異世界の力で奇跡の復活!日本一のシャッター街、”柳ケ瀬風雅商店街”が、異世界産の恵みと住民たちの力で、かつての活気溢れる商店街へと返り咲く!

たけ

文字の大きさ
上 下
13 / 74
第一章 根津精肉店復活祭と会長からのお願い。

第13話 焼肉パーティーと新たな課題

しおりを挟む
 オークとの戦いや解体作業を行っていたら、サーマレントに来てから早くも3時間ほどが経過をしていた。そういえば、小腹もすいた。解体作業が終わり、ふと源さんの方を見ると、温かい陽だまりの中で、スースーと寝息を立てていた。

 どんなに強くなったとはいえ、まだまだお子ちゃま。鑑定したら生後2ヶ月と出た。そりゃ、眠たいよね。沢山寝てね、源さん。

 源さんが寝ている隙に、昼飯の準備を始めた。昼飯にオークの内臓を食べてみることにした。

 内臓にクリーンをかけたとはいえ、本当に安全かどうかは分からない。自分で食べて、安全を確認してからじゃないとお客様には売ってはいけないと思う。まあ、それも本当だが、実際はすぐに味見をしてみたい。ホルモン、好きなんだよね。見たらプリップリだし。

 「真っ白なダイヤモンドや~!!」って叫んでしまったぐらいだ。

 アイテムボックスから、ホルモンやてっちゃん、マメなどのを取り出し、店から持ってきた実演用のカセットガスグリルで焼いた。

 ジュ~!!

 ホルモンから滴り落ちる油が炎を一層強める。その強まった炎が更に肉の表面を炙り、脂が炎の上に滴り落ちる。もうたまらん!!ホルモンがプリプリと網の上で踊っている!!肉から出る油と炎がお互いを高め合っている!!

 あ~、自分でいうのもなんだが、変なテンションになってきた。そして、ビールが飲みたい!!一杯ぐらいいいよね?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ジュ―!という音に引き寄せられたのか、それとも匂いに誘われたのかは不明だが、それまで寝ていた源さんが、むっくりと起き上がった。鼻をひくひくさせた後、口元を開き「ハァッ、ハァッ、ハァッ...!」と、すごく荒い息づかいをさせながら俺の方に駆けよって来た。

 目をパッチリと大きく開けて、左右に尻尾をブンブンと振りながら「美味しそうな匂いがしますわん!しますわん!」と、源さんは叫ぶように俺に伝えてきた。やっぱり、肉が好き...なのね。げ、源さん、口元から雫がだだ漏れしていますよ!!

 もうちょっと待っていてね。沢山焼いてあげるからね。

 ジュ~!!

 ホルモンだけじゃなく、ハツやガツ、マメ、さらにはロースなども焼いた。やっぱり、ロースも食べたい!!

 更に、ジュ~!!

 源さんは俺の顔と、焼いている肉を交互に何度も見て、"まだですか?まだですか?"とアピールをしてきた。

 プリプリなホルモンを、源さんのお皿の上によそってあげた。源さんは俺の顔をチラチラ見て、"いいですか?いいですか?"と、つぶらな瞳をウルウルさせながら、とてもそわそわとしている。

 何だか、イジメているみたい...。

 ごめんね、源さん、さあ、肉が焼けたよ!!一緒に"頂きます"だ!!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 お、美味しい!!何だ?このホルモン!!プリプリ!!油が滴るのに全然くどくない。旨い!!一口ホルモンを味わい、ビールで喉奥に流し込む。やめられませんな。

 結局、真昼間から飲んでしまった。あっちの世界に戻って配達業務などがあったら、魔法でアルコールを体内から抜いてしまおう。

 本当に便利だな、魔法って。

 源さんも興奮Maxで、「ご主人様、美味しですわん!!美味しいですわん!!そのままでも美味しいですが、この"エガシラ焼肉のたれ"をかけると最高ですわん!!」

 口をもぐもぐと動かし、念話で食レポを伝える源さん。器用だな...。更に源さんは「これは何という部分ですか?さっきの部分より、コリコリして、歯ごたえがいいですわん!!」と、違う肉の部位を食べるたびに質問をしてくる。勉強熱心な子犬だ。

 いや~旨い!!ビールがすすむ。ご飯もアイテムボックスに詰め込んでおけばよかったな。

 ただ、これでお袋とトヨさんに、安心してもらえると思う。ほっとした俺は、源さんとゆっくりと昼ごはんを楽しんだ。オーク肉、500㎏以上の仕入れとなった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 地下室の大型冷凍冷蔵庫にオーク肉を仕舞い込んで、一息ついた。

 その後、お袋とトヨさんに、仕入れが無事に終了をした事を報告した。2人とも仕入れた物を見ながら「「すごい量だね!」」と、目をキラキラとさせて喜んだ。

 2人とも、すぐに俺が持って来たオーク肉を食べたがった。本日2度目の焼肉大会。ちょっと苦しいかも...。俺は少し苦笑いを浮かべたが、隣では第一回目焼肉大会の時と同じように、尻尾を左右にブンブンと振って喜びをアピールするチビッ子がいた。

 そんなに振ると尻尾がちぎれてしまうよ、源さん...。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 「ロースとバラも美味しいですけど、私はこのゼンマイとか、レバーの方が好きですね。タンもありますか⁉︎」

「レバーは苦手だったけど、この豚のレバーは別格だよ!滑らかで、臭みも無くて美味しいね!!
 
 2人とも箸が止まらない。そして足元では尻尾を振り続ける源さんも、バクバクと食べていた。源さん食べ過ぎないでね...。

 早く牛系の魔物も見つけたいな。日本人は豚よりも牛肉の方が好きな人が多いからな~。今度エリーに会ったら、ミノタウロスがどこら辺にいるか聞いてみようかな?

 そんな楽しい焼肉大会は、無事に終了...しなかった。

 美味しそうに食べていたお袋が「豚肉の売り上げは順調だけど、他のがねぇ~。まだまだ課題は山積みだね~」と、少しぼやき気味に俺に話しかけてきた。

 "根津精肉店復活祭"の時は、常連客以外のお客さんも訪れてくれた。しかし、それ以降はオーク肉目当てのお客さんや、以前からの常連客が中心となってしまった。

 そう、売り上げは少し良くなった程度。このままでは以前とあまり変わり映えも無く、借金も減らない。

 もっとお店にお客様を呼ぶ必要がある。もっと目玉商品を増やし、買ってもらう必要があるのだが...。それには大きな越えなければいけない壁がたちはだかっている。それも非常に深刻な...。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 うちの店は"柳ケ瀬風雅商店街"の中にある精肉店。

 現在、"柳ケ瀬風雅商店街"は元気がなく、お客さんが来ないのだ。商店街のシャッター率は82.5%越えと尋常じゃない。実際、うち一店舗だけで頑張っても、お客さんはイベントの時だけしか来てくれないし、日々の買い物は近隣のスーパーを使う。

 大手のスーパーやデパートには太刀打ちできない。

 また、"柳ケ瀬風雅商店街"は、岐阜駅から近いという立地の良さが裏目になっており、近くには有料駐車場しかない。

 近郊のデパートなら無料の駐車場があり、豊富な品揃えと、子供が楽しめるアミューズメントコーナーがあって、一日中遊べる。

 この商店街には子供が遊べる場所がない。大手のデパートのように、1日そこに行けば、満足して過ごせる場所ではない。

 さらに、"根津精肉店"に限って言えば、目玉商品がオーク肉一つという現状は非常に寂しい。

 何とかもう一つ、いや三つ四つは増やしたい。欲を言えばもっと増やしたいが。

 だが、目玉商品を増やすことにより、これ以上お客様が増えると、お袋や俺、トヨさんだけでは対応できなくなってしまう。

 そうなると、新たな従業員も欲しくなる。しかし地下室や、俺の食材確保方法など、秘密が多く、ばれると面倒くさい。

 あー悩みは尽きない。一つ一つクリアしていくしかないなと思った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 そんな悩みを抱えたり、行き詰っている時は、必ず訪れる場所がある。

 "根津精肉店"裏においてあるボロボロのベンチ。

 ここで飲むコーヒーが好き。なんか小さい頃の俺や友達に励まされる様な感じがして、疲れると良くここに来る。

 「はぁ~どうしようかな~」と、ため息をつきながらベンチに寝ころがっていると、「太郎!柴さん、商店街会長の柴田さんがお見えだよ!何でもあんたに相談したいことがあるって!!」と、お袋が俺を呼んだ。

 現商店街の会長様が、俺に何のようがあるんだ...?
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...