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第2章 メイドとして
野菜スープ
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「お邪魔します」
ロゼは親父さんに招かれてケイの家へ足を踏み入れた。
「おや?どなただい?」
すると奥の部屋から奥さんらしい女性が出てきた。ロゼは「こんにちは、ロゼと申します」と言って頭を下げた。
「この子はケイが迷子だったところを家まで送ってくれたんだ。お城に使えるメイドさんなんだってよ。それに…」
親父さんはロゼにジェスチャーでフードをあげるようにいった。ロゼは気が進まなかったが仕方なくフードをとった。
「まあ!綺麗な髪!よく見たら瞳も海のように綺麗じゃない!」
奥さんは驚いたようにロゼをまじまじと見つめた。親父さんと同じようなセリフにロゼは思わず笑った。
「ケイを送ってくれたお礼にスープをごちそうしてやろうと思うんだ。いいだろ?」
「もちろん。でもお城に仕えてる方からしたら私たちの食事は貧相なものだけど」
「何言ってるのさ。誰がなんと言おうと俺たちの食材が一番だ!」
親父さんは笑いながらロゼを食卓の席へと案内した。木でできた簡素な四人テーブルにロゼはケイと並ぶように座った。
「もうちょっと待っててね」
奥さんは厨房へ笑顔で戻っていった。
「俺も手伝うぜ」
親父さんも続いて厨房へと入っていった。
ロゼはケイと二人、座って待っていた。ロゼは特にすることもなく辺りを見渡した。部屋自体は狭くはないが、おかれている物は随分と年季が入っているように見える。
「さ、できたよ!今日のお昼ご飯だ」
しばらくして奥さんはそう言って美味しそうに湯気の立つスープをロゼたちの前に並べた。中には色とりどりの野菜が綺麗に切り揃えて入っている。
「わぁ!すごく美味しそう!」
ロゼは思わず声を漏らした。
「僕のお家のお野菜は世界一美味しいんだよ!」
ケイはロゼにそう言って、スープを食べ始めた。ロゼは家に入る前に見ていた店先に並べられている野菜を思い出した。ケイの家は野菜や果物を扱っている八百屋さんらしい。そんなお店の奥さんたちが作ってくれたスープは比べ物にならないくらい美味しいだろう。
「いただきます」
ロゼは手を合わせるとスープを口に運んだ。その瞬間、口の中に野菜の旨味と甘味がいっぱいに広がった。
「すごく美味しいです!」
「よかった。お城に仕えてるって聞くからお口に合うか心配だったよ。ほら、お城の方々は高級な料理ばかり食べているんだろ?」
奥さんはロゼに尋ねた。
「高級なもの…。そうなのかもしれませんけど、食材はこうして市場に売られている皆さんが育ててくれたものを使っています。なので元をたどればこの食材あってこその美味しい料理だと私は思いますね」
ロゼは笑顔で答えた。
「そうかい。ロゼさんは素晴らしい考え方をするんだね。でもここではお城の料理は高級料理。一食にスープ以外のものが出てくるなんて考えただけで世界が違うと思うね」
奥さんはそう言ってため息をついた。
「僕もご飯お腹いっぱいになるまで食べてみたいな」
ケイがスープを食べながらそう呟いた。ロゼはそれを聞いて薄々気づいていたことが確信に変わる。
この家は生活が厳しいのだ。
そこでロゼはテント街の風景を思い出した。ぱっと見とても賑わっているように見えていたが、よくよく考えてみれば服装だけでも豪奢な装いをした店からシンプルな服を布で補整している店まで大きく幅があったように思える。
つまり、このテント街では貧困の差が激しい。
ケイは朝ごはんを食べなかったのではなく、食べられなかったのだ。
ロゼはこのテント街のことをアルに相談しようと決めた。ケイだけでなく、困っている人たちを助けられるような政策を考えてくれるように頼むのだ。
「あの、私、お城に戻ったら…」
王子に相談してみます、と言おうとしたロゼは自分の体に違和感を覚えた。例えるなら急な眠気が一気に襲ってきたかのような…。
「ようやく効いてきたか」
親父さんの声が遠くで響く。
「ほ、本当にこんなことして大丈夫なのかい?」
奥さんの困惑した声が脳内で反芻した。ロゼは症状に耐えきれずそっと目を閉じた。
薄れゆく意識の中でケイがロゼを呼ぶ声だけがやけに耳に残っていた。
ロゼは親父さんに招かれてケイの家へ足を踏み入れた。
「おや?どなただい?」
すると奥の部屋から奥さんらしい女性が出てきた。ロゼは「こんにちは、ロゼと申します」と言って頭を下げた。
「この子はケイが迷子だったところを家まで送ってくれたんだ。お城に使えるメイドさんなんだってよ。それに…」
親父さんはロゼにジェスチャーでフードをあげるようにいった。ロゼは気が進まなかったが仕方なくフードをとった。
「まあ!綺麗な髪!よく見たら瞳も海のように綺麗じゃない!」
奥さんは驚いたようにロゼをまじまじと見つめた。親父さんと同じようなセリフにロゼは思わず笑った。
「ケイを送ってくれたお礼にスープをごちそうしてやろうと思うんだ。いいだろ?」
「もちろん。でもお城に仕えてる方からしたら私たちの食事は貧相なものだけど」
「何言ってるのさ。誰がなんと言おうと俺たちの食材が一番だ!」
親父さんは笑いながらロゼを食卓の席へと案内した。木でできた簡素な四人テーブルにロゼはケイと並ぶように座った。
「もうちょっと待っててね」
奥さんは厨房へ笑顔で戻っていった。
「俺も手伝うぜ」
親父さんも続いて厨房へと入っていった。
ロゼはケイと二人、座って待っていた。ロゼは特にすることもなく辺りを見渡した。部屋自体は狭くはないが、おかれている物は随分と年季が入っているように見える。
「さ、できたよ!今日のお昼ご飯だ」
しばらくして奥さんはそう言って美味しそうに湯気の立つスープをロゼたちの前に並べた。中には色とりどりの野菜が綺麗に切り揃えて入っている。
「わぁ!すごく美味しそう!」
ロゼは思わず声を漏らした。
「僕のお家のお野菜は世界一美味しいんだよ!」
ケイはロゼにそう言って、スープを食べ始めた。ロゼは家に入る前に見ていた店先に並べられている野菜を思い出した。ケイの家は野菜や果物を扱っている八百屋さんらしい。そんなお店の奥さんたちが作ってくれたスープは比べ物にならないくらい美味しいだろう。
「いただきます」
ロゼは手を合わせるとスープを口に運んだ。その瞬間、口の中に野菜の旨味と甘味がいっぱいに広がった。
「すごく美味しいです!」
「よかった。お城に仕えてるって聞くからお口に合うか心配だったよ。ほら、お城の方々は高級な料理ばかり食べているんだろ?」
奥さんはロゼに尋ねた。
「高級なもの…。そうなのかもしれませんけど、食材はこうして市場に売られている皆さんが育ててくれたものを使っています。なので元をたどればこの食材あってこその美味しい料理だと私は思いますね」
ロゼは笑顔で答えた。
「そうかい。ロゼさんは素晴らしい考え方をするんだね。でもここではお城の料理は高級料理。一食にスープ以外のものが出てくるなんて考えただけで世界が違うと思うね」
奥さんはそう言ってため息をついた。
「僕もご飯お腹いっぱいになるまで食べてみたいな」
ケイがスープを食べながらそう呟いた。ロゼはそれを聞いて薄々気づいていたことが確信に変わる。
この家は生活が厳しいのだ。
そこでロゼはテント街の風景を思い出した。ぱっと見とても賑わっているように見えていたが、よくよく考えてみれば服装だけでも豪奢な装いをした店からシンプルな服を布で補整している店まで大きく幅があったように思える。
つまり、このテント街では貧困の差が激しい。
ケイは朝ごはんを食べなかったのではなく、食べられなかったのだ。
ロゼはこのテント街のことをアルに相談しようと決めた。ケイだけでなく、困っている人たちを助けられるような政策を考えてくれるように頼むのだ。
「あの、私、お城に戻ったら…」
王子に相談してみます、と言おうとしたロゼは自分の体に違和感を覚えた。例えるなら急な眠気が一気に襲ってきたかのような…。
「ようやく効いてきたか」
親父さんの声が遠くで響く。
「ほ、本当にこんなことして大丈夫なのかい?」
奥さんの困惑した声が脳内で反芻した。ロゼは症状に耐えきれずそっと目を閉じた。
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