青の王国

ウツ。

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第3章 隣国へ

反面

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「アルたち見つかりませんでしたね…」
ロゼとエリスは昼に来た噴水の広場に戻ってきていた。
「もしかしてすれ違いになっちゃったかな…」
エリスが辺りを見渡して呟く。日はすでに沈み始め、オレンジ色の空はゆっくりと暗い影を落とし始めている。
「花火が上がる前までに合流できればいいんだけど。もしこのまま合流できなかったら衛兵にでも探してもらうか…」
「花火が上がるんですか?!」
ロゼは初めて聞く情報に思わず声をあげた。
「そうだよ。すごく綺麗だからみんなで見たいんだ。ここからも綺麗に見えるからここに戻ってきてくれると嬉しいんだけど」
言われてみると確かに広場には人が増えてきているように感じる。
「ここが一番綺麗に見える場所なんですか?」
「うん。そうだよ」
「ならきっとアルたちはここに戻ってくると思います」
「どうしてそう思うの?」
ロゼはアルと一緒にいる人物を思い浮かべた。
「アルにはとてもしっかりした側近がいますから」
ロゼはそう言ってそっと微笑んだ。



   ****************



しばらくして、日が落ちた頃、探していた人物はロゼの想像通り姿を現した。
「アル!」
駆け出そうとしたロゼをエリスがそっと呼び止めた。
「ロゼさんのこと、よく知れてよかったよ」
「私もエリス王子のことよく知れてよかったです」
ロゼは笑顔でそういうとアルの方へ向かって手を振った。

「はぐれてることに気づかなくてすまなかった」
対面早々アルはエリスとロゼに頭を下げた。
「気にしないでよ。はぐれたのはお互い様なんだし」
エリスはそう言ってアルの肩を叩いた。
「でもよかった。合流できなかったらどうしようかと思ってた。エドに言われてこの広場に戻ってきて正解だったよ」
アルはエドの方を見つめて笑った。ロゼが思っていた通り、エドは花火が綺麗に見える場所をあらかじめ調べていたようだ。
「本当に今回はエドに助けられたわね」
イザベラも笑ってエドの方を見た。
「ありがとうございます」
礼を言うエドの顔は少し嬉しそうに見えた。



   ****************



アルたちと合流し、しばらくお互いの話をしていると、真っ暗な空に綺麗な花が咲き誇った。
「わぁ…!」
ロゼたちは揃って空を見上げた。エリスの言っていた通り、ここの広場からは建物に邪魔されることなく花火を眺めることができた。
色とりどりの花火が空に咲き乱れる。ロゼはアルの隣でそれを眺めていた。
「綺麗だな」
「うん」
アルはそっとロゼの横顔を見つめた。花火に照らされた瞳がきらきらと輝いている。
「ロゼ」
ロゼはアルに呼ばれて振り返った。
「これ」
そう言ってアルはおもむろに小箱を取り出した。
「え?」
ロゼは驚いたようにアルから小箱を受け取った。
「開けていい?」
「うん」
ロゼは小箱をそっと開けた。
中にはクローバーの形をした綺麗な髪留めが入っていた。
「すごく綺麗…。これ私に?」
「そう。気に入るといいんだけど」
「ありがとうアル。すごく気に入った」
ロゼは笑顔でそういうと、今までつけていたウィングベールを外し、もらった髪留めをつけた。
「似合うかな?」
「うん。とっても」
アルは少し照れくさそうに笑って言った。
「あのね、私もアルに渡したいものがあって。はい、これ」
ロゼはそう言ってアルに一つの箱を渡した。
「開けていいか?」
「もちろん」
アルはそっと箱を開けた。
「これ、置物か?」
「うん」
中には綺麗な青い石を使った置物が入っていた。
「青の王国をモチーフにした店があってね、そこで一番気に入ったのを買ったの。どうかな?」
「青の王国…あの幻の消滅都市か。すごく幻想的だし、青って所がロゼらしいな。ありがとう。大切にするよ」
ロゼとアルは顔を見合わせて笑った。
「考えること同じだな。俺たち」
「そうだね。私もびっくりした」
空に打ち上がる花火がそんな二人の笑顔を照らしていた。



   ****************



「エリス、今日はすごく楽しかったよ。誘ってくれてありがとな」
花火が終わり、ロゼたちは自国に帰るべく、馬車の場所へ戻ってきていた。
「こちらこそ来てくれてありがとう、アル。皆さんも」
エリスはみんなを一人一人見渡すとそっと微笑んだ。
「じゃあ次は二日後だな。その時はまたよろしく」
「もちろん。楽しみにしているよ」
エリスとアルは固い握手をした。するとエリスはロゼの方に向き直った。
「ロゼさんもいつかまた僕の国に来てくれるかな?」
「はい!機会があればぜひ!」
ロゼは笑顔で答えた。
「じゃあな!エリス!」
馬車に揺られ、ロゼたちはエリスに手を振った。エリスもそれに応えるように手を振っていた。

「エリス様」
「おかえりクロエ」
馬車の見送りが終わったと同時に非番だったエリスの側近の一人、クロエが姿を現した。
「レオは?」
エリスはもう一人の側近の名を出した。
「レオは大臣と一緒に書類の整理を行っております。夜王子を一人にするのは危険なので私がお迎えにあがりました」
「気にしなくても僕は衛兵でも連れて帰るのに」
エリスは呆れたように笑った。
「今日は楽しかったですか?」
「もちろん」
「それは良かったです」
「それにしてもアルに大切に思う人ができたとは…」
エリスは空を見て呟いた。
「隣国の王子にですか?」
「そう。でも…」

「あそこまでわかりやすいとちょっと遊んでみたくなっちゃうよね」

エリスの顔には笑みが浮かんでいた。
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