの方を見ると、同じような目で俺を見つめる源さんと目が合った。

 でも、痛みに耐えているとか苦しんでいる感じではなく、ただ驚いているように見えたから、もう少し様子を見ることにした。

 もし苦しんでいたり、怖がっていたりしたら可哀そうだけど、そうじゃないなら大丈夫だろう。

 一分くらい経つと、ボルトとカンナは驚いた表情から、好奇心いっぱいの可愛い顔に戻った。もう大丈夫だろう。

 ボルトとカンナは互いの顔を見合わせ、示し合わせたかのように源さんの方に向かって駆け出した。

 三匹で行う鬼ごっこも、驚異的なスピードだ。ボルトが源さんを時速60キロほどの速さで追いかけ、カンナの跳躍も優に3mを超えている。

 おいおい、まるで競輪選手のようなスピードじゃないか。

 だが、そんな追いかけっこを見ていると、”中近ライン”の三連単狙いで岐阜南競輪場に行こうかなと、俺のギャンブル魂が騒ぎだす。

 でも最近、”中部勢”元気無いしな...。

 そんなことを考えながら、またもや源さん並みの最強種族を作ってしまったことに少し後悔も感じる太郎であった。



コメントです。30話まで来れました。ここまで続いたのは皆さんの応援があってこそだと思います。引き続き執筆を続けていきます。応援の方よろしくお願いします。
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