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「うぁ……。ここ、は……?」
――冒険者資格を剥奪され、犯罪奴隷に落とされ、国外追放されたセイン。追放先で気絶したはずの彼が、再び目を覚ますと、そこはふかふかのベッドの上であった。
「……お、俺、生きてる? ……なんで?」
まさか、魔物だらけの危険な森で、行き倒れた犯罪奴隷を拾うような奇特な人間がいたのだろうか。
そんな都合の良い展開があるのかと――断罪されたことですっかりこの世界のことを信じられなくなったセインは、怯えた様子で室内を見回す。
「も、も、もう騙されないぞ……。ど、どうせ俺なんか、ざまぁされる悪役なんだ……。お、俺を捕まえた奴だって、犯罪奴隷を捕まえて痛めつけたいサド野郎とか……人体実験したいマッドサイエンティストとか……そういうろくでなしに決まってる……!!」
見た限り、部屋は簡素な山小屋といった雰囲気で、ベッドとこじんまりしたテーブルがあるだけのシンプルな内装である。
ベッドの向かい側には窓があり、外の様子が伺い知れる。どこかの森の中のようだ。鍵はかかっていないようだが、衰弱しきった体では、脱走しても再度捕まるか、また行き倒れてしまうのがオチだろう。
(……クソっ。なんで、なんでこんな目に合わなきゃいけないんだよ……。俺はただ、ラノベ主人公みたいに、転生チートでチヤホヤされたかっただけなのに……!)
この状況になってなお、自身の何が悪かったのかにも気づけずに、ただ悔しさに歯噛みするセイン。
そうこうしているうちに――ガチャリ、と、部屋のドアが外側から開けられた。
「セイン!! 目を覚ましたんだな! ……良かった……!」
「え……? ひ、ヒイ、ロ……?」
――現れたのは、ヒイロ……セインが一方的に逆恨みして、殺害未遂にまで至ったはずの相手。この世界の真の主人公とでも呼ぶべき立ち位置にいるはずの男であった。
「お、お、お、おまえっ……! なんでおまえが……!?」
「ああ……、セインの追放先を調べて、慌てて追いかけてきたんだよ。……本当は、あの法廷で判決が出る前に、君を助けたかったけど……ただの冒険者にはなにもできなくて」
そう言って、ヒイロはつらそうに顔を歪めた。セインを恨んだりしている様子は微塵もなく、むしろ、彼の置かれた境遇に心を痛めているかのようである。
清廉潔白、善良、という言葉がふさわしいヒイロの態度は、セインの心を余計に苛立たせた。
カッとなった彼は、『主人公』としての演技すら捨て去った素の態度で叫ぶ。
「う、う、嘘だっ……!! どうせおまえも、しくじった俺を嘲笑いにきたんだろ!? ……みんなそうだ! 友達ヅラして、俺を見下して、心配してるふりして嘲笑う!! ……学校の奴らも、ネトゲ仲間も、みんな……っ、そうやって……!!」
セインが――佐出征時が思い出していたのは、前世で、就活に失敗したばかりの頃のことだ。
友達だと思っていた人間は皆、征時がニートになったと知れば、彼を見下したり関わりを断ったりしてきた。征時の周囲に残ってくれる人間なんていなかった。
何か輝かしい功績がなければ――利益をもたらす相手でなければ、人は、自分から離れていってしまうのだと。征時はそう学んだのである。
トラウマがフラッシュバックし、明らかに錯乱した様子であるセインを見ても、ヒイロは怯えたり不快さを示したりしなかった。
ベッドの上で蹲る彼にそっと近寄ると、震える背を撫でながら、優しい声で語りかける。
「……大丈夫だよ、セイン。僕は、僕だけは絶対セインを裏切らない。約束する。……お願いだ、信じてくれ……!」
真摯な声からは、ヒイロが、本気でセインを思っているのだということが伝わってくる。
だからこそ理解できなくて、セインは首を横に振っていた。
「な……、んで……。……俺はっ!! おまえを、殺そうとしたんだぞ!? あのならず者どもに命令して!! お、お、おまえは俺を恨んでるはずだっ、そうでなけりゃ……主人公にもなれない俺をバカにして、『ざまあ』って思ってるはずだろ!? ……そういうテンプレなんだからさぁ!!」
「セインの言ってること、全部はわからないけど……。他の人が何を言おうが、何を思おうが、僕はセインの味方でいるし……君の助けになりたいんだ。……だって、セインのこと、好きだから」
「…………へ?」
予期せぬ言葉に、セインは間抜けな声を出した。
ヒイロはどこまでも真剣に、しかし、ほんの少しだけ浮ついたような……そわそわとした様子を滲ませながら、意を決した様子で次の言葉を紡ぐ。
「こんな、弱みにつけ込むような真似、良くないってわかってるよ。でも……これを言わないと、いつまでも信じてもらえないと思うから」
「は? な、何、言って……」
「……セイン、僕は、君が好きだ!! 君に惚れてる!! 君と恋人になりたいし、あわよくば、抱きたいと思ってる……!!」
「…………。はぁあああッッ!?」
予想だにしない愛の告白。ヒイロの顔は真剣そのもので、赤く染まった頬からも、彼が本気でセインに恋慕しているらしいことは伝わってくる。
――セインとして、ハーレムパーティーを組んでいた頃も、佐出征時として生きていた頃も含めて、男に告白されるというのは彼にとって初めての経験だった。
それどころか、パーティーメンバーはやんわりとセインに思慕を向けつつも互いに牽制しあい、誰か一人が抜け駆けすることを避けていたので、きちんとした言葉で告白されること自体も初めてなのである。
ライバルのはずの、自分をざまあする主人公ポジションのはずの男が、なぜか自分に惚れている。
訳のわからない展開にセインが呆けているうちに、ヒイロは顔を真っ赤にしながら言葉を続ける。
「あっ、も、もちろん、セインが嫌なことは絶対しないぞ!? ……だから、ちょっとでもいいから、僕を意識してくれたら嬉しいし……僕に君を助けさせてほしい。……駄目かな……?」
(駄目……って、い、いや、何がだよ!? そんなこと俺に言われても……! ……っていうか、なんで俺!? ヒイロは主人公だったんだろ、なら……フラグが立つならパーティーメンバーとじゃねえとおかしいだろ!!)
どこまでもこの世界をゲームとしか考えられないセインは、ヒイロからの告白を信じられなかった。自分がヒイロの立場なら、悪役にざまあしてパーティーメンバーとのハーレム生活を楽しむに決まっている、と思ったからだ。
(も、もしかして、嘘告白? 罰ゲームかなにかか? ……だとしたら、そのためだけに俺を追ってくるとか意味わかんないし……。そもそも、こいつのパーティーメンバーはどこいったんだ……?)
チートも無しに自分が愛されるわけがない、と思っているセインは、ひとまず、疑いを口に出すことにした。
状況を考えれば、自身を救い出したヒイロに媚を売るべき場面だとわかっていたが……素直にヒイロを信用できずにヤケになっていたからである。
「お、お、おまえ……っ、絶対、おかしいよ……。俺を、す、好き……とか……。追いかけてきた、とか……。……おまえの、仲間たちはどうしたんだよ」
「ああ……実は、冒険者辞めてきたんだ。だから、みんなともパーティー解散して、それっきりだよ」
「……んなぁああッ!?」
さらっと、なんてことのない様子で冒険者を辞めたと語るヒイロ。自身が執着していた『主人公』『英雄』への道をあっさり手放したらしいライバルの姿に、セインは奇声を上げていた。
(な、なんだよそれ……意味わかんねえ!! 俺なんかより、あの強キャラパーティーのほうが絶対良いに決まってるのに!! は、犯罪奴隷に落とされた俺なんかといたら……一緒に転落人生まっしぐらなのに……!? ……なんで!?)
話を聞けば聞くほどに、ヒイロがセインに惚れている、という話の信憑性が増していく。ただただ、どうしていいのかわからなかった。
ありのままの自分が愛されるわけはないことは、セインが――征時が一番よく知っていた。
彼の内心には気が付かず、ヒイロは、にこやかな笑顔で言葉を続ける。
「この山小屋さ、僕の爺ちゃんの遺産なんだよね。セインの追放先がこの森で良かったよ……。おかげで、ここに君を匿うことができたんだから」
「……は、犯罪奴隷を匿うなんて、怒られるんじゃ……」
「追放刑になった人を保護すること自体は、とくに罪には問われないみたいだぜ? ……安心しろって、僕とセインが安全に暮らせるように、法律関係もバッチリ調べておいたんだ!!」
にこやかな笑みを浮かべ、セインを安心させようとしながら、彼は続ける。
「これからの話、してもいいかい?」
「あ、ああ……」
「セインに刻まれた奴隷印は、十年程度で消えるものらしい。つまり、十年生き延びられたら奴隷身分から開放、ってこと。……君の自由を奪うみたいで、申し訳ないけど……、その、奴隷でなくなるまでの十年間だけ、僕と、この山小屋でひっそり暮らす……っていうのはどうかな? このまま奴隷として逃げて生きるよりは、多分、少しはマシな暮らしになるんじゃないかなあ……なんて、思うんだけど……」
――この国における犯罪奴隷は、罪の重さによって、異なる刻印を刻まれる。それが消えたときにようやく、奴隷身分から開放され、罪を償ったと見做されるのだ。
追放刑を受けて奴隷身分になった者は、どこの国に行っても、前科者として扱われる。まともに生活ができるわけはないが、奴隷印を隠せばさらなる罪に問われるので、奴隷であることを隠して逃げるのも非現実的だ。
このまま逃げても、お尋ね者扱いになるだけ。ヒイロと共に隠居ぐらしをするならば、犯罪奴隷であるデメリットはほとんど気にしなくて済む。
あまりにも、セインにだけ都合が良すぎる提案だった。
「……そ、そんなことして、おまえになんのメリットがあるんだよ」
「言ったろ? 僕はセインが好きだって。好きな人の役に立ちたいし、その……一緒に暮らせるだけで役得だし。あっ、もちろん、変なことはしないって神に誓うぞ!! 不安なら制約魔法をかけてもいい!」
「お、俺のことなんか忘れて、冒険者としてやっていくほうが、幸せだって思わないのか? ……俺なんかより、おまえのパーティーメンバーだったやつらのほうが優秀だし、美男美女ばっかだし……。それに、あのまま冒険者でいたなら、魔王を倒す英雄にだってなれるかもしれないのに……」
ぼそりと、自分がなり損なった『英雄』『主人公』としての道に興味はないのかと尋ねれば――ヒイロは真面目な顔をして答える。
「そんなもの、僕にはなんの価値もないんだよ」
彼は、周囲からの称賛も栄誉も、何一つ欲してはいなかった。それだけならばまるで物語の英雄そのものだが……ヒイロが求めているのはたった一つ。
恋した人の、セインの心、だけなのである。
「セイン……君の役に立てるなら、他のものなんてなんにもいらないんだ。冒険者になったのも、強くなったのも、全部君に追いつきたかったからだよ」
「……な、な、なんで……。おまえに好かれるようなこと、したおぼえ、ないのに……」
「セインにとっては、どうでもいいことだったのかもしれない。……けど、僕は君に、命を救われたんだ」
懐かしむように目を細めて、彼は語る。
「一年前、僕の故郷の村に、魔物の群れが襲いかかった。セインは多分、ただ魔物狩りをしてただけだったんだと思う。オーガに襲われそうだった僕を突き飛ばして、助けてくれて……」
「…………そんなこと、あったか?」
「覚えてなくても仕方ないよ。セインは今まで、あちこちで魔物退治をしてるわけだしね」
そう言われて記憶を探るも、心当たりはぼんやりとしたものだけである。
(一年前か……。そういえば、魔物狩り中にやたらモブキャラが迷子になっててウザかったイベントがあったような。あのとき助けたモブの中に、ヒイロがいたのか? ……駄目だ、全然覚えてない……)
なお、そのときのセインは一般市民たちを片っ端から突き飛ばしては『巻き込まれたくなければ下がっていろ!!(意訳:経験値狩りの邪魔だザコが!!)』などとのたまっていたので、記憶にないのもさもありなん、だ。
気まずくなっているセインをよそに、ヒイロは、うっとりとして語り続ける。
「あのときのセインはすごく勇ましくて、格好良くて……僕もあんなふうになりたくて、村のみんなの反対を押し切って冒険者になったんだ」
「……な、なら、失望しただろ。ほ、ほ、本当の俺は……あんな、強くて格好良くてなんでもできる主人公じゃない。そういう風に演じてただけだ。……残念だったな、惚れた相手が偽物で」
「そんなことない!! ……たしかに、最初は君の格好良いところに憧れてた。でも、冒険者になって、君と肩を並べられるようになって……君が『冒険者代表として相応しい』自分でいるよう努力してるんだな、ってのはわかったよ。笑ってても、どこか苦しそうに見えた。だから僕は、君の力になりたくて……でもそれが、余計に負担になっちゃったんだよな……?」
自身の存在がセインを苦しめていたことは、ヒイロもうっすら察していたらしい。
何一つ否のない立場なのに、申し訳なさげな様子を見せるヒイロに、セインの苛立ちがこみ上げる。
「…………お、おまえは、俺を、過大評価しすぎだ。俺がお上品な英雄サマを演じてたのは、そうしたほうがモテるからだし……おまえみたいな大層な志も、なんにもない。ただ、転生チートでチヤホヤされたかっただけなんだよ!! 素の俺に、おまえが期待するものなんかなんもねえよ!!」
声を荒上げるセインに、ヒイロは、どこまでも真っ直ぐに言い返す。
「そんなことないよ!! こんな状況で喜んじゃいけないのはわかってるけど……僕は、セインが素の自分を見せてくれて嬉しいんだ。少しは、セインに頼ってもらえるようになれたのかなって……」
「は、はぁ!? 誰が、誰に頼るって……!?」
「……それにさ、取り繕わない、本当のセインも可愛いと思うぜ。僕は、どっちのセインも好きだな」
「ッッ……!?」
不意打ちでの口説き文句、それも、セイン自身が嫌っている素の自分を褒めるような甘い言葉に、驚いて言葉を止めてしまう。
ヒイロは、捨てられた子犬のような眼差しでセインを見つめながら言う。
「セインがどうしても嫌なら、無理強いはしない。ここから出ていってもいいし……逆に、僕がここから出ていって、君が住むのでも全然良いよ。……ただ、できたら……僕と一緒に暮らしてくれたら、嬉しいなあって思うのだけど……」
「っ……。少し……、考えさせてくれ……」
「それはもちろん!! ……あっ、目が覚めたなら、お腹も空いてるよな? 僕、ご飯作ってくるよ!! いつまででも、ゆっくり考えといて!」
食事が必要だ、と思い出したヒイロは、慌ただしく部屋を出ていった。
誘い断って根無し草になる勇気もなく、素直にヒイロの好意を受け取れる度量もないセインは、答えを先延ばしにするしかできなかったのである。
「……あー、クソっ……。なんで……。拾われたのは俺なのに……、なんでアイツ、あんな、捨て犬みてーな顔で俺に縋るんだよ……。……チートのない俺なんて、なんにもない、空っぽのゴミなのに……」
そう言って、セインは一人、頭を抱えた。
――冒険者資格を剥奪され、犯罪奴隷に落とされ、国外追放されたセイン。追放先で気絶したはずの彼が、再び目を覚ますと、そこはふかふかのベッドの上であった。
「……お、俺、生きてる? ……なんで?」
まさか、魔物だらけの危険な森で、行き倒れた犯罪奴隷を拾うような奇特な人間がいたのだろうか。
そんな都合の良い展開があるのかと――断罪されたことですっかりこの世界のことを信じられなくなったセインは、怯えた様子で室内を見回す。
「も、も、もう騙されないぞ……。ど、どうせ俺なんか、ざまぁされる悪役なんだ……。お、俺を捕まえた奴だって、犯罪奴隷を捕まえて痛めつけたいサド野郎とか……人体実験したいマッドサイエンティストとか……そういうろくでなしに決まってる……!!」
見た限り、部屋は簡素な山小屋といった雰囲気で、ベッドとこじんまりしたテーブルがあるだけのシンプルな内装である。
ベッドの向かい側には窓があり、外の様子が伺い知れる。どこかの森の中のようだ。鍵はかかっていないようだが、衰弱しきった体では、脱走しても再度捕まるか、また行き倒れてしまうのがオチだろう。
(……クソっ。なんで、なんでこんな目に合わなきゃいけないんだよ……。俺はただ、ラノベ主人公みたいに、転生チートでチヤホヤされたかっただけなのに……!)
この状況になってなお、自身の何が悪かったのかにも気づけずに、ただ悔しさに歯噛みするセイン。
そうこうしているうちに――ガチャリ、と、部屋のドアが外側から開けられた。
「セイン!! 目を覚ましたんだな! ……良かった……!」
「え……? ひ、ヒイ、ロ……?」
――現れたのは、ヒイロ……セインが一方的に逆恨みして、殺害未遂にまで至ったはずの相手。この世界の真の主人公とでも呼ぶべき立ち位置にいるはずの男であった。
「お、お、お、おまえっ……! なんでおまえが……!?」
「ああ……、セインの追放先を調べて、慌てて追いかけてきたんだよ。……本当は、あの法廷で判決が出る前に、君を助けたかったけど……ただの冒険者にはなにもできなくて」
そう言って、ヒイロはつらそうに顔を歪めた。セインを恨んだりしている様子は微塵もなく、むしろ、彼の置かれた境遇に心を痛めているかのようである。
清廉潔白、善良、という言葉がふさわしいヒイロの態度は、セインの心を余計に苛立たせた。
カッとなった彼は、『主人公』としての演技すら捨て去った素の態度で叫ぶ。
「う、う、嘘だっ……!! どうせおまえも、しくじった俺を嘲笑いにきたんだろ!? ……みんなそうだ! 友達ヅラして、俺を見下して、心配してるふりして嘲笑う!! ……学校の奴らも、ネトゲ仲間も、みんな……っ、そうやって……!!」
セインが――佐出征時が思い出していたのは、前世で、就活に失敗したばかりの頃のことだ。
友達だと思っていた人間は皆、征時がニートになったと知れば、彼を見下したり関わりを断ったりしてきた。征時の周囲に残ってくれる人間なんていなかった。
何か輝かしい功績がなければ――利益をもたらす相手でなければ、人は、自分から離れていってしまうのだと。征時はそう学んだのである。
トラウマがフラッシュバックし、明らかに錯乱した様子であるセインを見ても、ヒイロは怯えたり不快さを示したりしなかった。
ベッドの上で蹲る彼にそっと近寄ると、震える背を撫でながら、優しい声で語りかける。
「……大丈夫だよ、セイン。僕は、僕だけは絶対セインを裏切らない。約束する。……お願いだ、信じてくれ……!」
真摯な声からは、ヒイロが、本気でセインを思っているのだということが伝わってくる。
だからこそ理解できなくて、セインは首を横に振っていた。
「な……、んで……。……俺はっ!! おまえを、殺そうとしたんだぞ!? あのならず者どもに命令して!! お、お、おまえは俺を恨んでるはずだっ、そうでなけりゃ……主人公にもなれない俺をバカにして、『ざまあ』って思ってるはずだろ!? ……そういうテンプレなんだからさぁ!!」
「セインの言ってること、全部はわからないけど……。他の人が何を言おうが、何を思おうが、僕はセインの味方でいるし……君の助けになりたいんだ。……だって、セインのこと、好きだから」
「…………へ?」
予期せぬ言葉に、セインは間抜けな声を出した。
ヒイロはどこまでも真剣に、しかし、ほんの少しだけ浮ついたような……そわそわとした様子を滲ませながら、意を決した様子で次の言葉を紡ぐ。
「こんな、弱みにつけ込むような真似、良くないってわかってるよ。でも……これを言わないと、いつまでも信じてもらえないと思うから」
「は? な、何、言って……」
「……セイン、僕は、君が好きだ!! 君に惚れてる!! 君と恋人になりたいし、あわよくば、抱きたいと思ってる……!!」
「…………。はぁあああッッ!?」
予想だにしない愛の告白。ヒイロの顔は真剣そのもので、赤く染まった頬からも、彼が本気でセインに恋慕しているらしいことは伝わってくる。
――セインとして、ハーレムパーティーを組んでいた頃も、佐出征時として生きていた頃も含めて、男に告白されるというのは彼にとって初めての経験だった。
それどころか、パーティーメンバーはやんわりとセインに思慕を向けつつも互いに牽制しあい、誰か一人が抜け駆けすることを避けていたので、きちんとした言葉で告白されること自体も初めてなのである。
ライバルのはずの、自分をざまあする主人公ポジションのはずの男が、なぜか自分に惚れている。
訳のわからない展開にセインが呆けているうちに、ヒイロは顔を真っ赤にしながら言葉を続ける。
「あっ、も、もちろん、セインが嫌なことは絶対しないぞ!? ……だから、ちょっとでもいいから、僕を意識してくれたら嬉しいし……僕に君を助けさせてほしい。……駄目かな……?」
(駄目……って、い、いや、何がだよ!? そんなこと俺に言われても……! ……っていうか、なんで俺!? ヒイロは主人公だったんだろ、なら……フラグが立つならパーティーメンバーとじゃねえとおかしいだろ!!)
どこまでもこの世界をゲームとしか考えられないセインは、ヒイロからの告白を信じられなかった。自分がヒイロの立場なら、悪役にざまあしてパーティーメンバーとのハーレム生活を楽しむに決まっている、と思ったからだ。
(も、もしかして、嘘告白? 罰ゲームかなにかか? ……だとしたら、そのためだけに俺を追ってくるとか意味わかんないし……。そもそも、こいつのパーティーメンバーはどこいったんだ……?)
チートも無しに自分が愛されるわけがない、と思っているセインは、ひとまず、疑いを口に出すことにした。
状況を考えれば、自身を救い出したヒイロに媚を売るべき場面だとわかっていたが……素直にヒイロを信用できずにヤケになっていたからである。
「お、お、おまえ……っ、絶対、おかしいよ……。俺を、す、好き……とか……。追いかけてきた、とか……。……おまえの、仲間たちはどうしたんだよ」
「ああ……実は、冒険者辞めてきたんだ。だから、みんなともパーティー解散して、それっきりだよ」
「……んなぁああッ!?」
さらっと、なんてことのない様子で冒険者を辞めたと語るヒイロ。自身が執着していた『主人公』『英雄』への道をあっさり手放したらしいライバルの姿に、セインは奇声を上げていた。
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ありのままの自分が愛されるわけはないことは、セインが――征時が一番よく知っていた。
彼の内心には気が付かず、ヒイロは、にこやかな笑顔で言葉を続ける。
「この山小屋さ、僕の爺ちゃんの遺産なんだよね。セインの追放先がこの森で良かったよ……。おかげで、ここに君を匿うことができたんだから」
「……は、犯罪奴隷を匿うなんて、怒られるんじゃ……」
「追放刑になった人を保護すること自体は、とくに罪には問われないみたいだぜ? ……安心しろって、僕とセインが安全に暮らせるように、法律関係もバッチリ調べておいたんだ!!」
にこやかな笑みを浮かべ、セインを安心させようとしながら、彼は続ける。
「これからの話、してもいいかい?」
「あ、ああ……」
「セインに刻まれた奴隷印は、十年程度で消えるものらしい。つまり、十年生き延びられたら奴隷身分から開放、ってこと。……君の自由を奪うみたいで、申し訳ないけど……、その、奴隷でなくなるまでの十年間だけ、僕と、この山小屋でひっそり暮らす……っていうのはどうかな? このまま奴隷として逃げて生きるよりは、多分、少しはマシな暮らしになるんじゃないかなあ……なんて、思うんだけど……」
――この国における犯罪奴隷は、罪の重さによって、異なる刻印を刻まれる。それが消えたときにようやく、奴隷身分から開放され、罪を償ったと見做されるのだ。
追放刑を受けて奴隷身分になった者は、どこの国に行っても、前科者として扱われる。まともに生活ができるわけはないが、奴隷印を隠せばさらなる罪に問われるので、奴隷であることを隠して逃げるのも非現実的だ。
このまま逃げても、お尋ね者扱いになるだけ。ヒイロと共に隠居ぐらしをするならば、犯罪奴隷であるデメリットはほとんど気にしなくて済む。
あまりにも、セインにだけ都合が良すぎる提案だった。
「……そ、そんなことして、おまえになんのメリットがあるんだよ」
「言ったろ? 僕はセインが好きだって。好きな人の役に立ちたいし、その……一緒に暮らせるだけで役得だし。あっ、もちろん、変なことはしないって神に誓うぞ!! 不安なら制約魔法をかけてもいい!」
「お、俺のことなんか忘れて、冒険者としてやっていくほうが、幸せだって思わないのか? ……俺なんかより、おまえのパーティーメンバーだったやつらのほうが優秀だし、美男美女ばっかだし……。それに、あのまま冒険者でいたなら、魔王を倒す英雄にだってなれるかもしれないのに……」
ぼそりと、自分がなり損なった『英雄』『主人公』としての道に興味はないのかと尋ねれば――ヒイロは真面目な顔をして答える。
「そんなもの、僕にはなんの価値もないんだよ」
彼は、周囲からの称賛も栄誉も、何一つ欲してはいなかった。それだけならばまるで物語の英雄そのものだが……ヒイロが求めているのはたった一つ。
恋した人の、セインの心、だけなのである。
「セイン……君の役に立てるなら、他のものなんてなんにもいらないんだ。冒険者になったのも、強くなったのも、全部君に追いつきたかったからだよ」
「……な、な、なんで……。おまえに好かれるようなこと、したおぼえ、ないのに……」
「セインにとっては、どうでもいいことだったのかもしれない。……けど、僕は君に、命を救われたんだ」
懐かしむように目を細めて、彼は語る。
「一年前、僕の故郷の村に、魔物の群れが襲いかかった。セインは多分、ただ魔物狩りをしてただけだったんだと思う。オーガに襲われそうだった僕を突き飛ばして、助けてくれて……」
「…………そんなこと、あったか?」
「覚えてなくても仕方ないよ。セインは今まで、あちこちで魔物退治をしてるわけだしね」
そう言われて記憶を探るも、心当たりはぼんやりとしたものだけである。
(一年前か……。そういえば、魔物狩り中にやたらモブキャラが迷子になっててウザかったイベントがあったような。あのとき助けたモブの中に、ヒイロがいたのか? ……駄目だ、全然覚えてない……)
なお、そのときのセインは一般市民たちを片っ端から突き飛ばしては『巻き込まれたくなければ下がっていろ!!(意訳:経験値狩りの邪魔だザコが!!)』などとのたまっていたので、記憶にないのもさもありなん、だ。
気まずくなっているセインをよそに、ヒイロは、うっとりとして語り続ける。
「あのときのセインはすごく勇ましくて、格好良くて……僕もあんなふうになりたくて、村のみんなの反対を押し切って冒険者になったんだ」
「……な、なら、失望しただろ。ほ、ほ、本当の俺は……あんな、強くて格好良くてなんでもできる主人公じゃない。そういう風に演じてただけだ。……残念だったな、惚れた相手が偽物で」
「そんなことない!! ……たしかに、最初は君の格好良いところに憧れてた。でも、冒険者になって、君と肩を並べられるようになって……君が『冒険者代表として相応しい』自分でいるよう努力してるんだな、ってのはわかったよ。笑ってても、どこか苦しそうに見えた。だから僕は、君の力になりたくて……でもそれが、余計に負担になっちゃったんだよな……?」
自身の存在がセインを苦しめていたことは、ヒイロもうっすら察していたらしい。
何一つ否のない立場なのに、申し訳なさげな様子を見せるヒイロに、セインの苛立ちがこみ上げる。
「…………お、おまえは、俺を、過大評価しすぎだ。俺がお上品な英雄サマを演じてたのは、そうしたほうがモテるからだし……おまえみたいな大層な志も、なんにもない。ただ、転生チートでチヤホヤされたかっただけなんだよ!! 素の俺に、おまえが期待するものなんかなんもねえよ!!」
声を荒上げるセインに、ヒイロは、どこまでも真っ直ぐに言い返す。
「そんなことないよ!! こんな状況で喜んじゃいけないのはわかってるけど……僕は、セインが素の自分を見せてくれて嬉しいんだ。少しは、セインに頼ってもらえるようになれたのかなって……」
「は、はぁ!? 誰が、誰に頼るって……!?」
「……それにさ、取り繕わない、本当のセインも可愛いと思うぜ。僕は、どっちのセインも好きだな」
「ッッ……!?」
不意打ちでの口説き文句、それも、セイン自身が嫌っている素の自分を褒めるような甘い言葉に、驚いて言葉を止めてしまう。
ヒイロは、捨てられた子犬のような眼差しでセインを見つめながら言う。
「セインがどうしても嫌なら、無理強いはしない。ここから出ていってもいいし……逆に、僕がここから出ていって、君が住むのでも全然良いよ。……ただ、できたら……僕と一緒に暮らしてくれたら、嬉しいなあって思うのだけど……」
「っ……。少し……、考えさせてくれ……」
「それはもちろん!! ……あっ、目が覚めたなら、お腹も空いてるよな? 僕、ご飯作ってくるよ!! いつまででも、ゆっくり考えといて!」
食事が必要だ、と思い出したヒイロは、慌ただしく部屋を出ていった。
誘い断って根無し草になる勇気もなく、素直にヒイロの好意を受け取れる度量もないセインは、答えを先延ばしにするしかできなかったのである。
「……あー、クソっ……。なんで……。拾われたのは俺なのに……、なんでアイツ、あんな、捨て犬みてーな顔で俺に縋るんだよ……。……チートのない俺なんて、なんにもない、空っぽのゴミなのに……」
そう言って、セインは一人、頭を抱えた。
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クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
俺をハーレムに組み込むな!!!!〜モテモテハーレムの勇者様が平凡ゴリラの俺に惚れているとか冗談だろ?〜
嶋紀之/サークル「黒薔薇。」
BL
無自覚モテモテ勇者×平凡地味顔ゴリラ系男子の、コメディー要素強めなラブコメBLのつもり。
勇者ユウリと共に旅する仲間の一人である青年、アレクには悩みがあった。それは自分を除くパーティーメンバーが勇者にベタ惚れかつ、鈍感な勇者がさっぱりそれに気づいていないことだ。イケメン勇者が女の子にチヤホヤされているさまは、相手がイケメンすぎて嫉妬の対象でこそないものの、モテない男子にとっては目に毒なのである。
しかしある日、アレクはユウリに二人きりで呼び出され、告白されてしまい……!?
たまには健全な全年齢向けBLを書いてみたくてできた話です。一応、付き合い出す前の両片思いカップルコメディー仕立て……のつもり。他の仲間たちが勇者に言い寄る描写があります。
魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!
松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。
15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。
その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。
そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。
だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。
そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。
「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。
前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。
だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!?
「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」
初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!?
銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。
【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい
おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。
生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。
地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。
転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。
※含まれる要素
異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛
※小説家になろうに重複投稿しています
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