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第4章 国の発展
書物部屋にて
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アルが隣国へ出発してから早二週間が経った。
どこか寂しく落ち着かなかったロゼの日々も昨日で終わり、帰国してくるアルを迎えるべく、ロゼたちは城門前に整列していた。
視界にアルたちを乗せた馬車が入ると、ロゼの心はどこか嬉しく感じた。
「お帰りなさいませアル様」
「お帰りなさいませ」
周りに習いロゼも頭を下げる。次に顔を上げた時に見えたのはアルの笑顔だった。どこか晴れ晴れしく、仕事を終えた清々しさを持った笑顔だった。隣に座るエドは相変わらず書類を眺めており、向かいに座るイザベラはこちらに向かって手を振ってくれていた。
馬車から降りてきたアルたち一行は、笑顔で手を振りながら城内の方向へと歩いて行った。その途中、ロゼはアルと目が合った。
「また後でな」
そういう風にアルは口を動かした。ロゼは微笑んでそっと頷き返した。
****************
その日の夜、仕事終わりにロゼは読み終えた5冊の本を持って書物部屋へ向かっていた。
昼間に会えるかと思っていたアルとは仕事がお互い忙しく会えないままになっていた。帰国するまでの二週間、とても重要な話し合いをしてきたのだろう。それは隣国のお祭りの時の様子を思い浮かべれば安易に想像できた。その話し合いの結果や今後のスケジュールなどを考えるとなると会う時間もないのが当然だ。
ロゼは自分のわがままを飲み込んで今日会うのは諦めようと決めた。なにしろ相手は一国の王子だ。今更のように感じるがごく一般のメイドがほいほい会いに行っていい相手じゃないのはわかっている。
出会った当初の身分も知らない距離感と、この城に来てから嫌という程実感させられてきた地位の距離感に、ロゼは少しだけ悲しさを感じていた。
「失礼します」
書物部屋の扉を開けるといつものゲーテルおじさんが顔を見せた。
「ロゼくんか。仕事はもう終わったのかい?」
「はい。本を返しに来たんですけどまだ大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃよ」
ゲーテルおじさんは5冊の本を受け取ると返却の手続きを慣れた手つきで済ませた。
「あとは本棚に戻すだけだから戻って大丈夫じゃよ」
「あ、私が戻してきますよ。5冊と言っても厚い本ばかりですし。それに少し他の本も眺めていきたいので」
ゲーテルおじさんは「そうかい。じゃあお願いしようかね」と言ってロゼに5冊の本を渡した。
ロゼは本を手に元あった本棚のところへ歩いて行った。
本棚の場所まで着くと、ロゼの目に一人の見覚えのある青年が映った。
「ギルさん?!」
それは約二週間前、ロゼが城内案内を担当した新兵のギルだった。
「あ!ロゼさん!お久しぶりです!」
ギルは相変わらずの笑顔でロゼの方を振り返った。
「ギルさんどうしてここに?」
「私はまだ新兵なので夜間の仕事はまだ受け持ってないんです。それで本でも読もうかと思ってここに来て…って、それローカル・メイデンさんの本ですか!そういえば読んでるっておっしゃってましたもんね。全部読み切ったんですか?」
「はい。夜寝る前に少しづつ読んでたのでかなり時間かかっちゃったんですけど、なんとか読み終わりました」
「重くないですか?今戻しますね」
ギルはそう言ってロゼから5冊の本を受け取ると本棚へと戻した。
「ありがとうございます」
ロゼは微笑んで礼を言った。
「感想聞かせてください!約束でしたからね!」
ギルは急かすようにロゼに言った。同じ作品を知る者同士、テンションが上がっているようだ。
「えっと…。じゃあまず孤島のシンデレラから」
ロゼは最初に手に取った小説を思い出し、そっと感想を語り出した。
「それでこの主役の少女の抑えられない気持ちの葛藤が…」
「あー!わかります!こっちまでうずうずしちゃいますよね!」
ロゼたちは時間を忘れて感想を語り合っていた。その時だった。
「ロゼ」
ずっと聞きたかった声がロゼの耳に届いた。
「アル!」
「え?!アル王子?!」
二人は今まで話し合っていた感想のことも忘れ、同時に声のした方向を見た。
そこには見間違えようのない、一国の王子が立っていた。
どこか寂しく落ち着かなかったロゼの日々も昨日で終わり、帰国してくるアルを迎えるべく、ロゼたちは城門前に整列していた。
視界にアルたちを乗せた馬車が入ると、ロゼの心はどこか嬉しく感じた。
「お帰りなさいませアル様」
「お帰りなさいませ」
周りに習いロゼも頭を下げる。次に顔を上げた時に見えたのはアルの笑顔だった。どこか晴れ晴れしく、仕事を終えた清々しさを持った笑顔だった。隣に座るエドは相変わらず書類を眺めており、向かいに座るイザベラはこちらに向かって手を振ってくれていた。
馬車から降りてきたアルたち一行は、笑顔で手を振りながら城内の方向へと歩いて行った。その途中、ロゼはアルと目が合った。
「また後でな」
そういう風にアルは口を動かした。ロゼは微笑んでそっと頷き返した。
****************
その日の夜、仕事終わりにロゼは読み終えた5冊の本を持って書物部屋へ向かっていた。
昼間に会えるかと思っていたアルとは仕事がお互い忙しく会えないままになっていた。帰国するまでの二週間、とても重要な話し合いをしてきたのだろう。それは隣国のお祭りの時の様子を思い浮かべれば安易に想像できた。その話し合いの結果や今後のスケジュールなどを考えるとなると会う時間もないのが当然だ。
ロゼは自分のわがままを飲み込んで今日会うのは諦めようと決めた。なにしろ相手は一国の王子だ。今更のように感じるがごく一般のメイドがほいほい会いに行っていい相手じゃないのはわかっている。
出会った当初の身分も知らない距離感と、この城に来てから嫌という程実感させられてきた地位の距離感に、ロゼは少しだけ悲しさを感じていた。
「失礼します」
書物部屋の扉を開けるといつものゲーテルおじさんが顔を見せた。
「ロゼくんか。仕事はもう終わったのかい?」
「はい。本を返しに来たんですけどまだ大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃよ」
ゲーテルおじさんは5冊の本を受け取ると返却の手続きを慣れた手つきで済ませた。
「あとは本棚に戻すだけだから戻って大丈夫じゃよ」
「あ、私が戻してきますよ。5冊と言っても厚い本ばかりですし。それに少し他の本も眺めていきたいので」
ゲーテルおじさんは「そうかい。じゃあお願いしようかね」と言ってロゼに5冊の本を渡した。
ロゼは本を手に元あった本棚のところへ歩いて行った。
本棚の場所まで着くと、ロゼの目に一人の見覚えのある青年が映った。
「ギルさん?!」
それは約二週間前、ロゼが城内案内を担当した新兵のギルだった。
「あ!ロゼさん!お久しぶりです!」
ギルは相変わらずの笑顔でロゼの方を振り返った。
「ギルさんどうしてここに?」
「私はまだ新兵なので夜間の仕事はまだ受け持ってないんです。それで本でも読もうかと思ってここに来て…って、それローカル・メイデンさんの本ですか!そういえば読んでるっておっしゃってましたもんね。全部読み切ったんですか?」
「はい。夜寝る前に少しづつ読んでたのでかなり時間かかっちゃったんですけど、なんとか読み終わりました」
「重くないですか?今戻しますね」
ギルはそう言ってロゼから5冊の本を受け取ると本棚へと戻した。
「ありがとうございます」
ロゼは微笑んで礼を言った。
「感想聞かせてください!約束でしたからね!」
ギルは急かすようにロゼに言った。同じ作品を知る者同士、テンションが上がっているようだ。
「えっと…。じゃあまず孤島のシンデレラから」
ロゼは最初に手に取った小説を思い出し、そっと感想を語り出した。
「それでこの主役の少女の抑えられない気持ちの葛藤が…」
「あー!わかります!こっちまでうずうずしちゃいますよね!」
ロゼたちは時間を忘れて感想を語り合っていた。その時だった。
「ロゼ」
ずっと聞きたかった声がロゼの耳に届いた。
「アル!」
「え?!アル王子?!」
二人は今まで話し合っていた感想のことも忘れ、同時に声のした方向を見た。
そこには見間違えようのない、一国の王子が立っていた。
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