異世界の力で奇跡の復活!日本一のシャッター街、”柳ケ瀬風雅商店街”が、異世界産の恵みと住民たちの力で、かつての活気溢れる商店街へと返り咲く!

たけ

文字の大きさ
上 下
18 / 72
第二章 アーレントと友三爺さん

第18話 友三との約束

しおりを挟む
 俺がこことは違う場所、つまり異世界から来たことを、サイモンさんは何となく察していた様だ。 

 というのもサイモンさんの祖父、アーレントさんと俺の爺さんである友三さんとの出会いも、今回の俺たちのような出会い方だったらしい。だから、もしかしたら...と思ったようだ。

 だけど面と向かって、「貴方はサーマレント人じゃないですよね?」と、B級の名探偵のセリフなんて言えないよね。聞けないよね。だからサイモンさんは、こちらの世界では流通していないボールペンを使って、俺が異世界人かどうかを試したようだ。頭が切れる人の様だな、サイモンさんは...。

 それに比べて、簡単に作戦に乗ってしまった俺って...。

 そんなサイモンさんに対して、俺は友三爺さんの孫であることを打ち明けた。打ち明けた時のサイモンさんの喜びようは凄まじかった。

 「私たちの出会いは、友三さんと祖父アーレントの導きに違いない!!これは奇跡です!!神のお導きです!!」

 サイモンさんは凄く興奮している。神のお導きって...。さすがに大げさじゃない?余りのサイモンさんのはっちゃけぶりに、”飲みつぶ“のメンバーや源さんも近寄って来た。

  源さんも“飲みつぶ”のメンバーと打ち解けた様で、楽しそうに話している。こらこら源さん、本来なら話しちゃダメなんだよ。守れない様ならこっちの世界で暮らしてもらうよ?それか、人との会話を制限するような魔法をかけてしまうよ?

 ジト目で源さんを見つめるが、当の源さんは「皆んないい人たちだわん!大丈夫だわん、ご主人様!他の人の前では話さないわん!!」と、元気いっぱいに尻尾を振り振りしながら俺を見つめる。

 このつぶらな瞳で見つめられるとな...。俺は源さんの頭をなでなでしながら「そうだね、源さん。気を付けようね」と告げた。

 「はいだわん!!ベレッタもご主人様と同じことを言っているわん!!気を付けるわん!!」と源さんは、嬉しそうに目を細めながらお腹を差し出した。次はお腹も撫でてという事らしい。

 源さんは獣人であるベレッタと仲がいいようだ。何か惹かれ合うところがあるのかな?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 「私の祖父、アーレントも私と同じような体験をしたそうです...」とサイモンさんは、近くの岩に寄りかかりながら語り始めた。源さんは俺の胡坐をした中心部分にすっぽりと入り込んで寝てしまった。元気にはしゃいでいても、まだ生後2ヶ月。眠くなるよね。

 話がそれてしまったが、サイモンさんの話に戻そう。

 サイモンさんによると、アーレント商会初代会長のアーレントは商人の修業を終わらせ、イースカンダスで商会を立ち上げた。まだ駆け出しであったため従業員はおろか、行商時の護衛を雇うお金も無く、すべて一人で行っていたそうだ。

 いつものように、イースカンダスからペラス村まで馬車を走らせていた所、馬車道に数匹の魔物が現れアーレントの馬車めがけて襲ってきた。

 アーレントは死を覚悟したらしい。すごく大きな叫び声をあげて自分を追い詰めてくる魔物たち。愛馬のシューホンに懸命に急ぐように鞭を打っても限度がある。

 アーレント自身、商談や商品の目利きには自信があっても、争いごとに関してはダメだったようでと、サイモンさんは自虐的なギャグも交えて教えてくれた。

 アーレントの乗る馬車がどんどん魔物に差を詰められ、もう駄目だと死を覚悟した瞬間、どこからかともなく現れた同年代の男性が、次々と魔物を倒していった。そう、俺の爺さんである、友三さんその人であった。

 しかも驚いたことに友三爺さんは、武器はおろか防具すらつけておらず、非常に動きやすそうな恰好をして現れた。そう、今回の俺のように。

 そして、魔物との戦闘は尋常ではなかった様だ。

 一人で魔物をパンチやキック一撃で倒してしまったようだ。 友三爺さんは目の前の魔物をすべて倒すと、「おい、大丈夫か?武術や剣を嗜んでいない者が、一人でこのような場所をうろつくと、早死にするぞ。どれ、今回はわしが目的地まで付いて行ってやろう」と、アーレントに声をかけた。

 誰にでも優しい、友三爺さんらしい言動だな。

 友三爺さんは、ベラズ村まで無料で付き添ったそうだ。ベラズ村まで行く最中、二度ほど魔物に襲われかかったが、友三爺さんが瞬時に蹴散らしたそうだ。

 そしてこの出来事こそ、地球とサーマレントという、まったく結びつくはずの無かった二人が、結びつくきっかけとなる出来事であった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 アーレントによると、友三爺さんは強いだけではなく、優しさも持ち合わせており、悪徳貴族、違法な奴隷商人、盗賊などには厳しく、逆に困っている者や貧民、孤児には手を差しのべる心の優しい男であったようだ。もちろん対価を求めることは無かった。友三爺さん自らが進んで魔物と悪人を始末していったそうだ。

 アーレントは友三爺さんの強さと優しさに惹かれ、よく合うようになり、酒を飲み交わす仲となった。  

 二人は更に親交を深め、友三爺さんはアーレントに、この地の者ではなく“地球”という異国の地に住んでおり、そこに嫁や息子がいると伝えた。

 また、アーレントは地球の文化や教養、治安など、様々なことを友三爺さんから聞いた。地球は魔物や魔法が存在しない、争いも一部の地域のみであると。そして、魔法が使えない代わりに、科学や文化が発達していると。

 アーレントは友三爺さんから、の部分をこすると、火が付く“ライター”という品物を見せてもらったと、自慢げに息子のダイスさんに言っていた様だ。

 そして、友三爺さんがサーマレントに訪れる理由として、私たちと同じ様に商いを営んでおり、魔物肉の調達の為に来ているのだと教えてもらったと、アーレントは息子に話していた様だ。さらに...。

 「サーマレントと地球を結ぶ扉の中に入れるのは、自分だけの様じゃ。他の者、わしの子供たちがこちらの世界に行き来できる扉の前に立っても、何の変化も示さない。残念じゃがこちらの世界には、わししかこれ無いみたいじゃ...」

 そう、友三爺さんはお酒が入る度に、少し寂しそうに呟いていたそうだ。

 アーレント商会の業績が伸び悩んでいることを知った友三爺さんは、地球では安価で売られている真っ白な紙や手鏡、ガラス製のグラス、ボールペンなどを販売用としてアーセンと商会へと持って行った。そして、サーマレントの常識では考え付かないほどの安価な価格で、アーレントに提供した。

 同じ商いを行うもの同士、放っておけなかったのだろう。だが一つ、友三爺さんはアーレント商会に条件を付けた。

 友三爺さんはアーレント商会が地球上の商品をサーマレントで売る代わりに、サーマレント各地にある孤児院孤児院や貧民層を救う団体に、全売り上げの20%を寄付するようにと告げた。

 初代アーレントや二代目ダイスは、友三爺さんの言いつけをしっかりと守った。約束を守りながらも莫大な利益を得た。アーレント商会は急成長を成し遂げ、現在サーマレント共和国全土に広がる一流の商店となった。

 「以上が、友三様と祖父アーレント、そしてアーレント商会の軌跡です。我が祖父も10年以上前に亡くなりました」

 サイモンさんは、寄りかかっていた岩から背を離した。そして...胸にしまっていたポケットからまた、あのボールペンを俺の目の前に差し出した。そして...。

 「我が祖父が亡くなる直前に、友三様から頂いたボールペンの1つを私に渡し、「このボールペンが私と友三様の代わりだと思いなさい。いつもサイモンを見守っている。悪しき心に負けることなく、正しき商人としての道を貫きなさい!」と言い残して、亡くなりました。私は勿論、会長である私の父ダイスも、祖父と友三様の教えはしっかりと守っております!」

 「ええ話だわん!ええ話だわん!」

 俺以上に感動して、また泣いている子犬がいる。俺のズボンで器用に鼻水を拭きながら...。源さん、いつの間にか起きていたのね...。

 そしてサイモンさんは急に俺の前で土下座をして、俺を見上げながら、「太郎さん!是非、私の父ダイスに会って下さい!そして先ほどのバロンやムーグに唱えた、奇跡の神聖魔法を父にも唱えて下さい!!」と訴えてきた。

 更にサイモンさんは、「これは、友三様と祖父のお導きではないかと思います。私の父親は1年ほど前から、原因不明の病に倒れ、床に臥せたままなんです!」と言って下を向いた。その身体は小刻みに震えていた...。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...