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その毒は、じわじわと帝国を蝕んでいった。
はじめは皇帝の政敵と看做される者たち――ケイク・コヴィッチが意図的に籠絡した連中が、奔放なケイクを振り向かせようと、あれこれと貢物を送るようになったのがきっかけだ。
ケイクは、それらを喜んで受け取り、装飾品は二人きりの逢瀬のときに着けてみせた。掠れた、色っぽい雄の声で、『陛下のくれた宝石よりも立派だなあ♡』なんて褒められたりしたときには、男たちは舞い上がる心地だった。
ケイクは皇帝の后という立場であるから、公式行事に出る際には、いつも皇帝から贈られた衣装と宝飾品を身に着ける。男たちは、いつかケイクが公の場で己の贈り物を見せびらかしてはくれまいかという僅かな期待にかけて、どんどん豪華で高級な贈り物をするようになっていった。
ケイクが性に奔放だ、という噂は、宮廷に務める者ならば誰もが知っている。
后でありながらも優秀な戦士でもあった彼は、時折、後宮の外に出されて、兵士たちの指導を任されることもあった。
ケイクは末端の兵士や、城づとめの文官たちにも親切だった。そして、彼らが少しでもケイクに性欲を向けたならば、よろこんで閨に誘う淫乱だった。
こうして――ケイクの虜となった兵士や文官は、高位貴族の真似をして、ケイクに貢物をするようになる。
しかし、稼ぎの低い兵士や文官が贈れる物などたかが知れている。最愛の男を喜ばせたい、という思いから――ある者は、横領に手を染めた。ある者は、こっそりと盗賊団と取引して、盗品を横流しさせるようになった。
ケイクは、最初に過ごしていた別棟の男たちとも、相変わらず肉体関係を続けていた。時折気まぐれに別棟に訪れ、男同士の乱交パーティーを開くのだ。
ケイクが男たちから貢がれている、という話を聞くと、別棟の男たちは目の色を変えてやる気を出した。
最初にケイクの良さを知ったのは、彼と寝ていたのは自分たちなのだと。
元々後ろ暗いところの多い彼らは、まっとうでない稼ぎで得た金を使ってプレゼントを買ったり、他国の間者は自国の情報をプレゼントしたりと、治安の悪さを遺憾なく発揮させる。
ケイク・コヴィッチという男に気に入られたいという思いは、男たちからまともな判断力を奪っていく。
なぜならばライバルは無数にいて、それでいて、彼は皇帝の后という立場にあって、自分だけの唯一にすることは国家権力をひっくり返しでもしないと無理なのだから。
ここまで派手に暴れながらも、ケイク自身が恨まれることがなかったのは、彼が、セックスだけはどんな対価もなしに喜んでしたから、という理由が大きいだろう。
誰とでも寝る娼婦以下の淫乱でありながら、誰のものにもならない高嶺の花。皇帝さえもがケイクに溺れ、彼を繋ぎ止めるためにと絢爛豪華なプレゼントを貢いでいるという噂もあるほどだ。
政治の中枢を担うものは、ケイクに溺れ、執務を蔑ろにする。
城を影から支える者たちは、ケイクに貢ぐため、ちょっとした悪事や不正に手を染めていく。
王宮で飼われていた荒くれ者たちは、ケイクの寵愛を求めて、その下劣な本性を表して街を荒らしていく。
――皇帝が違和感に気づいたときには手遅れで、ケイクという男の存在たったひとつで、気づけば王都の経済は傾きかけ、街は荒れ果ててしまっていたのだ。
「……ケイク!! ケイク、助けてくれ……!! どうして……っ、どうしてこうなったのだ……。余の治世は完璧であったはずなのに!!」
皇帝クラッドが、情けなく取り乱しながらも駆け込んだ場所。そこには、絢爛豪華な衣装や宝飾品に囲まれ、まるで己が世界の王であるかのように悠然と佇むケイクが待ち構えていた。
「ん~? どーしたの、へーか♡」
「嘘だと言ってくれ、ケイク……。そ、そなたが傾国だと、そなたのせいで国が滅びそうだ、などとと!! そんなわけがないよなあ? そなたは余の……忠臣で、あるのだから……!!」
迷子の子供のような顔をするクラッドを、ケイクは、さも愉快げな笑顔で見つめている。
「ありゃ? おじさん、なんか悪いことしちまったかい?」
「ッ……! こ、この国は、そなたに貢ごうとする愚か者どものせいで、内側から食い潰されかけている……! そなたは余の后であるのに、欲を出した奴らが悪いのだ、わかっている!! ……しかし民は、そなたが悪いと……国を滅ぼす悪魔だと……」
「ええ? 国が滅ぶほどのコトになってんのぉ? そりゃちょっと……思った以上だったかな」
肩をすくめてみせるケイクからは、一切の反省が見受けられない。
それどころか――ニヤリと妖艶な笑みを浮かべ、さも、当然のように言うのである。
「でもさあ……仕方ないだろ? この俺が、欲しくなっちまったんだから。セフレ連中だって喜んでるぜ、俺に貢げてさ」
「なっ……! わかっていたのか!? わかっていて、奴らを焚き付けたのか!? おいケイク、どういうつもりで……!」
「それより、自分の心配したほうがいいんでない? ……他所から見りゃ、へーかもアイツらとおんなじに見えてるだろ? 国を傾けちまうような男と、それを野放しにして寵愛してた皇帝。……民の怒りはどこに向くかねえ?」
「ッ……!!」
愉しげに告げられる言葉は、クラッドを冷静にさせるには十分だった。
ケイクの浮かべた悪辣な笑みは、彼が、この状況を意図的に作り上げた張本人である証だった。
クラッドも決して愚かではない。国中が、己すらもがこの男の掌の上で転がされ、操られていたのだと気づいてしまい、愕然とする。
「……いつ、からだ」
「んー?」
「いつから、この状況を仕組んでいた。なにが望みだ!? なぜ……我が国を、意味もなく混乱させる……!?」
困惑からか、ケイクへの未練からか。声を震わせて問いかけた彼に、ケイクは、雄の色気に溢れた獰猛な笑みを浮かべて、いかにも戦士然とした態度で答えを告げる。
「意味ならあるぜぇ? ……この国は、おまえたちは、我らコヴィッチを舐めてかかった。ならば、コヴィッチの戦士として、正しい報復をしてやらにゃあなるまい?」
そう言った一瞬、ケイクの纏う雰囲気が僅かに変わる。普段の飄々とした様子は鳴りを潜め、戦士としての、荒々しく猛々しい気配がクラッドを威圧する。
――しかし、空気が変わったのはほんの一瞬。クラッドが息を呑んだ次の瞬間には、普段通りの軽薄な笑顔に戻っていた。
「つっても俺は穏健派だぜ? 村の連中に任せたら、この国が地図から消えてただろうからな! 内戦と革命くらいで済むなら、かわいいもんだろ♡」
軽々しく告げられるのは、ケイクがこの国の混乱を望み、現実にしてみせたという恐ろしい事実だ。
唖然として声も出せないクラッドに、ケイクはゆっくりと歩み寄る。
「まあでも……オジサン、結構へーかのこと気に入ってるんだ。俺が誘惑してやってるってのに、ヤらせてくれねえ意地っ張りなとこが可愛い。それに、温室育ちの坊っちゃんの割には頭も回る。だから……俺の本当に欲しいモンをくれるなら、この馬鹿げた騒ぎも火消ししてやるよ。あんたが事態を収める形で、そう、手柄もくれてやる。……どうだ?」
ゆらりと差し出された掌。それはまるで、悪魔の囁きに見えて仕方がなかった。
「っ……、そなたは……何を、望むのだ……。帝位か? それとも、余の首か?」
「あはっ! んなもんいらねえよ。最初っから言ってるだろ? ……あんたの股間のデカブツ、俺のケツマンコにハメてくれ、ってさあ♡」
こんな状況下ですら、ケイクはいたって普段通りだ。城下町では暴動が起き、後宮にも『傾国の男后』ことケイクを討伐しようとする勢力が入り込もうとしている真っ最中なのに。
この状況を整えた彼が、そのことに気づいていないわけはないだろうに。
いつもどおりの軽薄な笑みを浮かべ、夜伽をねだる異常さに――クラッドは、この男を手駒として引き入れてはならなかったのだと、ようやく感覚で理解する。
(ああ、これは……悪魔だ。魔性だ。間違いなく。この混乱の中ですら、どうして、楽しげに笑っていられるのだ……!? どうして……こんなときですら、ケイクの笑顔は美しいのだ……!!)
固まってしまったクラッドへ、ケイクは、蠱惑的な声でひたすらに誘惑を囁き続ける。
「さあどうする? へーかが俺を抱いてくれる、ただ、それだけで全てが片付くんだぜ? ……簡単だろ? リードが不安だってんなら、俺に身を任せてくれてもいい♡ 天国見せてやるぜ? あんたはただ、俺の言うとおりにしてりゃあいいだけだ……♡」
頷いてしまいたくなる。何もかもを捨て、ケイクの傀儡になってしまいたくなる。
しかし――皇帝としての最後の矜持が、クラッドに、頷くことを拒否させた。
「そ、れは……っ、できない……。余は皇帝だ……、そなたが、我が国を滅ぼす悪魔であるならば……! そ、そなたを、受け入れる、わけには……」
「じゃあ、このまま国滅ぼして、王様やめちまうかか? ……それでもいいぜぇ、俺は。そしたらクラッド、おまえは、戦利品として俺のモンになるけどな♡♡」
懸命に誘惑を跳ね除ければ――返ってきたのは、当初のそれよりもさらに突拍子もなく過激な誘惑だった。
戦利品、という言葉に、クラッドの背筋にゾクゾクとした痺れが走る。
「せ、戦利品……、だと? 余が……?」
「そ。……おまえ、若いのに無理して王様ぶって、疲れてんだろ? 最初に見たときから思ってたぜ~? こんなガキンチョに無理させて王様押し付けるなんて、この国はろくでもねえとこなんだろう、ってな」
にたりとした笑みを浮かべ、ケイクは、クラッドに決断を迫る。クラッドの心臓は、バクバクと激しく脈打っていた。
「さあ……どっちが望みだ、クラッド? 俺の力を借りて、名君として帝国に君臨するか。こんな国捨てて、俺と一緒に逃げちまうか。どっちがいい?」
はじめは皇帝の政敵と看做される者たち――ケイク・コヴィッチが意図的に籠絡した連中が、奔放なケイクを振り向かせようと、あれこれと貢物を送るようになったのがきっかけだ。
ケイクは、それらを喜んで受け取り、装飾品は二人きりの逢瀬のときに着けてみせた。掠れた、色っぽい雄の声で、『陛下のくれた宝石よりも立派だなあ♡』なんて褒められたりしたときには、男たちは舞い上がる心地だった。
ケイクは皇帝の后という立場であるから、公式行事に出る際には、いつも皇帝から贈られた衣装と宝飾品を身に着ける。男たちは、いつかケイクが公の場で己の贈り物を見せびらかしてはくれまいかという僅かな期待にかけて、どんどん豪華で高級な贈り物をするようになっていった。
ケイクが性に奔放だ、という噂は、宮廷に務める者ならば誰もが知っている。
后でありながらも優秀な戦士でもあった彼は、時折、後宮の外に出されて、兵士たちの指導を任されることもあった。
ケイクは末端の兵士や、城づとめの文官たちにも親切だった。そして、彼らが少しでもケイクに性欲を向けたならば、よろこんで閨に誘う淫乱だった。
こうして――ケイクの虜となった兵士や文官は、高位貴族の真似をして、ケイクに貢物をするようになる。
しかし、稼ぎの低い兵士や文官が贈れる物などたかが知れている。最愛の男を喜ばせたい、という思いから――ある者は、横領に手を染めた。ある者は、こっそりと盗賊団と取引して、盗品を横流しさせるようになった。
ケイクは、最初に過ごしていた別棟の男たちとも、相変わらず肉体関係を続けていた。時折気まぐれに別棟に訪れ、男同士の乱交パーティーを開くのだ。
ケイクが男たちから貢がれている、という話を聞くと、別棟の男たちは目の色を変えてやる気を出した。
最初にケイクの良さを知ったのは、彼と寝ていたのは自分たちなのだと。
元々後ろ暗いところの多い彼らは、まっとうでない稼ぎで得た金を使ってプレゼントを買ったり、他国の間者は自国の情報をプレゼントしたりと、治安の悪さを遺憾なく発揮させる。
ケイク・コヴィッチという男に気に入られたいという思いは、男たちからまともな判断力を奪っていく。
なぜならばライバルは無数にいて、それでいて、彼は皇帝の后という立場にあって、自分だけの唯一にすることは国家権力をひっくり返しでもしないと無理なのだから。
ここまで派手に暴れながらも、ケイク自身が恨まれることがなかったのは、彼が、セックスだけはどんな対価もなしに喜んでしたから、という理由が大きいだろう。
誰とでも寝る娼婦以下の淫乱でありながら、誰のものにもならない高嶺の花。皇帝さえもがケイクに溺れ、彼を繋ぎ止めるためにと絢爛豪華なプレゼントを貢いでいるという噂もあるほどだ。
政治の中枢を担うものは、ケイクに溺れ、執務を蔑ろにする。
城を影から支える者たちは、ケイクに貢ぐため、ちょっとした悪事や不正に手を染めていく。
王宮で飼われていた荒くれ者たちは、ケイクの寵愛を求めて、その下劣な本性を表して街を荒らしていく。
――皇帝が違和感に気づいたときには手遅れで、ケイクという男の存在たったひとつで、気づけば王都の経済は傾きかけ、街は荒れ果ててしまっていたのだ。
「……ケイク!! ケイク、助けてくれ……!! どうして……っ、どうしてこうなったのだ……。余の治世は完璧であったはずなのに!!」
皇帝クラッドが、情けなく取り乱しながらも駆け込んだ場所。そこには、絢爛豪華な衣装や宝飾品に囲まれ、まるで己が世界の王であるかのように悠然と佇むケイクが待ち構えていた。
「ん~? どーしたの、へーか♡」
「嘘だと言ってくれ、ケイク……。そ、そなたが傾国だと、そなたのせいで国が滅びそうだ、などとと!! そんなわけがないよなあ? そなたは余の……忠臣で、あるのだから……!!」
迷子の子供のような顔をするクラッドを、ケイクは、さも愉快げな笑顔で見つめている。
「ありゃ? おじさん、なんか悪いことしちまったかい?」
「ッ……! こ、この国は、そなたに貢ごうとする愚か者どものせいで、内側から食い潰されかけている……! そなたは余の后であるのに、欲を出した奴らが悪いのだ、わかっている!! ……しかし民は、そなたが悪いと……国を滅ぼす悪魔だと……」
「ええ? 国が滅ぶほどのコトになってんのぉ? そりゃちょっと……思った以上だったかな」
肩をすくめてみせるケイクからは、一切の反省が見受けられない。
それどころか――ニヤリと妖艶な笑みを浮かべ、さも、当然のように言うのである。
「でもさあ……仕方ないだろ? この俺が、欲しくなっちまったんだから。セフレ連中だって喜んでるぜ、俺に貢げてさ」
「なっ……! わかっていたのか!? わかっていて、奴らを焚き付けたのか!? おいケイク、どういうつもりで……!」
「それより、自分の心配したほうがいいんでない? ……他所から見りゃ、へーかもアイツらとおんなじに見えてるだろ? 国を傾けちまうような男と、それを野放しにして寵愛してた皇帝。……民の怒りはどこに向くかねえ?」
「ッ……!!」
愉しげに告げられる言葉は、クラッドを冷静にさせるには十分だった。
ケイクの浮かべた悪辣な笑みは、彼が、この状況を意図的に作り上げた張本人である証だった。
クラッドも決して愚かではない。国中が、己すらもがこの男の掌の上で転がされ、操られていたのだと気づいてしまい、愕然とする。
「……いつ、からだ」
「んー?」
「いつから、この状況を仕組んでいた。なにが望みだ!? なぜ……我が国を、意味もなく混乱させる……!?」
困惑からか、ケイクへの未練からか。声を震わせて問いかけた彼に、ケイクは、雄の色気に溢れた獰猛な笑みを浮かべて、いかにも戦士然とした態度で答えを告げる。
「意味ならあるぜぇ? ……この国は、おまえたちは、我らコヴィッチを舐めてかかった。ならば、コヴィッチの戦士として、正しい報復をしてやらにゃあなるまい?」
そう言った一瞬、ケイクの纏う雰囲気が僅かに変わる。普段の飄々とした様子は鳴りを潜め、戦士としての、荒々しく猛々しい気配がクラッドを威圧する。
――しかし、空気が変わったのはほんの一瞬。クラッドが息を呑んだ次の瞬間には、普段通りの軽薄な笑顔に戻っていた。
「つっても俺は穏健派だぜ? 村の連中に任せたら、この国が地図から消えてただろうからな! 内戦と革命くらいで済むなら、かわいいもんだろ♡」
軽々しく告げられるのは、ケイクがこの国の混乱を望み、現実にしてみせたという恐ろしい事実だ。
唖然として声も出せないクラッドに、ケイクはゆっくりと歩み寄る。
「まあでも……オジサン、結構へーかのこと気に入ってるんだ。俺が誘惑してやってるってのに、ヤらせてくれねえ意地っ張りなとこが可愛い。それに、温室育ちの坊っちゃんの割には頭も回る。だから……俺の本当に欲しいモンをくれるなら、この馬鹿げた騒ぎも火消ししてやるよ。あんたが事態を収める形で、そう、手柄もくれてやる。……どうだ?」
ゆらりと差し出された掌。それはまるで、悪魔の囁きに見えて仕方がなかった。
「っ……、そなたは……何を、望むのだ……。帝位か? それとも、余の首か?」
「あはっ! んなもんいらねえよ。最初っから言ってるだろ? ……あんたの股間のデカブツ、俺のケツマンコにハメてくれ、ってさあ♡」
こんな状況下ですら、ケイクはいたって普段通りだ。城下町では暴動が起き、後宮にも『傾国の男后』ことケイクを討伐しようとする勢力が入り込もうとしている真っ最中なのに。
この状況を整えた彼が、そのことに気づいていないわけはないだろうに。
いつもどおりの軽薄な笑みを浮かべ、夜伽をねだる異常さに――クラッドは、この男を手駒として引き入れてはならなかったのだと、ようやく感覚で理解する。
(ああ、これは……悪魔だ。魔性だ。間違いなく。この混乱の中ですら、どうして、楽しげに笑っていられるのだ……!? どうして……こんなときですら、ケイクの笑顔は美しいのだ……!!)
固まってしまったクラッドへ、ケイクは、蠱惑的な声でひたすらに誘惑を囁き続ける。
「さあどうする? へーかが俺を抱いてくれる、ただ、それだけで全てが片付くんだぜ? ……簡単だろ? リードが不安だってんなら、俺に身を任せてくれてもいい♡ 天国見せてやるぜ? あんたはただ、俺の言うとおりにしてりゃあいいだけだ……♡」
頷いてしまいたくなる。何もかもを捨て、ケイクの傀儡になってしまいたくなる。
しかし――皇帝としての最後の矜持が、クラッドに、頷くことを拒否させた。
「そ、れは……っ、できない……。余は皇帝だ……、そなたが、我が国を滅ぼす悪魔であるならば……! そ、そなたを、受け入れる、わけには……」
「じゃあ、このまま国滅ぼして、王様やめちまうかか? ……それでもいいぜぇ、俺は。そしたらクラッド、おまえは、戦利品として俺のモンになるけどな♡♡」
懸命に誘惑を跳ね除ければ――返ってきたのは、当初のそれよりもさらに突拍子もなく過激な誘惑だった。
戦利品、という言葉に、クラッドの背筋にゾクゾクとした痺れが走る。
「せ、戦利品……、だと? 余が……?」
「そ。……おまえ、若いのに無理して王様ぶって、疲れてんだろ? 最初に見たときから思ってたぜ~? こんなガキンチョに無理させて王様押し付けるなんて、この国はろくでもねえとこなんだろう、ってな」
にたりとした笑みを浮かべ、ケイクは、クラッドに決断を迫る。クラッドの心臓は、バクバクと激しく脈打っていた。
「さあ……どっちが望みだ、クラッド? 俺の力を借りて、名君として帝国に君臨するか。こんな国捨てて、俺と一緒に逃げちまうか。どっちがいい?」
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