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第4章 国の発展
令嬢のお茶会
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翌朝、ロゼたちは大臣や衛兵たちと一緒にアルたちの出発を見送った。
少し寂しかったが、離れているのは二週間。昨日の夜のことがロゼを元気付けていた。
笑顔で馬車が出て行くのを見送り、ロゼたちはいつもの仕事に戻った。
****************
今日のロゼの仕事は令嬢がいる部屋の廊下の窓拭きだった。
並んだ可愛らしい扉の前の大きな窓を見つめる。
そういえば令嬢といえばシャルロットしか会ったことがないが、他にもきっといるのだろう。城が広すぎて会うことが滅多にないが令息もいるに違いない。今朝の見送りに辺りを見渡してみるんだったと少しだけ後悔する。
仕事に取り掛かろうと雑巾を手にした時、廊下の奥から賑やかな話し声が聞こえてきた。
「しゃ、シャルロット…」
噂をすればなんとやらだ。ロゼはわかりやすく顔を歪ませる。あの綺麗なドレスは見間違えようのないシャルロットだ。
しかしいつもと違い、シャルロットは一人ではなかった。他に二人令嬢っぽい少女を連れている。
「あら、ロゼじゃない。ごきげんよう」
「ご、ごきげんよう」
シャルロットは案の定ロゼに突っかかってきた。
「今日はここの窓拭きが仕事なの?大変ねぇ。私たちは今から私の部屋でお茶会なの」
そう言ってシャルロットは何か閃いたようにこう言った。
「そうだわ!あなたお茶会のお菓子と紅茶をお持ちしてくれる?メイド長がお持ちする予定だったのだけれど変わってちょうだい。窓拭きなんかより良い仕事でしょう?」
ロゼは何か裏があると思ったが断る理由もなかったので仕方なく「わかりました」と言って持ってきたばかりの雑巾とバケツを手に今歩いてきたばかりの道を戻っていった。
「シャルロット様が直々にロゼをご指名されたの?すごいじゃない!いつの間にか仲良くなっていたのね!」
厨房にいたメイド長に事を話すと、ロゼとシャルロットの関係を知らないメイド長は嬉しそうにそう言った。何もシャルロットは信用しているメイドにしかお茶出しはお願いしないんだそうだ。それを聞いてなおさら何かあるのではないかと不安が募る。しかし今日はお茶会だと言っていた。他の令嬢もいるはずだ。シャルロットは一体何を考えているのだろう。
ロゼは色々考えながらメイド長に渡されたティーセットとクッキーをカートに乗せ、シャルロットの部屋へ向かった。
****************
可愛いらしい大きな扉をノックする。
「ロゼです。紅茶とクッキーをお持ちしました」
「いいわ。入って」
ロゼは扉を開け中に入った。その瞬間、ロゼは自分の部屋との違いを見せつけられた。
大きなお姫様のような豪奢なベッドにタンス。可愛い化粧台。何よりも部屋の広さが違う。ロゼは今の部屋に不満を持っているわけではないが、あまりの違いに圧倒された。
「どうしたの?早く紅茶をお出しして」
シャルロットに言われ、ロゼは我に返った。中央にあるおしゃれなテーブルにはシャルロットを含め3人の令嬢が席についている。一人は編み込みをした金髪が綺麗なおしゃれ好きそうな令嬢。もう一人はどこかまだ垢抜けないような茶髪を二つに結った令嬢だった。シャルロットはロゼを見ながらどこか裏のある笑顔を浮かべている。もしかしたらロゼが部屋にあっけにとられる様子を見たかったのかもしれない。
ロゼは気をとりなおしてクッキーをテーブルに置き、3人分の紅茶をお淹れした。
やるべきことをこなし、部屋を後にしようとしたところでロゼはシャルロットに呼び止められた。
「あなた先日、隣国のお祭りに行ったんですって?また図々しくアル様にでも頼んだのでしょう。ちょっと仲がいいからって調子に乗っちゃって」
ロゼは振り返ってはっきりと言った。
「お誘いは隣国のクロード大臣からいただきました。一ヶ月ほど前、会議の際に色々あったので、そのお詫びにとのことでした。私はそのお誘いを受けさせていただいただけです」
ロゼの返答にシャルロットは少し黙った後、次はこう言った。
「でもそこでエリス様にお会いしたんでしょう?またその青色を理由に色仕掛けでもしたんじゃなくて?」
ロゼは声を張り上げそうになるのを押さえつけ、その質問に返答した。
「エリス王子にはお会いしました。でも私は色仕掛けなんてしていません。私はあなたみたいに地位にこだわってはいませんし、ましては王子に気に入ってもらおうだなんて考えてはいません。縁があるのは嬉しいことですが、この色を利用したいだなんて私は思っていません。嫌味をおっしゃるだけなら私は仕事があるので失礼します」
ロゼは何か言おうとするシャルロットに背を向け、カートを手に歩き出した。
振り向きざま、垢抜けない令嬢がじっとロゼを見つめていたことに気づくことはなかった。
少し寂しかったが、離れているのは二週間。昨日の夜のことがロゼを元気付けていた。
笑顔で馬車が出て行くのを見送り、ロゼたちはいつもの仕事に戻った。
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今日のロゼの仕事は令嬢がいる部屋の廊下の窓拭きだった。
並んだ可愛らしい扉の前の大きな窓を見つめる。
そういえば令嬢といえばシャルロットしか会ったことがないが、他にもきっといるのだろう。城が広すぎて会うことが滅多にないが令息もいるに違いない。今朝の見送りに辺りを見渡してみるんだったと少しだけ後悔する。
仕事に取り掛かろうと雑巾を手にした時、廊下の奥から賑やかな話し声が聞こえてきた。
「しゃ、シャルロット…」
噂をすればなんとやらだ。ロゼはわかりやすく顔を歪ませる。あの綺麗なドレスは見間違えようのないシャルロットだ。
しかしいつもと違い、シャルロットは一人ではなかった。他に二人令嬢っぽい少女を連れている。
「あら、ロゼじゃない。ごきげんよう」
「ご、ごきげんよう」
シャルロットは案の定ロゼに突っかかってきた。
「今日はここの窓拭きが仕事なの?大変ねぇ。私たちは今から私の部屋でお茶会なの」
そう言ってシャルロットは何か閃いたようにこう言った。
「そうだわ!あなたお茶会のお菓子と紅茶をお持ちしてくれる?メイド長がお持ちする予定だったのだけれど変わってちょうだい。窓拭きなんかより良い仕事でしょう?」
ロゼは何か裏があると思ったが断る理由もなかったので仕方なく「わかりました」と言って持ってきたばかりの雑巾とバケツを手に今歩いてきたばかりの道を戻っていった。
「シャルロット様が直々にロゼをご指名されたの?すごいじゃない!いつの間にか仲良くなっていたのね!」
厨房にいたメイド長に事を話すと、ロゼとシャルロットの関係を知らないメイド長は嬉しそうにそう言った。何もシャルロットは信用しているメイドにしかお茶出しはお願いしないんだそうだ。それを聞いてなおさら何かあるのではないかと不安が募る。しかし今日はお茶会だと言っていた。他の令嬢もいるはずだ。シャルロットは一体何を考えているのだろう。
ロゼは色々考えながらメイド長に渡されたティーセットとクッキーをカートに乗せ、シャルロットの部屋へ向かった。
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可愛いらしい大きな扉をノックする。
「ロゼです。紅茶とクッキーをお持ちしました」
「いいわ。入って」
ロゼは扉を開け中に入った。その瞬間、ロゼは自分の部屋との違いを見せつけられた。
大きなお姫様のような豪奢なベッドにタンス。可愛い化粧台。何よりも部屋の広さが違う。ロゼは今の部屋に不満を持っているわけではないが、あまりの違いに圧倒された。
「どうしたの?早く紅茶をお出しして」
シャルロットに言われ、ロゼは我に返った。中央にあるおしゃれなテーブルにはシャルロットを含め3人の令嬢が席についている。一人は編み込みをした金髪が綺麗なおしゃれ好きそうな令嬢。もう一人はどこかまだ垢抜けないような茶髪を二つに結った令嬢だった。シャルロットはロゼを見ながらどこか裏のある笑顔を浮かべている。もしかしたらロゼが部屋にあっけにとられる様子を見たかったのかもしれない。
ロゼは気をとりなおしてクッキーをテーブルに置き、3人分の紅茶をお淹れした。
やるべきことをこなし、部屋を後にしようとしたところでロゼはシャルロットに呼び止められた。
「あなた先日、隣国のお祭りに行ったんですって?また図々しくアル様にでも頼んだのでしょう。ちょっと仲がいいからって調子に乗っちゃって」
ロゼは振り返ってはっきりと言った。
「お誘いは隣国のクロード大臣からいただきました。一ヶ月ほど前、会議の際に色々あったので、そのお詫びにとのことでした。私はそのお誘いを受けさせていただいただけです」
ロゼの返答にシャルロットは少し黙った後、次はこう言った。
「でもそこでエリス様にお会いしたんでしょう?またその青色を理由に色仕掛けでもしたんじゃなくて?」
ロゼは声を張り上げそうになるのを押さえつけ、その質問に返答した。
「エリス王子にはお会いしました。でも私は色仕掛けなんてしていません。私はあなたみたいに地位にこだわってはいませんし、ましては王子に気に入ってもらおうだなんて考えてはいません。縁があるのは嬉しいことですが、この色を利用したいだなんて私は思っていません。嫌味をおっしゃるだけなら私は仕事があるので失礼します」
ロゼは何か言おうとするシャルロットに背を向け、カートを手に歩き出した。
振り向きざま、垢抜けない令嬢がじっとロゼを見つめていたことに気づくことはなかった。
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