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 アルフォンス・ラーレトーネ殿下は、この国、ラーレトーネ王国の第二王子である。サラサラの金髪と優しげな垂れ目がちの碧眼、物腰穏やかな、いかにも『王子様』らしい柔和な美青年。
 心優しい反面、争いごとは苦手な性分で、苛烈で俺様な性格の第一王子――双子の兄だ――とは度々比較されている。

 王立魔法学園で風紀委員長を務める彼は、生徒会長である兄と並んで、学園の生徒からの憧れの的であった。


 誰にでも優しく見える彼は、実のところ、『王族らしい』振る舞いにこだわるあまり、自分自身の意思が希薄になってしまった冷たい男だ、と自負していた。
 しかし、学園に編入してきた特待生、平民ながら凄まじい魔力を有する美少女と出会い、彼は、はじめて個人的な欲望を自覚していく。

 恋を知らなかったアルフォンスが初恋にのめりこみ、特待生の少女に侍り、甘く優しい愛を囁くようになるのはあっという間であった。


「ふふっ。君の笑顔を見ていると、なんだか、不思議と元気が湧いてくるんだ」
「泣かないで。君に泣かれたら……僕は、どうしていいかわからなくなる……」
「僕は君と出会って初めて、愛を知ったみたいだ」
「ああ、駄目だよ、そんな無防備な姿……。……僕だって男なんだから、ね?」
「……逃げないで、僕のお姫様」

 アルフォンスは紳士であるからして、もちろん、未婚のレディに過度のふれあいをしたりはしない。
 せいぜいが愛の言葉を囁き、あまりに無防備な彼女をからかい、どうしても抑えきれなくなった衝動に任せて掌に口づけをして――その程度。

 どうやら少女は他にも複数の男、それもアルフォンスの兄を含む王族や高位の貴族子息らに言い寄られていたが、いつも困ったようにはにかむだけで特定の誰かを選ぶことはない。
 それでも恋に恋した男たちは彼女を口説く。口説くだけで、乙女の心をときめかせるだけで、そこには性的な下心が見受けられない。
 年頃の男ならばあって当然の性欲が、惚れた女と一発ヤッてみたいという欲望が、童貞男が狙っているオンナを目の前にして滲み出てしまうムラムラというものが一切見受けられない。


 ――なぜならば、この世界は、いわゆる乙女ゲームの世界で。特待生ヒロインを取り巻く男たちは皆、観測者プレイヤーの夢を壊さない、『現実の男と違ってエロいことなんて考えない、ただ乙女を溺愛してくれる、都合のいいイケメン』としてデザインされているからだ。



 本来ならばこの世界は、夢見る乙女にとって極めて都合のいい世界であるはずだった。
 とある乙女ゲームを元に作られた世界は、暇で性悪な神様が『そうだ、転生ヒロインと転生悪役令嬢のキャットファイトが見たい』と思いついてしまったがために、乙女ゲームに首ったけの女性たちを転生させるために作った箱庭なのだから。


 実際、神の思惑はかなりいい線をいっていた。ヒロインに転生した娘は前世知識を活用しまくり、ヘイトを避けながらも原作のベストエンドである逆ハーレムルートを目指して邁進中。アルフォンスの兄こと第一王子の婚約者である悪役令嬢も、前世知識を活用して悪役になるのを回避しつつ、攻略対象ではないものの乙女ゲー世界仕様でどいつもこいつもイケメンなモブに目をつけオリジナルの逆ハーレムを形成。
 現在はなんとか悪役令嬢を王子の婚約者から引きずり下ろしたいヒロインvs下手に婚約破棄しようものなら逆に断罪仕返してちゃっかり縁談だけポイするつもりの悪役令嬢で、どちらが悪役となるのか、水面下での高度な心理戦が始まっているらしい。


 しかし――ほんの手違いか、運命のいたずらか、悪魔の妨害か。神に選ばれた二人の乙女と共に、一人の男が、この世界に転生してしまった。

 男の名は田中正俊たなかまさとし。この世界での名はマーク。平民のため苗字はない。
 容姿はゴツい中年男性で、三白眼に無精ひげの厳つい顔、いかにも肉体労働者といった感じのガチムチ体型。年齢は今年で48歳。職業は庭師で、王立魔法学園に務めている。元のゲームでは名前も出ず、ゲーム上の表記は『庭師A』。立ち絵もシルエットで、『悪役令嬢によるヒロインいじめの目撃者』として一言セリフがあるだけの存在である。

 前世においても今世と似たりよったりな感じの中年男性として生涯を終え、原作ゲームのことなど知るはずもない彼は、ひっそりとモブとしてこの世界に生き、そして――何も知らないままに致命的なまでのシナリオ崩壊を招いていた。


 原作でいうところのシナリオ終盤まで盤面を進め、キャットファイトに忙しいヒロインと悪役令嬢は気づいていなかったのだ。
 攻略対象の一人であるはずの、原作ならば歯の浮くようなセリフと共にヒロインを甘やかしているはずの第二王子アルフォンスが、近頃、めっきりヒロインに愛を囁いていないことに。







「ん゛お゛ぉ゛~~ッッ♡♡ マンコッ♡ おマンコ最高っ♡♡ セックス最高~~っ♡♡ ……オラッ♡ もっとケツマン締めろよ♡ メスオナホ♡♡」
 舌を突き出し、鼻の下を伸ばした下品な顔でオホオホ♡ と喘ぎながら腰を振りまくるのは――庭師のマーク、ではない。
 誰もが憧れる美貌を残念極まりない発情ゴリラ顔に歪めた、第二王子、アルフォンス殿下その人である。

 平時の彼からは想像もつかないほどの下品な顔と声、そして、温和な彼らしからぬ荒々しい口調で、組敷いた相手を乱暴に犯しているところだった。

「お゛っほ♡♡ マンコでチンコキするのたまらん♡♡ ケツマン雄交尾たまんねぇっ♡♡ チンポ♡ チンポ馬鹿になる♡♡ 変態マンコにパコパコ最高ぉ~~っっ♡♡」

 ぐっぽぐっぽ♡♡ と卑猥な音を立てながら、アルフォンスのデカマラがアナルを出入りする。犯されているのは髭面のガチムチ庭師モブおっさん……マークだった。
 見るからに使い込まれた様子の縦割れアナルは、彼が相当なヤリマンビッチ野郎であることを示している。

 実際、今もバックで乱暴にハメられてオナホでも使うような扱いを受けているというのに、マークに嫌がる素振りはない。
 むしろ、バリネコだというのに無駄に立派なチンポを勃起させ、歓喜のあまり潮をぴゅっ♡ ぴゅっ♡♡ と振りまいている始末だった。

「ん゛ほ♡♡ ハメ潮吹くとかスケベすぎるぅ゛♡ あ゛~やっべ♡♡ パコパコとまんねっ♡♡ イグっ♡ ザーメン出るぅ♡♡ 僕の高貴な孕ませ汁♡ マゾホモ便器に無駄打ちするぅうっ♡♡」
「お゛っほぉ゛お゛~~ッッ♡♡ しぬっ♡ チンポでマンコ死ぬぅ゛っ♡♡」

 女の嬌声とは程遠い、おっさんそのものの汚いダミ声でアヘオホと喘ぎまくるマーク。
 かつては男の喘ぎ声など萎えるだけだと思っていたアルフォンス王子だが、今では、すっかりこの声にチンポをおっ勃ててしまうほどになっていた。

「スケベな声上げやがって♡ そんなに気持ちいいのかよ、変態♡♡」
「お゛ひっ♡ そ、そうですぅ゛っ゛♡ 俺ぁ♡ チンポ狂いの変態ホモオナホですッ♡♡」
「……オ゛ッ゛♡ やっべ♡ 変態宣言たまんねッ♡♡ ザーメン上がってくるゥ゛……っ♡♡ イクっ♡ イクイクっ、イッグぅうう~~~~っ♡♡♡♡」
「~~~~ッ゛♡♡ お、俺も……イッくぅう~~ッ♡♡♡」

 ビクンっ♡♡ と、アルフォンスの体が大きく跳ねたかと思うと。彼は、勢いよく射精していた。

 どびゅるるる~~っ♡♡ と放たれた濃厚ドロドロ黄ばみザーメンが、マークの腹をぽっこり膨らませていく。
 アルフォンスの射精とほとんど同時に、マークもまた、絶頂を迎えていた。


「ハァッ、ハァッ……♡♡ ……ああ、君もイッたんだ? 種付けされてイくとか、ほんとド変態だな♡ キッショ♡♡」
「お゛へっ♡♡ ふへ、うへへへ……♡♡」
「あっはは♡ 意識トぶくらい喜んでるの? マゾってほんと意味わかんないや♡ ま、とりあえず、もー少し使わせてもらうけど……♡♡」

 ヤりたい盛りの青年であるアルフォンスは、たった一発出しただけでは到底満足などできやしない。
 瞳をギラつかせながら舌なめずりをして、再びピストンを開始していた。


 相手を性処理穴としか思っていないような、発情期のオークさながらの下品な態度は、とてもではないが乙女ゲームの攻略対象とは思えない。

 アルフォンス王子といえば、品行方正、乙女の憧れである優しく美しい貴公子として名高い人物である。
 ……否、そういう人物であったのだ。雄を狂わす下品な毒華に――庭師のマークに、出会ってしまうまでは。

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