魔法少女♂とヤンデリオ

嶋紀之/サークル「黒薔薇。」

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逆上型ヤンデレ、逆城サイの復讐劇

①-2※R18

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(くそ、やってしまった――)
 翠野ハルヒコは、一人大きくため息をついた。
 ここは勤務先である私立夢見ヶ丘高校の保健室。もう日も暮れて、校舎に生徒の姿はほとんどない。養護教諭である彼もまた、片付けをして帰ろうとしていたところだった。

 やってしまった、というのは他でもない、前々から彼になついていた生徒、逆城サイのことである。ハルヒコは、一年ほど前に彼から告白を受けていた。
 ここが男子校である故か、ゲイであるとカミングアウトしてきたり、そのことで相談してくる生徒は少なからず見てきたものの、まさか己が恋愛対象になるとは思いもしなかったハルヒコは驚いた。年齢差だって親子ほどあるのだから。
 それでも、好きだと言われて、嫌な気はしなかった。彼自身はノンケだが、サイの純粋でひたむきな恋心はどこか微笑ましさすら感じられたからだ。
 だからか去年の彼は――きっと若さゆえの勘違いに違いない、すぐにほとぼりが冷めるだろうと高をくくって――サイに言ってしまった。『今は駄目だ、卒業してもまだ俺のことが好きだったら、そのときはまた告白してきたらいい』ということを。
 ハルヒコには妻もいるし、サイと同じ高校3年生になる娘もいる。実際に彼の告白を受け入れることはできなかった。しかし、彼は単身赴任だったし、生徒にプライベートの話はほとんどしない。もう少しだけ、こいつの淡い恋心を守ってやってもいいんじゃないか。夢見させてやってもいいんじゃないか。優柔不断な性格からつい、そんな、優しくも残酷な嘘をついてしまったのだが――。
「……でも、間違ってたんだな」
 ある日、たまたまハルヒコの家族がこちらに来ていた現場を見られてしまって以降、逆城サイは学校を休んでいる。それどころか、体調不良を理由に学生寮の部屋を出て、実家に帰っているのだという。
 サイが寮を出てから今日でもう二週間、担任の教師が保護者に連絡したところ、部屋から引き込もって出てこないという話だった。
 養護教諭という立場や、元々病弱なサイとの関わりが深かったことから、ハルヒコの元にも相談がきていたのだが、原因が彼にある以上なにも言えることなど無かった。事態を説明するためには、サイが隠してきたセクシャリティや、その恋慕を語らなければならない。いくらなんでもそんなデリカシーのない行為をすることもできず、ハルヒコは途方に暮れていたのだ。
(俺は……学校に勤める者としても、保健医としても、最低のことをしてしまった……)
 生徒の健康に、ひいては心にも寄り添うのが自分の仕事だと思っている彼は、自身の招いたことの大きさを感じて唇を噛みしめる。――その時だった。

「――ハルヒコ先生、」
「!?」
 突然、誰もいないはずの保健室で、ハルヒコの背後から声が響いた。しかも、彼にとってはよく聞きなれた声。
(いや、そんなはずはない、だって逆城は今も、学校を休んで……)
「無視ですか、ねえ、先生」
「……逆城か!?」
 幻聴ではないのかと、罪悪感と、面と向かって謝れるかもしれないという安心感とを抱きながら、声のした方を振り返れば。そこには、明らかに様子のおかしな彼がいた。
「さ……、逆城……なん、だよな……?」
「……ええ、そうですよ。貴方に裏切られた男です」
 そこにいた彼は、一見すると、まるで別人に見えるような奇妙な風体をしていた。
 白銀に染まった髪と、人外めいた鮮やかな色に光る翠の瞳。服装も、黒一色でゴシック調の絢爛豪華な――中世の貴族を思わせる――もので、まるでなにかの舞台衣装やコスプレのようだった。ふざけた格好とは裏腹に、見ているだけで背筋が凍るほどの威圧感を放っている。
 端正なその顔には、ハルヒコの知る彼らしくもない、卑屈で陰惨な微笑みが浮かんでいた。得体の知れない恐怖感がハルヒコを襲う。
「っ……、すまん逆城、俺は」
「言い訳なら結構。着いてきてもらうよ……貴方には罪を償ってもらわなきゃならない。罰を受けてもらわなきゃならない」
 サイが指をぱちりと鳴らした途端、ハルヒコは、体に力が入らなくなるのを感じた。気づけば、弱々しくその場にへたりと座り込んでいる。
(っ!? さっきから、何が、起きて……!?)
「……僕は、貴方への愛と憎しみで、このチカラを手に入れた。なんでも叶えられる魔法のチカラを。さあ……罰を受けてもらうよ、ハルヒコ先生」

 彼が手を振ると、あたりの景色が歪み、崩れ――気がつけば見知らぬ部屋の中に二人はいた。オロオロとしているうちに、ハルヒコは、アンティーク調のベッドの上に転がされてしまう。
「さ……逆城……!? いったい、何がおこって……」
「御託はいらない、貴方はなにも理解する権利を持たないんだ」
「っ!?」
 凄まじい形相で睨み付けられた瞬間、全身に電流が流れたような痛みが走った。腕や足には相変わらず力が入らないままだ。
(くそ、いったいなにがどうなってるんだ!?)
「……足を、開いて」
「は、な、何を言って」
「開けよ。いやらしく……メスのように股を開け」
 そんなことできない、と、言おうとしたにもかかわらず、ハルヒコの意思に反して、力が入らなかったはずの身体は勝手に動いていた。両膝を立てて大股を開く、いわゆるM字開脚のポーズをとってしまう。
「なっ……!? なんだこれ、おいっ、か、身体が勝手に……!?」
「白衣のボタンを外せ」
「っ……!」
 拒もうとしているのに、ハルヒコの身体は言うことを聞かず、サイの命令のままに動いてしまう。
「な、なあ、逆城……、これはいったいどういうことなんだ!? なあ……!?」
「ネクタイを外せ。Yシャツのボタンもだ」
 ハルヒコの声を無視するように、非情に命令が続けられた。太い指がするするとネクタイをほどき、下から一つずつ、丁寧にボタンを外していく。
「……乳首を見せろ」
「!!」
 命令に従い、ハルヒコの両手ががばっとYシャツをはだけさせた。何が起きているのか一切理解が追いつかない彼は、大きな体を恐怖で震わせる。
「さ、逆城……、なにが目的なんだ……?」
 震える声で尋ねた彼に、サイは、ぞっとするほど悪どい笑顔を見せる。
「……なにって? 決まってるだろう……今から貴方を僕のオモチャにするんだよ」
「な……、」
 返す言葉を失った瞬間、サイはハルヒコに覆い被さった。整った顔が胸元へ近づく。いったいなにを――と思っていると、べろりと、ぬらぬらしたものがハルヒコの胸を這っていた。
「んぁッ……!?」
 サイは満足げに微笑んで、ねっとりとした動きでハルヒコの乳首をなめ回す。舌先がいやらしく這いずる感触に、ハルヒコの体は硬直してしまう。
(嫌だ、怖い、生徒とこんなこと――!! 駄目だとわかっているのに……気持ちいい……!?)
 彼が快楽を感じたのに気がついたのか、サイは笑うと、今度は吸い付くように乳首をしゃぶりはじめた。
 ちゅっ♡ じゅるっ♡ じゅるる……っ♡ と、卑猥な音が室内に響く。乳首を引っ張りあげられる痛みと、その中にある快感に、ハルヒコの頭は真っ白になる。
(い、嫌だ、やめろ、やめてくれ。男同士で、生徒と、こんなこと……!!)
「……ふふ、可愛い」
「あッ!? ぁッ、あぁッ……あっ♡ はぁああ……!!」
 反対側の乳首にはサイの手が伸びていた。指の腹でクリクリと転がされたそこは、徐々に固くなっていく。
「んっ……ぁ、や、やめ……、さかしろ……ッ!」
 名前を呼んでも返事はなく、よりいっそう強い力で吸い付かれるだけだった。軽く歯を立てられ、全身がびくりと震える。
「んひぃッ!?」
「…………」
 ――突然、サイの愛撫が止まり、指と唇をハルヒコから離していった。乳首から、唾液が糸を引いているのが見えて、ハルヒコは今すぐ消えてしまいたい気持ちになった。
「さ……、さか、しろ……?」
「……ここ、」
 ぐり、と、サイの手が彼の股間に押し付けられる。
「っ!」
「乳首攻められただけで勃起したんだ? よっぽど溜まってたんだねぇ……、先生?」
「あぁッ……!!」
 瞬間、ズボン越しに竿全体をきゅっと握りしめられ、反射的に腰がひくついてしまう。
「奥さんにはシてもらってないの?」
「……おまえに、言うことじゃない……」
「答えろ」
「っ――!!」
 サイの目が妖しく光ったかと思うと、口の自由さえ奪われるような感覚がハルヒコを襲った。
「……家内とは、もう、十年以上セックスレスだ。ここ数年は、俺が単身赴任をしているから、住まいも別だし……」
 答えるつもりなどなかったのに、ハルヒコの口は勝手に動き、本当のことを告げてしまう。
(な……っ、なにを言ってるんだ俺は!? 答えたくないのに、なんで……!?)
「へえ。浮気したり、風俗行ったりしないの?」
「浮気はしない、風俗も結婚してからは行っていない……カオリを裏切ることはしたくないんだ」
「……そう。じゃあ、オナニーはどのくらいしてるわけ?」
(やめろ、逆城、どうしてそんなことまで……!)
 必死に口を閉じようとしても無駄だった。ハルヒコの体は、サイの命令に逆らえない。
「オナニー、は……週に一、二回は……」
「ズリネタは? 前にオナニーしたのはいつ?」
「……大抵は、なにも考えずに、溜まったら作業的に抜くだけ、だ……。最近は仕事が忙しかったし、おまえのことも気がかりで、そんな気分にはなれなくて。二週間くらい抜いてない」
「!!」
 その答えを聞いて、突然、サイの様子が変わった。苛立った様子で拳を握りしめると、ハルヒコの顔を殴り付ける。
「っ……ふざけるなよ、綺麗事を抜かすな!! 裏切り者!!」
 ヒステリックな叫び声を上げた彼の瞳には、若干、涙が浮かんでいたようにも見えて、ハルヒコの胸を罪悪感が満たしていく。
(ああ、俺は……こんなにもこの子を傷つけてしまったのか……)
 後悔と罪悪感に苛まれ、だからこそ、彼にこんなことをさせてはならない――大人として彼の間違いを正してやらねばならないという思いが、ハルヒコの心に湧いてくる。
 しかし、その体は思うように動かせず、ただサイの言いなりになるだけだ。
(……要するに逆城は、復讐のために俺をレイプしようとしているんだろう? そんなこと、こんな子供にさせてはいけない。俺なんかのために、こいつに罪を背負わせては駄目だ。なのに……っ、なんで、動かないんだ……!!)
 唯一自由に動く瞳で、じっとサイを見つめていれば、彼は何を思ったのか。ガラス玉のような冷たい視線で、ハルヒコを見つめ返してくる。

「……もう自由に喋っていいよ。その代わりチンポ出せよ」
「…………え、」
「いつもシてるみたいにオナれよ、僕の前で」
 ハルヒコは、思わず耳を疑った。サイの瞳にはギラついた欲望の色が滲んでおり、ハルヒコの恐怖と罪悪感を刺激する。
「や、やめてくれ……逆城……、おまえ、こんなことをする子じゃなかっただろ……!?」
「いいからはやくシコれよ!!」
 怒鳴り声にびくりと反応して、ハルヒコの体は命令に従っていく。スラックスのチャックを下ろし、脱ぎ捨て、トランクスもずり下ろして――。服を脱ぐ度に、サイが息を呑むのが伝わってくる。
(嫌だ、こいつに、大事なうちの生徒に見られながらオナニーなんて……!)
 そう思うのに、彼の手は勝手に股間に伸びていく。いつもしているようにペニスを掴むと、上下に激しく扱き始めた。
「ぁっ、はぁっ♡ ん……♡」
 我慢汁が溢れてぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てるたびに、サイの視線が痛いほどに刺さっていた。ハルヒコを見て呼吸を荒くしているのだ。
「や、いやっ、ぁ、だっ……! み、みるな、ぁっ、んうぅ……!!」
 止めたいのに身体は言うことを聞かず、むしろ、サイに見せつけるような手つきで動いてしまう。
 扱くのを一旦やめたかと思えば、カウパーの溢れた亀頭に指先で触れてーーぬちゅぬちゅと音を立てながらこすっていく。
「ッッ!! ぁ……っ、は、ぁああ……ッ♡」
 脳天を突き抜ける、痺れるような刺激と快感。たまらず上げた喘ぎ声に、サイがごくりと喉を鳴らす。
(やめろ……やめてくれ!! 見ないでくれ……!!)
 願いも空しく、いつものオナニーの動きをなぞるだけの機械と化したハルヒコの手は、射精に向けてスパートをかけようとペニスを握り直した。そのときだ。
「……ストップだ」
 その一声で、ハルヒコの身体はぴたりと固まってしまう。
「なにを一人で気持ちよくなってるんだい? これは罰だ、って言ったよねぇ……嫌だなんて口ばっかりじゃないか。生徒にセンズリ見られて興奮してるなんて、あんた、保健医失格だな」
「っ……! ち、ちが……、俺は……がはっ!?」
 まだ荒い呼吸を抑えながら反論するも、サイに首を掴まれて、なにも言えなくなる。ぎりぎりと指が食い込み、呼吸もままならない。
(うぐ……、苦しいっ、い、息が……っ!!)
「やっぱり君には罰が必要だね……僕を裏切っただけじゃなく、こんなド変態野郎なんだから」
「……っ!!」
 冷たい視線を向けられながらも、乱暴に腕が離された。彼はハルヒコを睨み付けながらも、口元には笑みを浮かべている。
「……先生。少しでも僕に詫びる気持ちがあるのなら……僕の命令が聞けるだろう?」
 そう言って、サイの手が、自身のズボンにかけられた。
 躊躇いなく下ろされたズボンの下。そこにあるのは、下着越しでも十分にわかるほどに大きく膨れ上がり、先走りで下着を濡らしたペニスだった。
「ほら。少しでも僕を可哀想だと思うなら……、僕に従ってくれるだろ……?」
 サイが下着をずりおろした。ぼろんっ♡♡ と勢いよく飛び出た性器は高校生のそれとは思えないくらいに立派なサイズで、思わず、ハルヒコは恐怖してしまう。
 動けない彼に、サイが身体を寄せてきた。フル勃起したペニスが顔面スレスレまで近づいてきて、汗と先走りとが混じった、独特のイヤな臭いが立ち込める。
「や、やめ……やめてくれ、逆城……! こんなこと、おまえのためにもならないだろう……!?」
 ハルヒコは必死に逃れようとするも、頭を掴まれ身動きを封じられる。
「……しゃぶれよ」
「ま、待て、逆城……!!」
「ほら早く、口を開けろ!! 舌出せよ!!」
 命令に彼の身体が反応するよりも早く、半開きだった口の中にサイのチンポがねじ込まれた。
「ぐぇえっ……!?」
 口の中に、むせ返るほどの雄の味が広がっていく。生理的嫌悪から逃げ出したくなるが、体はサイの命令に従い、されるがままになるだけだ。
「歯、立てないでね……っ♡」
「ッ!!」
 サイは腰を動かすと、喉の奥まで強引にチンポを押し込んでいく。苦しげな声が聞こえるのもお構いなしだ。
「んっ……は、ぁ、すっご……♡ 喉マンコ気持ちいい……っ♡」
 サイがゆっくりと腰を振り始めた。喉の奥にチンポがごりごりと当たり、上手く息ができなくなる。ハルヒコの顔には涙が溢れていた。
「あっ♡ せんせ、その顔最高……! もっと泣けよッ、苦しめよ、は、あははッ……!!」
「んぐ、ぐ、うぶぅッ……!!」
 腰の動きは徐々に早くなり、そのたびに、ハルヒコは嗚咽を漏らした。涙どころか鼻水すらあふれ、グチャグチャになった顔面を、サイはうっとりと見つめている。
「ッ♡ あっ、出るっ♡ ……っふ♡ ザーメン出るッッ……! ほらッ、しっかり飲み干せよ……っ!!」
 ――パンパンパンパンっ♡♡ と、サイが腰を打ち付ける音が室内に響く。
(うぐ……っ、く、苦しい……! だれか助けてくれっ!! あ、あ、あ、あ――――!!)
「あ……っ! イくッ!! ザーメン溢れるッッ♡ 喉マンコにザーメンぶちまけるぅう♡ 先生の喉マンコにっ♡ 種付け射精っ♡ 最高ぉおおお♡♡♡」
 どぴゅっ、びゅるるる……ッ!!
 サイのチンポがどくどくと激しく脈打ち、喉の奥に、濁流のようにザーメンが叩きつけられる。ビュービューと溢れて止まらない射精に、ハルヒコは、恐怖と絶望で固まっていた。
(うげぇ……っ、き、気持ち悪い……! 苦しくて吐きそうなのに、喉の奥まで、チンポで塞がれて……っ!!)
 生理的嫌悪と物理的な苦しさからこみ上げる吐き気。胃液と共に精液が逆流するも、チンポで蓋をされ、それどころかどんどん追加のザーメンを喉の奥に直接ぶちまけられてしまう。このまま窒息してしまうのでは――と思った途端、ようやく、サイのチンポが引き抜かれた。
「あっ……はあああ……♡ 僕、先生の喉マン使って……セックス……しちゃった……ッ♡♡」
 そのまま吐きそうになったハルヒコだったが、サイが最初にした「飲み干せ」という命令を守ろうとしたのか、体は無理矢理に耐えてしまった。いやだ、いやだと思っているのに、喉がごくりと音を鳴らす。
 どろりとした粘着質の液体が喉に絡み付き、今まさに、サイの精子が喉を伝って胃の中に納められていくのだと感じてしまったハルヒコは、思わず鳥肌を立てていた。
「あはは……ちゃんと全部飲み干せたじゃないか、えらいえらい」
「ッ……!!」
 からかうように頭を撫でてくる逆城を睨み付ければ、彼は、下品な笑みを浮かべて言った。
「どうだい、先生? 僕のザーメンは美味しかったかい?」
「……ふざ、けるな……っ、なんで……、なんで、こんなことを……!」
 思わず涙ぐみながら告げてしまった恨み言に、ふいに、サイの視線が鋭くなる。
「……なんで、だって? 決まっているだろう」
 からかうような笑みが消え、ひやりとするほど冷たい真顔になった彼は、重たい声でハルヒコに囁く。
「僕は君を愛しているからさ。翠野ハルヒコ。だから僕は君の裏切りが許せなかった……僕のものにならない君が、許せなかったんだ」
「ッッ……!!」
 そうだ――最初に傷つけたのは、自分の方ではなかったのか。咄嗟にそれを思い出してしまったハルヒコは、さぁっと顔を青ざめさせる。
(俺のせい、なのか。あの真面目で優しかった逆城が、ここまで豹変してしまったのは。全ては、俺が曖昧な態度をとったせいなのか……?)
「……なんだいその目は。哀れみかい? 偉そうにするなよッ……自分の立場がわかってるのかい!?」
「ッッ……!!」
 サイの拳が、ハルヒコの鳩尾へとめり込んだ。……かと思えば、返事もできない彼を見ながら、今度は猫なで声ですり寄ってくる。
「ねえ、先生。僕のことが可哀想だと思うなら……僕のものになってくれよ。君の身も心も全て、僕にくれよ……」
「…………」
「……できないよなあ!? できるわけがない、君は嘘つきの裏切り者だからね」
 吐き捨てるように言って、彼は笑う。あまりにも痛々しい笑顔に、ハルヒコは言葉を失った。
「……嘘つき。嘘つき嘘つき嘘つき。あんた、僕が告白したとき、『気持ちは嬉しい』って言ったじゃないか。僕が卒業したら告白の返事をくれるって、『きちんと向き合う』って言ったじゃないか。本当は考える気もなかったくせに。ノンケで、しかも奥さんも子供もいて。内心僕を笑ってたんだろう? あんたの言葉を信じて舞い上がってる僕を、嘲笑ってたんだろう……!?」
「……ちがう、俺、は……ただ……」
「言い訳は結構だ。君は罪人だ、そして僕には君を裁く権利がある。先生。ハルヒコ先生。愛しいひと。君が僕だけのものになるまで……僕は君のことを永遠に許さない」
 サイの瞳が不気味に光る。豹変しきった姿を前に、ハルヒコは、悲しみに打ちひしがれていた。
(異常だ――こいつは、俺の知ってる逆城じゃない。……でも、そうさせてしまったのも全ては……俺のせい……)
「……ふふ、おしゃべりが過ぎたね」
 フッと微笑み、今までの激昂などなかったかのように、飄々とした声でサイは言う。それすらも、ハルヒコの目には痩我慢のように見えていた。
「せっかくチンポ大きくシて待っててくれたのに……萎えさせちゃったかな? 大丈夫……すぐ天国にイかせてやるよ」
「!? な、なにをする気だ、おい……」
「君が僕のモノになるまで、たっぷり可愛がってやるよ……ハルヒコ♡」
 甘ったるい声にハルヒコは悟る。ここで彼を止めてやらないと、きっと、この少年は二度と元の優しい彼に戻らないことを。

 けれど、彼の肉体は相変わらずサイの支配下だった。股間へ、そしてアナルに向けて伸びびてくる腕を拒むこともできないまま、彼は支配を受け入れるしかなかった――。
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